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次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す「ndjc2018」合評上映会!若手監督迎え舞台挨拶開催!

2019年2月14日

次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2018年度作品が完成し、3月16日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で上映される。本公開に先駆け、2月14日(木)には、合評上映会が開催され、各作品を手掛けた、板橋基之監督、岡本未樹子監督、川上信也監督、眞田康平監督、山元環監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、平成18年度より始まり、今年度で13年目になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
8月に行われたワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ5人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作。フレッシュな感性と第一級の確かな技術が作り上げた個性豊かな短編映画5作品が上映される。

 

上映後、眞田康平監督、山元環監督、板橋基之監督、岡本未樹子監督、川上信也監督が登壇。それぞれの作品について制作のきっかけ等を語った。

 

『サヨナラ家族』…

1年前、目の前で突然父を亡くした洋平。その事実をいまだ受け止めきれない彼は、妊娠中の妻を残して一周忌のため実家に帰省する。母は父がふっと帰ってくるような気がすると仏壇に話しかけ、妹も自分なりの方法で父の死を受け止めようとしていた。それがどうしても納得できず困惑する洋平に、不思議な現象が起こり始める。主演は『カナリア』の石田法嗣さん。

 

手掛けた眞田監督は、父親が3年前に亡くなり「自分の周りで起こったことをベースにしました。家族が身内の死をどうやって受け止めていくのか鑑み、自分もどうやって受け止めていけばいいんだろう」と考えた。それぞれの方法で乗り越えていくしかないと受けとめ「映画にしたらどうだろう」と閃く。自身の土台が半分に分かれてしまった感覚があり「悲しい気持ちと、日常生活を送っていかないといけない気持ちがある。どのように映画として表現すべきか」と熟考の上、本作が完成した。

 

『うちうちの面達(つらたち)は。』…

鎌田家にある奇妙な出来事が起きる。2週間前に夫婦ゲンカして以来、ママが姿を消してしまったのだ。しかし13歳の浩次朗だけは、ママの居所を知っていた。実はママはずっと家の中にいて、家族にバレないように浩次朗が手助けしているのだ。家族が家にいない日中だけがママのくつろげる時間だったが、ある日、パパが突然帰ってきてしまい……。浩次朗を『クロユリ団地』の田中奏生さん、両親を田口浩正さんと濱田マリさんがそれぞれ演じる。

 

手掛けた山元監督は、愛が深い家族の中で育ったと実感しており「周りから異常な程仲が良い」と言われてきた。だが「当たり前のように家族と生きてきたので、不思議ではない。自分が持っている”当たり前”は、家族から生まれている」と考えている。そこで「家族の普遍性はどこにあるのか」と着想。家の中に住んでいる家族は、各々のテリトリーがあると捉え「お母さんとお父さんに確執があり、お母さんが居留守を使って屋根裏に逃げ込み2週間も不在」とユニークな設定を思いつく。「それが当たり前になりつつあれば、家族の普遍性はどのように変化するか」とストーリーを展開していった。

 

お父さんのテリトリーはトイレに設定し「美術監督の福澤さんに依頼し、悩んでもらいながらも、お父さんの趣味を反映してもらった」と解説。出来上がったリビングルームのようなトイレを初めて見た時、とても気に入り「2時間も籠っていた。緑の絨毯も気持ちいい」と漏らす。お父さんを演じた田口浩正さんはベテラン俳優であり、演技のお願いは言いづらかったが「自分なりの言葉を以ても、何を言えば失礼にならないか分からなかった。遠巻きに失礼にならないように伝えよう」と頑張っていく。だが、キャストそれぞれに考えた演技のプランがあり「自分の意見を押し通さず、出来るだけ役者さんがやりやすいようにした」と制作に励んだ。

 

『くもり ときどき 晴れ』…

母と暮らす晴子のもとに1通の手紙が届く。それは25年前に母と離婚して生き別れた父の生活保護扶養照会だった。家族の中で自分にだけは優しかった父に会いに行くことにした晴子は、25年ぶりの父の姿に、扶養すべきか否か揺れ動く。出演はMEGUMIさん、浅田美代子さん、水橋研二さん。

