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子ども達の思いによって、大人達が動いた…!『こどもしょくどう』日向寺太郎監督に聞く!

2019年4月4日

豊かに見える社会の片隅で、日々の食事も満足に取ることができない子供たちの姿を子供の目線から映し出す『こどもしょくどう』が4月5日(金)より関西の劇場で公開される。公開を目前にした今回、日向寺太郎監督にインタビューを行った。

 

映画『こどもしょくどう』は、子どもの目線から現代社会の貧困問題を描いたドラマ。小学5年生の高野ユウトは食堂を営む両親、妹とともに何不自由ないおだやかな毎日を過ごしていた。幼なじみのタカシの家は母子家庭で、タカシの母はわずかなお金を置いたままほとんど家に戻ってくることはなかった。そんなタカシを心配したユウトの両親は食堂に招き、頻繁に夕食をごちそうしていた。ある日、ユウトたちは河原で父親と車上生活をしているミチルとヒカルの姉妹に出会う。彼女たちの境遇を気の毒に思ったユウトは実家の食堂に姉妹を連れて行き、2人にも食事を出してほしいと両親に願い出る。そして数日後、姉妹の父親が姿を消し、ミチルたちは行き場をなくしてしまう。
『火垂るの墓』『爆心 長崎の空』の日向寺太郎さんが監督を務め、脚本には『百円の恋』『14の夜』の足立紳さんが参加。ユウト役を藤本哉汰さん、ミチル役を鈴木梨央さんが、食堂を営むユウトの両親役を吉岡秀隆さんと常盤貴子さんがそれぞれ演じる。

 

日向寺太郎監督は、本作のプロデューサーである鈴木ワタルさんとデビュー作からお世話になっており、監督作が公開を迎える毎に次回作の相談をしている。前作『魂のリアリズム 画家 野田弘志』公開後の2015年に「今なら、こども食堂をやらないか』と提案を受けた。当時のこども食堂は、現在のように知られておらず、ようやくマスコミで報道され始めた時期。監督自身も訪れたことがなかったので、まずは、最初にこども食堂を始めた東京都大田区のだんだんに伺った。

 

こども食堂をモチーフにした作品を監督するにあたり、脚本家の足立紳さんとストーリーづくりから始めていく。雑談をしていく中で、2つの大きな流れを決めた。1つは子どもの視点を中心にして描くこと、そして、こども食堂が出来るまでのストーリーにすること。実際のこども食堂は大人が作っており、敬意を持っているが「事実をそのまま映画にすると、良い大人達の話になり、映画としておもしろさを感じない」と考えている。もう一つの当事者である子ども達の視点に基づき「今の社会はどのように見えるかを描くことによって、こども食堂が作られた根本的な理由が分かる」と解説した。とはいえ「何かを立ち上げることはドラマとしておもしろい」と説く。本作を通して「今の社会を作ったのは間違いなく大人であり、子ども達に責任はない。大人と子供は鏡のようなものであり、大人だからといっても、すぐに決断できない。子ども達の思いによって、結果的に大人達が動いたことを映画で描きたかった」と訴えた。

 

キャスティングでは、特に、ミチル役の鈴木梨央さんが印象に残る。主な子役俳優が5人いるなかで「梨央ちゃん以外の4人はオーディション。梨央ちゃんが演じたミチル役についてのオーディションも実施したが、予め梨央ちゃんに決めていた。プロデューサーに相談し、オファーし応じて頂いた」と明かす。鈴木梨央さんの魅力について「なんといっても芝居に見えない演技力。台詞を使わず表情だけで感情を伝えられる能力が素晴らしい」と絶賛した。また、ミチルとヒカルの姉妹の父親役に降谷建志さんを起用している。台詞はほとんどないが重要な役であるため「体で表現するためにユニークなキャスティングにしたく、ミュージシャンを起用しよう」とプロデューサーが提案。そこで、佇まいだけで表現できるミュージシャンとして降谷さんが候補に挙がる。オファーに応じて頂き、実際にお会いすると「降谷さんがこども食堂に物凄く関心があった」と判明。さらに、2人の母親役の石田ひかりさんは、現在、フードバングの活動に携わっており「降谷さんも石田さんもそうった活動に興味を持っていることが大きな意味があった」と納得の仕上がりとなった。

 

なお、今後の日向寺監督は、今年9月に日中合作の作品を中国で撮影する予定がある。この作品では、息子を亡くした父親の悲しみを描く。映画制作にあたり、日本在住の中国人詩人である田 原さんに協力頂いており「私は最初に、NHKで中国人の芸術家を捉えたドキュメンタリーを撮っており、中国に関心がある。また、監督した『火垂るの墓』が台湾で公開されヒットしたことも大きい」と今から撮影を楽しみにしている。

 

映画『こどもしょくどう』は、4月5日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田、4月12日(金)より、神戸・三宮の神戸国際松竹、4月20日(土)より、京都・烏丸の京都シネマで公開。

6人に1人の子どもが貧困状態にある現代日本社会の中で自分達には何ができるのか、映画を通して強く考えさせられた。

 

本作を通して、子ども食堂が何故できたのか、何故子どもたちに温かい食事が必要なのか、子ども達目線を通して知ることができる。あくまで子ども目線で語られるため、大人たちの背景や子供達がそうなった過去などには必要以上にフォーカスされない。だからこそ、子ども達が過酷な状況の中で漠然と何を感じるのか、観てる観客にも伝わってくる。車で生活をする姉妹の反応を見ても感じることができた。

 

小学校低学年と高学年の違いだけで、家族に対する不信や感じたことをそのまま口にする量や記憶も違う。子どもたちの貧困や虐待に周りの大人が気づいてあげられないケースも現実には多い。この姉妹を見ていると、以下にそれらを感じ取ることが難しいか、よく分かる。低学年は感じたことをそのまま口にするのは得意だが、実際の苦しみや傷みを記憶の中で霞めがちだ。一方で、高学年は個人差はあれど苦しみや痛みを言葉にして外部に発するのが難しくなっていく。浅川蓮クン演じる犬山タカシもそういった高学年の1人で、口数が少なく外部に発信するのが難しい。それ故にタカシが姉妹に歩み寄る姿は、ミチルとタカシの脆くて今にも崩れそうな微かな心の共鳴を感じられた。劇中、鈴木梨央ちゃんが演じる木下ミチルの壮絶な場面がある。物語を経て彼女が童謡の『海』を歌う姿がどこか悲哀で、無口な彼女の〝生きたい〟という踠き苦しんだ末に発せられる小さくも大きい決意の声を感じ心を打たれた。

 

子供達には常に選択肢を提示できる世の中でありたいし、世の中は子どもが思う以上に広く、大人が思う以上に狭く、子供達の拠り所を作れる社会で常にありたい。自分もその社会の中で誰かに手を差し伸べれる側の人間でありたいと強く願う。

fromねむひら

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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