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第100回記念大会を迎える高校野球選手権 大会歌とその裏側にあった物語を描く『ああ 栄冠は君に輝く』稲塚秀孝監督に聞く!

2018年7月20日

(C)TAKIONJAPAN 2018

 

高校野球選手権の大会歌「栄冠は君に輝く」の誕生秘話と、その作詞家である加賀大介さんと家族の物語を描く『ああ 栄冠は君に輝く』が関西の劇場でも公開される。今回、本作を手掛けた稲塚秀孝監督にインタビューを行った。

 

映画『ああ 栄冠は君に輝く』は、70年間歌い継がれた「栄冠は君に輝く」の誕生秘話と、その作詞家である加賀大介さんと家族の物語。今夏、第100回記念大会を迎える高校野球選手権。大会歌は「栄冠は君に輝く」の作詞は、加賀大介(石川県根上町出身)さん。1914年に中村義雄として、農家に生まれました。16歳の時、裸足で野球をしていて、右足指先をけが。治療を怠ったことで、右ひざから切断することになる。絶望の淵に落ちた義雄は、やがて文芸の道を目指し、”投稿生活”を始めた。「加賀野短歌会」を主宰し、昭和20年に太平洋戦争が終わり、戦後民主主義のなか、演劇活動を始める。そのころ、運命の女性である高橋道子さんが加賀野短歌会に参加。昭和23年6月、学制変更により第30回高等学校野球選手権大会に因み、大会歌の作詞が公募された。5252編の中から選ばれたのは、加賀大介(のちに改名)の書いた「栄冠は君に輝く」だった…

 

夢を持ち続けた加賀大介さんという人物に、稲塚監督は”男のロマン”を強く感じた。また、頑固で時に身勝手な大介さんが抱く夢の実現を支えてきた妻の道子さんに感服。大介さんは16歳の時に負ったけがで体が不自由になったことを終生決して愚痴らなかった、と道子さんから伺い、いつも前を向いて生きてこられたことを素晴らしいと感じた。大介さんと出会うきっかけとなった”短歌”を道子さんは今も続け、「栄冠は君に輝く」を第100回大会まで見届けようと考えていることに共鳴。だからこそ「今作は、この時期に完成・公開しなくてはいけない」と一念発起。先月まで撮影がされていたが、第100回大会開催時の作品公開を目標に、2009年に知り合いの脚本家とドラマ台本に取り組み始めた。ドラマ撮影期間はわずか5日間だったが「仲代達矢さん主宰の無名塾や地元から演劇グループの方々に出演してもらった。台本を充分に読み込んで頂いた上に、加賀弁(根上弁)を短期間で習得された役者の皆さんには脱帽するしかない。そして能美市、七尾市、金沢市のロケ地の自然と人々の協力に助けられました」と感謝の思いを伝える。

 

本作は、ドキュメンタリーとドラマによって構成された作品。脚本執筆時に、稲塚監督は「ドラマ台本は、ドラマだけで成り立つように世界観を作った。これまでもドキュメンタリードラマ形式を旨として製作してきた。事実に基づいてフィクション化し、ドラマとドキュメンタリーが相互に補い、邪魔にならないように」と心がけた。企画当初から考えており「撮影・編集にも無理がなく取り組めた」と振り返る。大介さんの娘である淑恵さんへの取材も重ねながら「演劇を愛する淑恵さんは演劇科への進学を大介さんに認めてもらえなかったが、東京学芸大学(主に教師養成)に進学しながらやはり演劇を止めなかった。父譲りの気丈な性格と感じた。そこで映画の中で、本人が本人を演じるという役をお願いし、即座に理解してくれた」と嬉しかった。道子さんに対しても「お仲間とカラオケを楽しみ、『栄冠は君に輝く』を熱唱して下さった。残念ながら映画には登場しないが、どこかで伝えたい」と思いを抱く。今作では加藤登紀子さんが「栄冠は君に輝く」をアカペラで歌唱する。これまで男性歌手が歌ったことが多い楽曲だが「『栄冠は君は輝く』は高校球児だけの歌ではなく、挫折しながら夢を追い求める無名の人々にも”栄冠は輝く”というエールを贈る歌であることを、映画を通じて伝えたい」と明かす。

 

なお、現在の稲塚監督は、監督10作目として、『最後の二重被爆者』(仮)を来夏公開に向けて準備している。2年前から青森に住む二重被爆の女性(87歳)を取材しており「広島では爆心から1.8Kmの地点で被爆。2歳下の弟と似島(瀬戸内海)に一時避難したのち、8月8日の避難列車で長崎へ向かい二度目の被爆となった。当時三菱勤務の父は出征中、母は離婚し長崎に住んでいた。この数奇な体験をドラマとドキュメンタリーで描く」と解説。また、これまでに稲塚監督が製作した『二重被爆』(2006年)や『二重被爆~語り部・山口彊の遺言』(2011年)に出演して頂いた山口彊さんの未公開映像も加えようと検討中だ。

 

映画『ああ 栄冠は君に輝く』は、神戸・元町の元町映画館で7月21日(土)から、大阪・十三の第七藝術劇場で7月28日(土)から公開。各々の初日には稲塚秀孝監督の舞台挨拶を実施。なお、京都映画サークル・京都映画センター主催の上映会が8月26日(日)に京都教育文化センターで開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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