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広島の原爆から奇跡的に焼け残った“被爆ピアノ”が紡いでいく物語『おかあさんの被爆ピアノ』がいよいよ劇場公開!

2020年8月6日

(C)映画「被爆ピアノ」製作委員会

 

被爆ピアノを介して出会う男女の姿を通し、広島の今と過去を映し出す『おかあさんの被爆ピアノ』が、8月7日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『おかあさんの被爆ピアノ』は、原爆を投下された広島で奇跡的に焼け残った「被爆ピアノ」と、被爆2世の調律師として全国に被爆ピアノの音色を届けている矢川光則さんの実話をもとに描くオリジナル映画。昭和20年8月6日、広島に原爆が投下され、爆心地から3キロ以内で被爆したピアノは「被爆ピアノ」と呼ばれる。被爆2世である調律師の矢川光則は、持ち主から託された被爆ピアノを修理・調律し、自ら運転するトラックに載せて全国を回り、各地に被爆ピアノの音色を届けていた。一方、東京で生まれ育ち、大学で幼児教育を学んでいる江口菜々子は、被爆ピアノの一台を母・久美子が寄贈していることを知り、被爆ピアノのコンサートに出かける。そこで矢川と知り合い、矢川を通して被爆ピアノや祖母のことを考えるようになった菜々子は、自らのルーツを探っていく。

 

本作は、矢川を佐野史郎さん、菜々子をAKB48の武藤十夢さんによるW主演。森口瑤子さん、宮川一朗太さん、南壽あさ子さん、城之内正明さん、鎌滝えりさん、ポセイドン・石川さん、内藤忠司さんがキャストに名を連ねている。『レミングスの夏』の五藤利弘監督が、2009年にドキュメンタリー番組の取材で矢川さんと知り合ったことから企画が生まれ、約10年をかけて完成させた。

 

(C)映画「被爆ピアノ」製作委員会

 

映画『おかあさんの被爆ピアノ』は、関西では、8月7日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸の京都シネマで公開。

本作は、敢えて全てを描いておらず、感動の極致に達しようとせず、観る者の想像力によって味わい深い物語として仕上げられている。

 

森口瑤子さん演じる主人公の母親は被爆二世。具体的な表現はされていないが、根拠のない迫害など大変な思いをしてきたことが想像できる。よって、当初は、自分の娘には広島に関わろうとしてほしくなかった。被爆二世については遺伝的影響はないことが定説。一方では、被爆二世の健康への影響を疑う意見も存在している。被爆三世である主人公にもなると、嘗てあった意識も薄らいできただろう。だからこそ、自らのルーツとして関わってくる被爆ピアノと向き合おうとした主人公を武藤十夢さんが直向きに演じきった。

 

そして、他にも多くの出演者が被爆ピアノと向き合い、歌を紡いでいく。決してフルコーラスが収められているわけではないが、当時に思いを馳せざるを得ない楽曲が詰まっている。個人的には”いのち短し 恋せよおとめ”の一節で始まる「ゴンドラの唄」が印象深い。また、原爆ドームを目の前にして歌われた「荒城の月」や「シャボン玉」には、歌詞に更なる意味が込められたように聴こえた。時に楽しく、時にシリアスに、被爆ピアノに寄り添うように楽曲達が本作に彩りを与えていく。

 

最終的に、被爆ピアノと対峙していく主人公。だが、いとも簡単にはピアノと一つにはなれない。まだまだ未成熟な若者として成長段階にある。あくまで本作のタイトルは『おかあさんに被爆ピアノ』だ。この”おかあさん”は、誰のことと指し示しているか。あるいは、今後、指し示していくのか…と、考えてみると、二重にも三重にも意味が含まれている、と気づかされる。今後、さらに主人公は広島と向き合い成長していくのだろうか、と思いを馳せながら観終えたい一作となった。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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