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『無垢の祈り』シアターセブンで再々上映開始!亀井亨監督迎え舞台挨拶開催!

2017年9月16日

ホラー作家の平山夢明さんによる原作を亀井亨監督によって映像化した最狂の自主製作映画『無垢の祈り』が9月16日(土)より大阪・十三のシアターセブンでの再々上映を開始した。初日には亀井亨監督を迎えて舞台挨拶が行われた。

 

映画『無垢の祈り』は、暴力的描写や10歳の少女への虐待描写など、過酷な内容が含まれるため、亀井監督が自主映画として製作した作品。10歳の少女フミは学校で陰湿ないじめを受け、家に帰っても義父の虐待が日常化していた。母親は夫の暴力から逃げるため新興宗教にのめり込み、誰も助けてはくれない。絶望的な日々の中で、自分の住む町の界隈で連続殺人事件が起こっていることを知ったフミは、殺害現場を巡り、ある人に向けてメッセージを残す…

 

 

上映後、亀井亨監督さんが登壇。亀井監督は、お客さん達から鑑賞後の重苦しい気持ちを察し、スロースタートのモードでトークを開始。主演の福田美姫さんとは今も親交がある旨を伝え、場を和ませていった。

 

主人公のフミを演じた福田美姫さんは撮影当時9歳だった。亀井監督は出演してもらうにあたり「映画は作り込んだ世界であり、美姫ちゃんの性格とは真逆のキャラクターを演じてもらう。勿論、家族からDVを受けるような家庭では育っていないので想像してほしい」とお願いした。福田さんは。幼い頃からCM等に出演していたので撮られることには慣れていたが、台本に沿って演じることは初めて。亀井監督は、福田さんに主人公フミの周りの状況を想像してもらい、それ以外は現場で遊ばせていた。「主演するのは年齢問わず一番楽しい。はしゃいでもらいながら、2つのお願いをした。1つ目は”用意スタート”が掛かれれば、役になりきること。2つ目は、性的な描写が含まれるので、福田さんのお母さんに噛み砕いて説明してもらいながらも、興味を示してきた場合には、大人の事情だと伝え深く追求しない」とルールを説明した。なお、どこかで台本を読むかもしれないので、直接描写は書かず性的なことは人形に置き換えて、撮影したことで福田さんが傷つかないように細心の注意を払いながら撮られている。義父を演じたBBゴローさんは普段は芸人であり俳優ではない。出会いは古く、当初は原作の平山さんとの呑みの席で少し会う程度だったが、芸人ではなく素の顔を見た時、役者顔しているなと思った。亀井監督は、これまでも芸人をキャスティングしてきた。芸人は自分でネタを書いて構成できる人や悪い人の表情や仕草を盗むのが得意な方を起用している。BBゴローさんの芝居を見たことはなかったが、演技が出来ると思ってオファーした。実際に演技させてみると「本当にDVをやったことがあるのではないかと思わせるほどに上手い。福田さんとは遊びながら和気藹々とした撮影だった」と振り返る。

©YUMEAKI HIRAYAMA/TORU KAMEI

 

本作は完全な自主映画として制作された。かなり重いテーマであり、通常の映画ではやってはいけないことがあり、倫理的にも無理な状況だったためだ。だが、亀井監督は「撮らないといけない。自分でお金を出し、美姫さんが反対して撮れなくなっても自分自身で責任を取る覚悟を持ち、腹を括って撮った」と語る。作品完成後、披露するにあたり、日本でいきなりルール破りをやっても無理だと考え、海外の映画祭に20か所程度出品したが、香港の「The Pineapple Underground Film Festival 2015」のみ審査を通過しオープニング上映を飾った。その後、「カナザワ映画祭2016」でのジャパンプレミア上映が2016年9月17日に行われ、満員立ち見の大盛況となった。なお、カナザワ映画祭主催の小野寺さんからは「海外の映画祭では厳しい、キリスト教圏では御法度。児童虐待、特に性的虐待は扱えない。公共の団体が入っていると上映する土壌がない」と聞き、亀井監督はハッと気づかされた。

 

東京・渋谷のアップリンク上映を始めていくと結果的にロングラン上映となったが、亀井監督自身はどうなるか予測できなかった。亀井監督は、なぜ子供を主人公にしてこんな作品を作るのか、と言われることを覚悟していた。監督自身は、お客さんを不快にして傷つけようと思って作っていない。本作を撮る理由として、監督は「自分自身が育ちも良くなく、家庭環境も良くなかった。その中で、僕は男の子だったからいいけど、女の子だったら、外に見えない性的虐待があるかもしれないと思うと…周りの人が知らなくても存在している虐待について、どの程度の方が関心を寄せるのか気になり、どうなるか賭けてみた」と明かす。「虐待は昔からあり、件数が減っても増えてもいない。ただ現在は表面化しやすいと思っている。加害者である親は隠そうとするので、性的関係となれば共犯のようにさせて表に出ない」と亀井さんは述べる。今作では「虐待をフィクションとして撮ったが、実際にあるものだと感じてほしい。劇中も絵空事に見えないようにリアルであるかのように撮り、フミという人間が何を考え、どうやって生きてきたか表現する為に一年程度脚本を練り、原作の平山夢明さんとやり取りしながら第8稿まで書いた」と想いを込める。結果的に、配信が3か月ありながら1年間も国内のどこかで上映でき、約8,000人が鑑賞し、作品を撮った意味が出てきたと亀井監督は思えた。なお、本作はR18+指定であることから、福田さんからは、今度は自分が観られる作品に出演したいと言われたことを漏らした。

