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生命を与えられた者は皆がChallengeしていく…!『Challenged チャレンジド』小栗謙一監督に聞く!

2020年9月10日

製作期間4年、総移動距離12万キロという労力を費やし、アート活動などに参加している世界各地の障碍者達の姿を追う『Challenged チャレンジド』が9月11日(金)より関西の劇場でも公開。今回、小栗謙一監督にインタビューを行なった。

 

映画『Challenged チャレンジド』は、欧米では「チャレンジド」と呼ばれる知的障がいを持つ人達に寄り添ったドキュメンタリーをつくり続けてきた小栗謙一監督が、世界各地でパワフルに活動するチャレンジド達の日常を温かいまなざしで捉えたドキュメンタリー。小栗監督が2012年の『幸せの太鼓を響かせて INCLUSION』以来8年間にわたり見守ってきた長崎の和太鼓演奏集団「瑞宝太鼓」がフランス・ナント市の文化交流芸術祭に参加した際の圧巻のパフォーマンスをはじめ、プロとして活躍するフランスのヒップホップグループ「アーティピック」やベルリンを拠点に演劇活動を行う「ランバ・ツァンバ」のメンバー達、さらに国会議員を目指すスウェーデンの女性にも目を向ける。また、ナチスドイツが密かに実行していた、障がいのある人々の殺戮の実態について綿密に取材し、「障がいのある者は、生きる価値がない」という誤った考え方の源流を考察する。タレントの栗原類がナレーションを担当。

 

印象的な本作のタイトル。小栗監督は様々なタイトルを検討し『困難な存在の日々からの旅立ち』と考えた。知的障碍のある人達について「自身の障碍を困難だと思うんですね。”どうして、これが出来ないんだろう”、”なぜ皆が分かっていることについていけないんだろう”と、自身に苛立っていることがある。周りの人も、彼らの存在に困惑している」と冷静に話し「同じ地球に生きている人間であるのに、考え方が違うことにより、混乱が生じている」と説く。しかし「共生していけるんじゃないか、と皆が模索し始めている。そこで、当初のタイトルだったが、分かりにくい」と自らのアイデアすらもエゴだと捉え「やりたいことを全部詰め込もうとすると周りは分からなくなってしまい、意味がない」と自戒。その中で考えているうちに、”challenged”という言葉が出てきた。アメリカでは、様々な障碍のある方を”challenged”と云われ「障碍があることで、彼等はchallengeすることを義務づけられている。障碍をクリアするために様々な努力をして生き続ける」と受けとめ「生命を与えられた者はchallengeすることを与えられている。それを失くした時に生命は終わるんだと思う。全ての人間に通じる言葉」と解説する。

 

日本・フランス・ドイツ・スウェーデンと各地で障碍者達の姿を追った本作。なかでも、ドイツのT4計画は想像を絶する歴史的な出来事である。障碍があることによって起きる摩擦の象徴的な出来事としてナチス・ドイツが行った殺戮だった。「ヒトラーもナチス・ドイツの人達も、人を殺していいと思った人はいないはずだ。何を優先するかを考えると、社会の存続や発展や効率化が必要な時代だった。そして、様々な武器が登場してくると、国や民族を守ろうとした時に、DNAの良し悪しを研究する学者が沢山いた」と述べ「最終的に、総統の御墨付を貰い動き始めたのが1936年。でも、ヒトラーのような人物でさえ、8ヶ月で停止命令を出している。ヒトラーですら、良くない、と思った。始めたのも止めたのもヒトラー。その間、止める人は誰もいない。止める国もなかった。日本含め同盟国は皆同罪ですよね。人類の大きな負の遺産の1つ」と憤るしかない。だからこそ「抑圧や排除、弾圧や殺戮の歴史を乗り越え、インクルージョンな世界になろうとしている現代で障碍をもった人達を捉えていくべきであり、T4計画はしっかり撮らせてもらった。ヒトラーやナチス・ドイツを責めて済むものではない。私達が歴史を引き継いでいる存在として生きているから、良い方向を見出していく努力が必要だ」と訴える。

 

撮影は、2016年1月から2019年8月まで足掛け4年に及び、収録映像は250時間にもなった。編集もまずは自らが手掛けており「ドキュメンタリーは何かが起きているシーンを使う。起こることを待つ。待つには、カメラを回して、その場にいるしかない。1日回しても何も起こらないこともある。いつもカメラを持ち、何か起きそうな人の分だけカメラを持つ」と振り返りながら「カメラを意識されると何も起こさない。カメラを意識させないようにすることが大事。そのためには、いつもカメラを持っている。カメラを持っていることを忘れてしまう」と明かしていく。カメラを回しながら「皆が活き活きとしている。障碍を抱えて生まれてきたけど、決して悔いていない。恥じずに堂々として生きている」と感じ「僕らも人と比べると羨ましいことは沢山ある。自分を嫌いになりそうだけど、耐え忍んで自分を好きになって鼓舞して生きていこうとしている」と省みることも出来た。彼らを見つめながら「どんなに大きな障碍を持っていても、自分のことを愛しているし、人生をしっかり作っていこうと努力しようとしている。それをサポートしていく社会が理想的なのかな」と実感出来る時を作品には収録している。なお、本作のナレーションは栗原類さんが担当しており「彼が書いた本を読み、ナルシストだと感じた。一番大切なものは僕です、と彼は堂々と云える。彼は『日本語より英語が得意だ』と正直に話してくれた」と告白。父親がイギリス人で、幼い頃はニューヨークに住んでいたことがあり「日本語のナレーションは必死さが出ており、却って誠実に感じる。英語版はアメリカの映画祭で賞を頂いた程にナレーションの評判が良かった」と予想外の仕上がりを以て作品は完成し、劇場公開へと至った。

 

映画『Challenged チャレンジド』は、関西では、9月11日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋、9月25日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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