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言葉と風景で福島の今を伝えたい…『福島は語る』土井敏邦監督を迎え舞台挨拶開催!

2019年3月10日

東日本大震災で甚大な被害を受けた福島の人々が当時から現在までの思いを吐露したドキュメンタリー『福島は語る』が3月9日(土)より関西の劇場で公開。3月10日(日)には、大阪・十三の第七藝術劇場に土井敏邦監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『福島は語る』は、福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染で故郷を追われるなどの被害にあった被災者たちの声を、丹念にすくい取った証言ドキュメンタリー。故郷や住処を追われ、生業を失い、家族離散を強いられ、将来の希望を奪われた数十万人の被災者たちの傷がいまだ癒えない中、日本社会は2020年の東京オリンピックに向けて浮き足立ち、福島の原発事故が忘れ去られようとしていると感じた土井監督が、被災者たちに取材し、彼らが心の底にためている思いを聞いた。100人に及ぶ証言者の中から選びぬいた14人の現在進行形の「福島の声」を、4年かけて映像作品に仕上げた。
『異国に生きる 日本の中のビルマ人』『飯舘村 放射能と帰村』といったドキュメンタリーを手がけてきた土井敏邦監督が手がけた。

 

上映後、土井敏邦監督が登壇。翌日が3月11日であるため、真摯な思いを伝える舞台挨拶となった。

 

本作は5時間30分の大作であるが、劇場用作品でも2時間50分の作品。土井監督は、2つのことに注力している。まずは言葉。言葉の力に賭けてみた。震災・原発事故から8年を経て「福島では事故を目で見ることが難しくなってきている。県外からは、普通の生活に戻ったと思われている。だが、被災者の胸中にずっと沈殿しているものは目で見えない」と感じている。「見えるようにする為には言葉が必要。私の仕事はその人達の思いをどうやって引き出すか」と心がけてきた。特に「事象や問題を語る人は沢山いるが、聞く人の胸には届かない」と感じており「その人の内面にある痛みを吐き出す言葉。人間性が見えてくる言葉。私達が共通して持っている人間の普遍的なテーマを引き出すような言葉を選び抜きました」と振り返る。インタビューで相手の言葉を引き出す時には「何を大切にして生きているのか」と投げかけており「相手に対して裸になるしかない。どういう生き方をしているかを相手に伝えている。そこで相手が心を開くか決まってくる」と考え、監督の人生を映画の中に投影した。

 

もう一つは風景。失われた光景を求めた。「失われたのは人々の生活であり、夢であり、人間にあるものが失われた。自然が失われたと皆さんに知って頂くことが大事だ」と思っている。人間が生きるうえで「故郷とは、土地とは、何なのか」と追求し「原発事故という人災によって、故郷を奪われた人達を伝えることは私にもできる。私にしか出来ないことがあるんじゃないか」と気付き、福島に向かった。福島は故郷という視点だけでは描けず「人間が人間として生きる権利が奪われている。誰も責任を負わない。フクシマは終わったことになっている。無かったことのようになっている」と嘆くしかない。だが、どんな状況下であっても「我々は、何が奪われたのか伝えないといけない」と確信している。

 

なお、「編集段階では、証言をどのようにまとめるか分からなくなった時があった」と告白。その時、スベトラーナ・アレクシエービッチさんが書いた『チェルノブイリの祈り』を思い出した。「原発問題を説きながら、人間を描いている。一人一人の人生を描き、その人達を鑑にして私達が自分自身を映し出す」と説き「それぐらい言葉には力がある。だから、この原発事故には普遍性がある。そんな思いを込めて作りました」と訴えていく。「この映画には伝える力を持った人達の言葉があります。日本の多くの人達に、終わったと思っている人達に、この映画を突き付けたい」とメッセージを伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『福島は語る』は、大阪・十三の第七藝術劇場(3月23日(土)からはシアターセブン)と京都・烏丸の京都シネマで公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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