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ラスト10分で映画の無茶苦茶な壊し方を実現!『みぽりん』松本大樹監督と垣尾麻美さんに聞く!

2019年9月4日

怪しいボイストレーナー・みほの狂気を描く『みぽりん』が9月7日(土)より全国に先駆け、関西の劇場で公開される。今回、松本大樹監督と垣尾麻美さんにインタビューを行った。

 

映画『みぽりん』は、狂気のボイストレーナーに捕われたアイドルの運命を描いた新感覚ホラー。声優地下アイドルグループでセンターを務める神田優花は、人気投票1位を6ヶ月連続で獲得しソロデビューが決定する。ところが彼女は極度の音痴で、プロデューサーの秋山とマネージャーの相川は頭を悩ませていた。そんな中、グループのメンバーである里奈の紹介で、優香は怪しげなボイストレーナー・みほのボイトレ合宿へ参加することに。レッスンが進んでいく中で次第にみほの異常性が明らかになり、みほは優花がアイドルに相応しくないと怒りを募らせていく。一方、秋山と相川は優花のファンである加藤に、ソロデビュー曲のPV撮影を依頼。ライブでのお披露目が翌日に迫る中、彼らは優花がみほによって監禁されていることを知る…
本作が初監督となる神戸在住の松本大樹さんが、関西の無名の役者たちとともにオール神戸ロケで撮りあげた自主制作作品。

 

映画を作るとなった時、松本監督は「予算がない中で出来ることも限られている。登場人物を少なくして場所を絞るなら、監禁ものが一番良い」と作品を考えていく中で「『ミザリー』ならば、おもしろい。低予算でも実現出来る」と考え始めた。だが、狂信的な読者が小説家を追い込んでいく『ミザリー』について、現代の日本に置き換えた時、想像しづらく脚本にすら落とし込めず、思い悩む。良いアイデアがないか、とスタッフと相談し、アイドルの設定を提案され採用することに。過去に、ミュージック・ビデオを製作したりライブを撮影したり、地下アイドルとの接点はあった。仕事で接していく中で、どんな活動をしているか理解していたので、実際にアイドルの子に話を聞いたり事件を調べたりしながら、アイドルについてリサーチしていく。さらに「2時間の中で、基本的に『ミザリー』を再現しつつも、そのまま作ったら無理な作品になる」と考え「最後10分で仕掛けを用意して、アッと言わせたい」と、ストーリーを練っていった。なお、役者達に渡された台本はラスト10分は書かれておらず空白の状態、撮影最終日の撮影直前に渡しており、出演者にまで明かさない徹底ぶりだ。

 

キャスティングにあたり、松本監督は、まず垣尾麻美さんに『ミザリー』のDVDを渡し、狂信的ななキャラクターを演じてもらうようにオファー。垣尾さんは、2年前に一度だけお仕事を一緒にしたことがあり「とんでもない設定の映像だった。その時から人柄が分かっていた」と振り返る。また、垣尾さんが所属している澪クリエーションのマネージャーもホラー映画が大好きで、同じ事務所の役者にも出て頂くことに。さらに、元々は脚本に無かったキャラクターとして某さんを追加する。撮影の合間にヘアメイクさんをカメラの前で立ててみると、迫力があるとモニターを通して気づき、出演を提案した。ストーリーを展開していく中で「『ミザリー』のように作っていくと面白みがなかった。『ミザリー』にも出てこない役であり、ミステリアスな存在が映画に登場しないと、作品の深みがない」と撮影中に設定を追加し、映画を崩壊させる醍醐味を味わっていく。また、2018年に起きた農業アイドルの自殺事件がアイドル活動に与えた衝撃を受けとめ「昨今のアイドル現象を時代性として取り入れ、数年後に当時の時代性を感じてもらえる作品になれば」と願っている。

 

昨冬に本作は撮影された。雪山を舞台にした『ミザリー』のように、松本監督は雪を撮りたい思いで撮影期間を決めたが、ロケとなった六甲山に全く雪が降らず。毎週1日だけ集まり全10日間で撮影したが「冬じゃなくてもよかったのではないか」と後悔している。垣尾さんは、ラストシーンの撮影が一番寒かった、と回想し「直前までジャージを着ていましたが、脱いだ瞬間の寒さが尋常じゃなかった。
出番がない時は山荘のコタツに皆で入って固まっていました」と振り返っていく。松本監督も「ランチの時間が押してしまうので、冷めたロケ弁を食べて侘しい気持ちになった。垣尾さんが作った味噌汁が心身共に皆を温めた」と出演者やスタッフに助けられた。

 

本作は、ラスト10分で映画を崩壊させている、と話題になっている。松本監督は「自主映画ならではの無茶苦茶な壊し方をやってみたかった」と意図を明かす。『ミザリー』等の女性サイコパス映画を数本観たことにより「全ての作品で最後にサイコパスが倒されて終わる。お客さんは、”あぁいう変な女性はいるよね”といった感想に落ち着いてしまう」と危惧し「みほがサイコパスで終わるのではなく、最終的に愛される存在になってほしい」と思いを込めた。7月に開催されたカナザワ映画祭2019では、「期待の新人監督」観客賞を受賞したが「おもしろいと言ってくれたお客さんもいるし、厳しい意見も多くありました。審査員の方からも意見は分かれました」と真摯に反応を受けとめている。現在は、劇場公開時の反応を心配しながらも、積極的に宣伝活動中だ。今後も神戸で自主映画で制作したいと意気込んでおり「南京町でキョンシー、神戸港でサメ映画。B級で低予算の自主映画をコンスタントに作っていきたい」と目を輝かせていた。

 

映画『みぽりん』は、9月7日(土)より、神戸・元町の元町映画館で1週間限定公開。また、9月14日(土)からは大阪・九条のシネ・ヌーヴォXで2週間上映、9月27日(金)からは京都・九条の京都みなみ会館で1週間上映。また、12月21日(土)からは、東京・池袋の池袋シネマ・ロサでも3週間の上映を予定している。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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