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我が子のような作品が褒められてよかった…「the face 品田誠ファイナル in 神戸・大阪」品田誠さんを迎えトークショー開催!

2019年3月10日

昨年、東京・池袋シネマ・ロサで開催された、これから注目すべき1名の若手俳優にスポットを当てる企画「the face」にて好評を得た俳優/監督の品田誠さんに関する作品を一挙特集上映する「the face 品田誠ファイナル in 神戸・大阪」を開催。大阪・十三のシアターセブンでは、3月9日(土)と3月10日(日)に品田誠さんを迎え多様なトークショーが開催された。

 

3月9日(土)、まずは、品田誠さんの主演作『ふたりのおとこ』。
「何か忘れてる気がする──」。彼女にそう告げた朝から旧友のことが頭から離れない。いつしか連絡が途絶えた彼を捜し始める。しかし、記憶の痕跡を辿るうちに青年は彼女の秘密と、旧友の本当の姿に気づいてしまう…

 

上映後、品田誠さんと高橋良浩さんが登壇。

 

森田涼介監督は様々な作品で脚本を書いており、自身が監督を務める作品が撮りたくて、本作の企画をスタートさせた。オーディションで森田監督と出会った品田さんは「作品が凄くおもしろかったので、様々なことを手伝いながら進めていきました」と振り返る。「森田さんは熱い人。会った時にはもう役が決まっていました」と明かすと、高橋さんも「僕も同じですね。別の方と2人で迷っていたが、当日お会いして決められました」と打ち明けた。

 

脚本について、最初は半分しか読ませてもらえず、品田さんは「よく分からないけど、おもしろいな」と思いながら読み進めていく。森田監督は、直前まで見せないで演出させ、最後に読ませてやろう、と意図があり、先の見えない演出の意図を品田さんも理解する。作品の後半は30分の長回しがあり、覚えるのが大変だ、と森田監督も気づき、脚本を見せてもらったが「こういうことになるんだ」と驚いた。「伏線もあり、細かいところに動きがあり、拘っていた」とおもしろくなっていく。

 

そこで、高橋さんは「とにかくカメラマンと綿密な打ち合わせを行った」と解説。「人生で初めてカメラを横目で見ながら演技をしていた」と振り返ると、品田さんは「最後は監督の拘りがあり、映画の中に2人がいることを含めて”これは映画だぜ”と遊び心を効かせている。タイミングや角度に拘り続けた」と述べていく。撮影を振り返り「何度撮っても体力的に疲れる。僕は狂っていく必要があり、メンタル的に2回目のエネルギーが足りない。後半の脚本を渡されてからはそのシーンばかり練習した。動いてみないとカメラ位置も分からないので、本番前には5日間も準備した」と監督と役者の苦労を垣間見た。

 

続いて、3作の短編作品を上映。
主演作『Lemon & Letter』
小学5年の海斗は男木島に一家で移住してきたが、母を亡くし、父も島を出て行く。一人寂しさに耐える海斗に優しく微笑む転校生の夕。やがて高校生になった二人は将来について悩み始める…。子供たちの初恋と成長の物語。https://www.facebook.com/watch/?v=1224770620892609

 

出演作『桃の缶詰』
動物写真家の優一は、クジラの撮影のため北極に向かう支度をしている。旅の準備を手伝う恋人の紗智子。優一は桃の缶詰を北極に持って行き、いざという時に食べるのだと話すと、紗智子はとんでもないと激怒するのだが…。

 

出演作『ただ・いま』
東京の一軒家でルームシェアをして生きる7人の若者たち。夕飯のすき焼きを囲む会話の中で、ルームメイトの一人が家を出て行くことを告げる。それぞれの迷いを抱えながらも共に生きる若者たちの、或る夜のヒトコマ。

 

上映後に、品田誠さん、『ただ・いま』の辻秋之さん監督、橋本致里さん、『Lemon & Letter』の梅木佳子監督が登壇。

 