 

手掛けた板橋監督は、友人と呑んでいる時に「数十年振りに父親の消息が分かり、会いに行ったら、ぼけていた」という話を聞き、今回の物語を肉付けしていった。監督自身も4人兄弟で家族が多く「家族の形を深めていくと、皆の家族に対する考えは違い、かみ合わず、ずれている」と興味深く感じる。そこで「父との会話劇や母とのズレ、兄とのかみ合わなさ等を映画にしよう」と思い浮かぶ。

 

過去に、NHKのドキュメンタリー制作に携わっており「金属加工工場を取材した時、おじさんの趣味が花づくりだった。『金属加工は設計図通りに出来るけど、花は上手くいかなくて楽しい』と言っていた」と思い出し、本作に登場する父親のキャラクターに反映した。母親役に浅田美代子さんをキャスティングしてみたが「間が上手い。現場ではずっと喋り続けていた。現場の雰囲気は笑いに溢れていて、楽しかった」と信頼を寄せている。本読み段階から「『なんでも言って』と言われ、開き直って、コメントすると応えてもらった」と勉強になる制作過程だった。

 

『はずれ家族のサーヤ』…

祖母と2人きりで暮らす小学3年生の沙綾。恋人との生活を選んで家を出た母親は、時折、父親の違う弟・光希を連れて会いに来る。沙綾は弟のことが大好きだが、両親と一緒に暮らせる彼をうらやましくも思っていた。そんなある日、沙綾は学校帰りの公園でおもちゃ売りの男から古い木箱を買う。何の変哲もないその箱には、不思議な力が宿っており……。『義母と娘のブルース』の子役・横溝菜帆さんが主演を務め、『美人が婚活してみたら』の黒川芽以さんが共演。

 

手掛けた岡本監督は「大人と子供では、大人の方が幸せを選べる」と考えている。自分の幸せを求めてしまう気持ちに共感し「自身と向き合うことを辞めて、幸せだけを追い求めてしまうのは誰しもある。第三者から見れば、大事なものは自分にもあると気づく」と受けとめ、制作に至った。

 

『最後の審判』…

東京美術大学の受験に挑む稲葉は浪人5年目で、今年を最後の挑戦にしようと決めていた。2日間で完成させる人物着彩の試験に臨む受験生たちの前に、開始時間直前になって独特な風貌の初音が現れる。初音はとてつもない画力で他者を圧倒し、稲葉も彼女を意識するあまり自分のペースを見失ってしまう。怒りに震える稲葉は、初音に声をかけ彼女の圧倒的画力の秘密を聞き出す。初音の画力は、路上で似顔絵を描いてきた中で培われたものだった。

 

手掛けた川上監督も芸大受験を経験しており「僕自身は一浪だけですが、周りには多浪の方がいた。上手いのに受からない人や諦めてしまう人が沢山いた。僕自身は志望の芸大に受からず、デザイン科に入り今に至っている」と明かす。当時は、モヤモヤとした気持ちを抱いていたが「後に出会った人々や、実際に絵を描いて生計を立てていた友達がおり、繋げ合わせ制作した」と本作に昇華していく。「受験で挫折した方は多くいる。その共通性と美大受験という特殊な世界が合わさった時、観たことない映画になるんじゃないか」と制作に至った。

 

カメラ目線で喋る主人公が登場するが「自意識過剰なキャラクターを表現するためにカメラに向かって語る」と意図があり、強烈な印象が残る手法を採用。公開を迎え「綺麗に終わらず、まだまだ人生は続いていく。ご都合主義で終わっていない。エンターテインメントとして楽しんでもらいながら、人生が続いていくことを描けた」と満足している。

 

若手映画作家育成プロジェクト ndjc2018」は、3月16日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で公開。また、3月11日(月)には、第14回大阪アジアン映画祭内での先行上映が予定されている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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