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21世紀の女の子を救い、いつか映画を作るかもしれない…『21世紀の女の子』ふくだももこ監督、松本花奈監督、金子由里奈監督を迎え舞台挨拶開催!

2019年3月3日

“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーが揺らいだ瞬間が映っていること“を共通のテーマに、15人の女性若手映画監督が繊細な目線で捉えた物語が映し出される『21世紀の女の子』が、関西の劇場でも公開中。3月3日(日)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田にふくだももこ監督、松本花奈監督、金子由里奈監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『21世紀の女の子』は、『溺れるナイフ』の山戸結希監督が企画・プロデュースを手がけ、自身を含む1980年代後半~90年代生まれの新進女性映画監督15人がメガホンをとった短編オムニバス映画。「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」を共通のテーマに、各監督が1編8分以内の短編として制作。

 

上映後、ふくだももこ監督と松本花奈監督と金子由里奈監督が登壇。年齢の異なる3人の女性監督が作品かけた思いを語っていった。

 

映画を観たり撮ったりと、映画を抱えるような人生を送ってきた金子監督は、本作で「初めて社会性や意義を脱いで真っ裸な状態で撮られる体験をした。撮られた自分を観た時に美しいと思いながら、映画で再現しました」と語る。1年前に山戸監督からオファーを受けた松本監督は「テーマに沿った考えが生まれた時、『誰かのことが好き』という気持ちを詰め込みたいと思いながら撮りました」と明かす。元カレのケータイに書いてあるメモが面白かったことを作品にした、ふくだ監督は「別れた後にどういう関係になるのかを想定し男女を描こうと決めていた。この映画を撮ろうと思っている時期は、誰かのために映画を撮ろうと思っていた時期」と告白。「セフレとの悩みを抱えている友人がおり、どうしたらいいやろ。思いを伝えたら、関係が壊れそう」と話を聞きながら、モヤモヤしていた。「彼女達がどうにか報われる方向にいけばいいな」と思い、本作を撮り「モデルにした友人達が観てくれて、凄く浮かばれた瞬間でした」と喜んでいる。なお、作中に出てくる歌は、自作の歌詞を即興で歌えるミュージシャンにカラオケボックスで歌ってもらい、スマホ録音されたものを使用しており「関係性の説明ができ、2人が過ごしてきた期間を一瞬で分かってもらえると思い、そのまま使いました」と説明した。

 

主演女優を伊藤沙莉さんにお願いした金子監督は、「映画ナタリー」での鼎談を振り返り「『普段の自分が武器にしている変顔や動きが全部奪われた状態で、自分であることしか出来ず、この映画にとって合っていた』と仰っていた。女優ではなく、人間としての伊藤沙莉さんだな」と感じ、印象的な体験だった。また、松本監督作品に出演した橋本愛さんについて「可愛さに泣いてしまった。キャリアある女優さんですが、同世代の女性が撮ったら、あんなに可愛らしい表情をするんだな。初めて観る顔が沢山あり、良かった」と感謝している。コメントを受け、松本監督は「1日だけの撮影で、女優さんとどれだけコミュニケーションを育めるか、は共通の課題」だと応えた。金子監督は、現場での伊藤さんについて「技術者気質だった。私を演じればいい。と納得した瞬間から、何も言う必要はなく、素晴らしいカットの連続でした」と称えていく。ふくだ監督は、黒川芽以さんと木口健太さんの2人で撮る、と決めていた。そこで、脚本完成後に、黒川さんとディスカッションし「キャラクターの気持ちを想像していった。黒川さんが『好きだから、感じなくなる瞬間がありますよね』と言い出し、良いなと感じた。そこで、近所にいた木口さんを呼び、エチュードで演じてもらった。その空気感を脚本に反映でき、2人が持つ空気感が合った」と貴重な時間を共有していく。撮影を終え、黒川さんについて「強くてサバサバしたカッコ良い素晴らしい女優さんでした」と絶賛した。

 

8分の作品に編集するするため、金子監督は「過去に撮っていた映画に未練が残っている。ベットの上でプロジェクターを抱えて投射した映画が自分に返ってくるショットを残したり、映画内映画をもう一度反復したりしている」と印象が残るように、収録した映像を大事にしている。松本監督は、普通に編集し12分になったが「最終的に橋本さんが演じた役が一番輝いた瞬間を切り取りたいと着想時から描いていた。観終わった後に光り輝いていたなと印象に残ってほしいと編集を進めた。ふくだ監督は「冒頭のラブホでお茶をたてるシーンは残したかった」と告白。なお、編集後、数人の監督には山戸監督から修正案が出されており「私には一緒に編集しましょうと伝え、2人で編集し直しました。結果的に、関係の苦しさや女性の心情が表現できました」と大いにに感謝している。また、上映された順番について「私達が撮り終え作品を試写で観るまでは、他の監督がどういう作品を撮ってるか全く知らなかった。最初はビックリすることが沢山あった。国内版と国際バージョンがあり、上映順が違い、見え方が全く異なる。国内版の並びは、それぞれの作品が前後の作品同士で補っており、素晴らしい流れになっている」と解説。今回、初めて国内版を鑑賞し「まさに、21世紀の女の子のための映画でした」と感極まった。

 

最後に、金子監督は「山戸さんが大きい受け皿となり、参加出来て良かった。公募枠があり、観客だった人を映画に巻き込んでくれた。映画を撮る側に引っ張られるような作品」とコメント。松本監督は「15作品が詰まった映画は後にも先にものないんじゃないかなと思っている。映画は一人で撮れないし、自分の思想を反映する芸術。様々な監督と知り合え、交流出来たことが嬉しい。これで出来た縁や絆はずっと大事にしたい」と思いを込める。ふくだ監督は、テアトル新宿での先行上映の舞台挨拶で出来事を語っていく。上映前の舞台挨拶で、制服を着た女の子が前方の端っこに座っており、山戸監督の言葉と橋本愛さんの思いを聞いた女の子がボロボロに泣いているのが見え「山戸さんが『21世紀の女の子のための映画を』と言っている意味がその女の子を見て分かった。あの子のための映画なんだ」と実感。「映画は確実にその子のことを救うだろうし、その子がいつか映画を作ってくれるかもしれない。それを感じた時、この映画に参加出来て良かった。その子のことは一生忘れない。そういう女の子が日本中に沢山いて、出会いたい。皆が映画を撮るように、表現出来るようになればいいな」と心から願いながら、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『21世紀の女の子』は、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、神戸・元町の元町映画館、京都・出町柳の出町座などで公開中。

 

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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