本作の解釈について、亀井監督は「映画は何万通りの受け取り方がある。僕は限りなく小説に近い感覚で捉えたい。本は読んだ人の数だけ想像力が働く。映画は監督の固定観念を放出してしまい、皆の想像力が働かなくなるのは好きではない。時間軸を編集して違和感を持たせ、観客の数だけ結論があっていい」と思っている。今作の場合は「特に男女でも視点が違う。男女のどちらの感覚もある作品にしたかったが、上映当初は男性が圧倒的に多かった。SNSや口コミで徐々に女性客が増えていき、1年経った今では男女半々になった」ことに満足している。本作の主人公は子どもだが「子供とは思っていない。女性は精神年齢が高くなるのが早いので、子どもとして扱うと、子どもからナメられる。大人として接していくと、彼女はビックリするぐらいに大人」だと福田さんを絶賛した。

 

本作のテーマの一つである虐待について、亀井監督は「見て見ぬふりもできるが、あえて観に来ることも選んで欲しいという願いも込めている。でも、映画を観たからといって、児童虐待等に対してアクションを起こしてほしいとは思っていない。頭の片隅に置く程度でいい」と話す。作品の世界はフィクションとして撮られているが「現実の日本では有象無象に転がっている。加害者側は隠そうとする。さらに、皆が存在を否定する程わからなくなっていく。なくすことに懸命になるのでなく、第三者が手を打てない現実を存在すると言ってくれるだけで被害者は声を挙げられる環境になる。ほんの小さなことが実は大事」と思っている。つまり「作中のお父さんやお母さんのように個々人がならないように気をつけることが重要。あの人間にはなりたくないなと思ってもらえるとありがたい」と期待している。

©YUMEAKI HIRAYAMA/TORU KAMEI

 

ここで、お客さんからの質問にも応じていった。平山夢明さんによる原作について聞かれると、亀井監督は「原作は力強さを強調した殺し方をする。これを実像化するとリアリティに欠けてしまう。リアルな犯人像に設定するべく華奢な設定した」と明かす。小説の映像化にあたり「犯人の殺害の意図や経緯がわからないので、実写では設定を組み込む必要がある。見せつけるような連続殺人にはしなかった。事件の詳細が見えなくなるようにした」と加えた。現実の事件との関連性について尋ねられると「意識していない。自分で脚本を書く場合は、そのキャラクターが何をするかずっと考えている。今回は、自分が殺す場合はどうするかを考えながら書いた」と応え、自身が悪人ではないことも弁明した。さらに、他の平山夢明さんの小説から映画化したいものは「たくさんある。平山さんの作品は企画をずっと出していた。企画書を持っていくとOKを貰っても、商業映画としては抑えてほしい箇所がある旨を受ける。抑えておくとおもしろくないと伝え、無理になることが何回も繰り返された」と明かし、今作の映画化の大変さが伝わって来た。現在も企画を出しており「是非やりたい作品が3本程度ある。やるならしっかりとやりたい。伝えることも和らげては意味がない。いずれは成立させるので、期待してください。決まったら頑張りますよぉ!」と自身を奮い立たせた。

最後に、亀井監督は「残りの人生を考えると自分が撮りたいものを撮れるのはあと10年ぐらいなので、思い切り活動したい」と意気込む。今作について作品自体へ疑問を抱く人もいることも認識しているが「映画そのものは、何でもやっていいわけではない。作り手がしっかり考えて作るならば、多少は観る側に痛みを与えてでも伝えなきゃいけないことがある」と思っている。現在の日本映画業界について「ある程度の予備知識を取り込んで、劇場で今作のような作品を観たいという欲求がある中で映画を作れるならば、映画が最後の砦のような気がする。情報が氾濫する世界が故に、逆に自分が伝えたいことやお客さんが観たいものを絞り込みたい」と考えている。「ミニシアターでの上映になってしまうが、そこで闘える人達が出てきてほしい。自分は平山さんの作品やオリジナルで闘いながら、おもしろい世界になっていけばいいな」と願っている。だが、亀井監督は今回のシアターセブンでの再々上映を区切りに映画館での上映を終えようと検討している。現在の福田さんは小学6年生、小学校を卒業するまではDVDソフト化やレンタルは当分は考えていない。ソフト化されると「世の中に流通し100円程度からのレンタル料で出回った時に、美姫ちゃんに与える影響が大きくなる。今は確実に観たい人が観れる状況にしておき、誰もが手に取れる状況に今はしておきたくない」と監督は考える。とはいえ「丸一年上映でき、監督冥利に尽きます。どうなるか分からなかった状況で、2週間程度で終わったり、こんなもの作ったんだと言われりするかと想像していたが、こんな結果が出たことは大変ありがたい」と感謝を述べ、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『無垢の祈り』は、大阪・十三のシアターセブンで9月16日(土)から9月19日(金)まで公開。毎日18時45分~の上映にて、一般1,500円専門・大学生1,200円シニア1,100円中学生・高校生1,000円シアターセブン会員1,000円となっている。なお、アップリンク・クラウドでも現在配信中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する
映画好き。映画ライター講座を受講し
関西の映画情報サイトを中心に執筆