梅木監督は、『Lemon & Letter』の舞台になった男木島に、3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭の開催時に初めて訪れた。「島の猟師のおじさん達に50センチの舌平目を2匹頂いたのが始まり。以来、時々、男木島に遊びに行かせてもらうようになりました」と明かし「その時、夕日が水平線に綺麗に落ちていく景色に感動し、シナリオ講座に通いながら、男木島のストーリーを描き始めました」と振り返る。初監督作品『W&M ウーマンアンドマン』が初めてラブストーリー映画祭にノミネートされた時、『Psychoromantic』出演の品田さんを知り、次の作品にオファーした。品田さんについて「見た目だけじゃなく、雰囲気がいい」と太鼓判を押す。

 

『桃の缶詰』では、JR西日本のCM等に出演している辻千恵さんの初出演映画の相手役としてオーディションで品田さんが選ばれた。品田さんは「1日で撮ったが、1シーンの出演でも、いかにして自分の出てないシーンで自分の存在感を匂わせていくか。相手の印象に残すかが重要でした」と振り返る。

 

『ただ・いま』について、辻監督は「全員主人公のつもりで7人を描こうとした。僕の身近にいる人達をモデルにして描きたかった」と明かす。企画の段階から知り合いの俳優には出てもらいたい、と考えており「蔦哲一朗監督のワークショップからもキャスティングし、最後に品田さんを紹介してもらい『恋愛依存症の女』を演技を観てオファー」と経緯を説明。

 

ストーリーは、辻監督が大学の同期や後輩とのルームシェアで住んでいる場所がベースとなっており「あの場所で撮りたいな」と構想していた。スポンサーの出資もあり「好きな作品を撮っていいよ」と有難い言葉を受け取り「自分の身近な場所と人で、特別なことが起きていない、何気ない情景をどのように映画にするか」を考えていく。作中に登場するすき焼きは時々作っており「人の出入りがある時に作って、家族の団欒や平和の象徴を表している」と解説する。3日間の撮影となったが、橋本さんは、撮影現場に親近感がわいた理由として、コタツを挙げた。品田さんも賛同し「撮影中は冷暖房の機械音を出せないので、皆がこたつに入り、自然と距離感が縮まる。鍋が嬉しくて本当に食べている。何を食べるか、皆の性格が出ていますね」と温かかった現場を懐かしむ。

 

会話劇である本作について、辻監督は「人が傷つくことをズバッと言う人がいるが、言うことで物事が動き出す。普段は言わないようにしていることに触れることで、一歩踏み出す。そんな人間の関わりにある些細な出来事で人の生き方が変わる一瞬を描いた」と解説。品田さんも「合理的な人間が介入することで、皆が感情的になることもある」と添えた。

 

なお、影響を受けた作品として、辻監督は『ブレードランナー』を挙げる。舞台設定は2019年であり「あの世界ではないが、平成が終わる。平成の象徴的な生き方、若い家族のかたち、働き方を記録したい思いがあり、平成時代末期や21世紀初頭と仰々しくテロップを出している」と説く。さらに「サザエさん」を題材にしており「昭和のイメージだが、平成を終えようとして、サザエさん、という家族像すら消えかかっている」と述べる。他にも、クリストファー・ノーラン監督作品に則り「時間をテーマに空間を描いており、本作も時間と空間を1シチュエーションで描いている」と表現していく。橋本さんは「普段から映画を観ない人にとっては、様々なところに沢山の情報が散らばり過ぎて拾うことも大変。すき焼きから家族っていいものだなと感じて頂けたら」とメッセージを送った。

 

3月10日(日)の最後は、監督作含め3作の短編作品を上映。

出演作『太宰橋』
東京・三鷹に住む彩音は、太宰治がよく通ったという跨線橋の側に住んでいた。ある日、その橋で友人に出会うが、その傍らにいたのはかつての恋人だった…。日常の中で過去と折り合いをつけようとする、ある女の物語。

 

監督・主演作『ノンフィクション』
自身を主人公とした自伝的作品で5年前に新人賞を受賞した作家の光一は、私的な文章ばかり書いていたことから、伸び悩む。編集
者から辛辣な一言を言われた帰り、不思議な少女と出会う。ついて行った先には…。

 

監督作『不感症になっていくこれからの僕らについて』
東京で音楽活動をしている健だが、何を歌えば良いのかわからなくなり、久しぶりに故郷に帰って遙や太郎ら幼なじみと再会する。取り壊される小学校、変わってゆく街並み、友人。健は初めて作った自分の曲に思いを巡らせる…。

