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活字で得られる文字情報ではなく、対話を追体験する…!『がんになる前に知っておくこと』三宅流監督に聞く!

2019年4月5日

病名は誰もが知っていながら、その内実は知ることのない“がん“に焦点を当てたドキュメンタリー『がんになる前に知っておくこと』が4月6日(土)より関西の劇場で公開される。公開を目前にした今回、三宅流監督にインタビューを行った。

 

映画『がんになる前に知っておくこと』は、日本人の2人に1人がなると言われる「がん」を題材にしたドキュメンタリー。自身も検診で乳がんの疑いを指摘された経験を持つ若手女優・鳴神綾香がナビゲーターを務め、正しい情報の集め方や治療法の種類と選び方など、がんについての基本的な知識を一から紹介。がん治療を専門とする腫瘍内科医、外科医、放射線腫瘍医などの医療従事者や、がん経験者ら15人との対話を通して、がんとの向き合い方は一人ひとり異なること、そしてがんになった時に一緒に悩み、支えてくれる人たちがいることがわかってくる…

 

本作の導入は、がんセンターを起点にジェネラルな部分から入り、専門医を経て、コアな医療者、緩和治療、周辺を支える看護師、相談医、ピアサポート、実際に経験された方へと至っており「中心から少しずつ広げていく構成を想定していました」と三宅監督は解説する。取材する方は、本作を手掛ける上原プロデューサーからも提案もあったが、実態を把握した上で選んでいった。特に、先生方は、取材していく過程で、NPOの方々にも相談しながら、人脈や情報を基にして紹介頂いている。YouTube等で市民公開講座をアップロードされている方もおり、リサーチしながら先生に関心を持っていった。

 

インタビューした方は、構成的に無理な方は除き、基本的に全て収録しており、ベーシックなところを本作では重視している。各々に2時間程度は撮影しており、全体で5,60時間にも及んだが「それぞれ10分程度に収めるので編集には奮闘しています。10分聞かせるインタビューはなかなかない」と苦労していく。理想的は90分超の作品にしたかったが、限界があり、最終的に2時間未満には収め、本作が完成した。

 

また、言葉の編集にも苦労したが「がんについて何も知らないという鳴神さんの目線で対話を追体験していき、彼女の学びを通じて、学びを追体験できるように」と考えている。上原プロデューサーも若い方に見せたい思いがあり「20代の若年層も含め、40代のキャリアが濃いライフステージでがんになると大変なので、キャリア真っ只中にある人に中心に観てもらいたい」と訴えた。

 

先だって、東京での公開時では客層の幅はあったが「若い人から年配の方までいらっしゃいましたが、想定よりは高めの年齢層だった」と振り返る。医療関係者や製薬企業の若い方もおり「普段携わっていない分野の方もおり、全体の視点で見れてよかった」という反応を受け取った。生の声として「知らなかった方はイメージが変わったという声があった。がんと向き合っている方にとっては初歩的過ぎるかなと思っていたが、意外と、整理されたという声があった」と様々な感想に喜んでいる。取材相手によって違う角度で語られていくので「活字で得られる文字情報ではなく、対話を追体験することによる安心感があった。もう少し早く知っていたかった」とリアルな声も聞き取った。

 

今回、仕事仲間である上原商店から本作の制作を依頼されたが「今までと違うことを、右も左も分からず始めましたが、様々なことを知れたので、もう1本はがんについての作品をやりたい。もう少し深堀りしたい」と現在はさらに積極的になっている。本作はがんについて知る最初の入口であるため、誰もが最初の出発点に立てるようにしているが「がんの状況が進んでくると、状況によっては辛いこともある。さらに大変な場合はどのようにすればよいか。生死に関わることにつながる作品が出来れば」と、次回作の制作に目を輝かせていた。

 

映画『がんになる前に知っておくこと』は、4月6日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場、京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも公開予定。

本作を観て、がんとの向き合い方を知らされる…

 

がんのイメージは漠然と「怖い」「死」「悪い」としか思っていなかった自分は、ナビゲーターの鳴神綾香さんと近い情報量の状態でこの映画を鑑賞し始められた。がんと言いえば、まず多くの人が死を連想するかもしれないが、それは30年前のイメージ。今は「がんとうまく共存する時代」だと語る医師の話は他にも納得する内容が多い。今後の人生を考えた時、がんに対して不安なイメージを少しでも抱えている人は本作を観てみるといいかもしれない。

 

がんと診断された上で生活の質(クオリティオブライフ)を高めていくにはどうすべきか。事前に知っておくかどうか、現代において重要だと本作が進むにつれ何度も思い知らされる。そして、何より本作に登場する医師や看護師やがん経験者までもが、その恐怖を感じさせず堂々と話している姿に驚いた。特に印象的なのは放射線腫瘍医の唐沢久美子さん。ご自身も乳がんを患い、その体験談も踏まえナビゲーターや僕たち観客に話を伝えてくれる。臆する色もなく話してくれるので、聞いている私も、がんとの向き合い方を真剣に考えさせられた。

 

現代の情報社会の中で、本当に正しい情報は何か、自分ががんになった時に支えてくれるものは何か、不安な時どこに相談すればいいか。情報社会だからこそ、事前に知っておくことの大切さをこの映画を通して教わった。これから自分自身や家族や友人の誰かががんになった時、寄り添い手を差し伸ばせる人間でありたいなら、本作を鑑賞することを強く推奨する。

fromねむひら

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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