 

上映後に、品田誠さんと山元環監督が登壇。2人は『帝一の國』で共演して以来の仲である。

 

『太宰橋』は東京都三鷹市が舞台だが、大阪出身の山元監督は、関西弁で始まった本作に新大阪駅付近の出来事と勘違い。そもそも、大阪芸術大学の卒業制作作品『ゴロン・バタン・キュー』で同じようなロケーションで撮影しており、似ている橋があっからだ。本作に対し、まずは、16mmフィルムによる映像の綺麗さに驚く。そしてビニール袋の中にしっかりとネギが入っていることを挙げる。「カットワークから芝居の質量までしっかり作られている。特に、主役の黒柳友里さんが短い時間の中で顔つきが変わる。流れていく人生の中で人間は顔つきが変わっていく」と絶賛していく。

 

『ノンフィクション』は、品田さんの初監督作品。山元監督は「第1作目は、内面的な悩みをどのように表現していいか分からないから、上手く表現できないまま進行してしまう」と鑑みながら観ていたが「途中から一気にサスペンスになっていく急展開には驚いた。監督をする上でどのような勉強をしたのか気になりますね」と興味津々。品田さんは「役者をやっていると、役者視点でしか映画を知らなかった。この映画では、役者に演技をさせないで、作品を表現している」と解説。さらに「『ドラクエ』の表現がリアルになり過ぎると感情移入できなかった経験があった。役者が表現しないで、カメラワークやストーリー展開だけで魅せる方法を探求して撮った作品」だと述べる。山元監督は「役者・主演・脚本・監督・編集。チャップリンとほぼ同じことをやっていますよね。頭が混乱するから、凄い。初期衝動でやっていますよね」と指摘するが、品田さんは「役者を3日間も拘束するのが申し訳ない。自分がいれば大丈夫なので」と告白。山元監督は、高校3年生の時に初めて映画を撮ったが納得いくものが出来なかった経験を明かした上で、品田さんの初監督作品を絶賛した。

 

『不感症になっていくこれからの僕らについて』は、品田監督としては4作目となり、品田さんは演出に集中する。山元監督は、「映画制作は分業制スタイルのプロフェッショナルな集まり。皆が頭の使い分けをすることで、思わぬカットが生まれる」とを伝えたうえで、本作について「この映画では生まれている。冒頭シーンから、どのように情報を観客に提示していくのか楽しみながら観ていた。教室のシーンでは世界観の棲み分けには驚いた」と絶賛。品田さんは、ロケハンで舞台となった学校を見つけたが「カメラマンとカットの打ち合わせを緻密に行った。1日しか学校で撮影できなかったので、完全にカットを理解していき、カメラマンにパターンを提案して頂きながら、役者の動かし方や光の演出方法が膨らんでいった」と解説。山元監督は「考え抜いた結果、カメラの位置を決め、必然的にカット割りが生まれている。映画のおもしろさを感じた。あの1カットに感動し、気持ちがのりました」と興奮ぎみ。さらに妹役の福永マリカさんについて「話す前に息継ぎをしており、リアルな演技をしていた。芝居力があり、ストーリーが拡がった」と分析。品田さんも「カメラ越しに映ると、涙がたまる、呼吸が浅くなる、緊張が走って瞳孔が開く、といったことが映像に出ている」と実感している。さらに、山元監督は「一朝一夕で出来る演技じゃない。その演技で相手の反応もリアルになる。ストーリー展開がはっきりする」と解説していく。品田さんに対して「監督としての才能は凄い。統括できている面に関しても、監督としての才能を感じる。様々な監督作品で役者のレベルを上げながら、監督してもやっていける」と太鼓判を押す。品田さんは「撮る方が大変ですが、作品は我が子のようです。我が子が褒められている」と喜んだ。山元監督は「短編作品をしっかりまとめているのは相当難しい技術。長編作品も観たいですね」と期待を寄せている。

 

the face 品田誠ファイナル in 神戸・大阪」は、大阪・十三のシアターセブンで開催中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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