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人やモノに限定せず、去っていくものについての映画を作って頂いた…『短篇集 さりゆくもの』ほたるさんに聞く!

2021年7月9日

(C)2020「短篇集 さりゆくもの」製作委員会

 

人間の“死”や“別れ”をテーマに、5人の監督がそれぞれの物語を紡いだオムニバス映画『短篇集 さりゆくもの』が7月10日(土)より関西の劇場でも公開。今回、ほたるさんにインタビューを行った。

 

映画『短篇集 さりゆくもの』は、映画監督としても活動する女優のほたるさんからの呼びかけで集まった多彩な顔ぶれの監督たちによるオムニバス映画。ほたるさんが自身の出演作である『色道四十八手 たからぶね』の撮影中に急逝した渡辺譲監督の出征した兄のエピソードにインスパイアされ、同作の残りの35ミリフィルムで撮りあげた「いつか忘れさられる」、『恋とボルバキア』の小野さやか監督が2011年に撮影したドキュメンタリー「八十八ヶ所巡礼」、『よみがえりの島』の山内大輔監督が醜い痣のある女を主人公に描いたホラー「ノブ江の痣」、8ミリ映画を撮り続ける映像作家である小口容子監督の「泥酔して死ぬる」、『名前のない女たち うそつき女』のサトウトシキ監督が2019年に急逝した櫻井拓也さん主演で描いた「もっとも小さい光」の5本で構成。

 

『色道四十八手 たからぶね』の残っていた35mmフィルムを用いて短編を作る企画に手を挙げて本作撮ったほたるさん。しかし、短編単体では劇場公開が難しく、上映方法を様々な方に相談。最終的に「同じ尺の作品を集めて上映した方がおもしろい」と意見が一致し、まずは、これまでピンク映画でお仕事させて頂いていた監督の中から、少ない予算の中で制作してもらえる方々に声をかけていった。そして2017年3月、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員をしていた時に「女性監督作品や女性が全面に出てくる映画が少ない」と感じ「もう少し女性がいても良いんじゃないか。テイストや年齢の異なる女性監督作品があればおもしろい」と本作の企画を着想。しかし、賛同して頂ける方がなかなか見つからず、企画自体が止まってしまう。だが、以前からお世話になっている小口容子監督に声をかけてみると賛同してもらった。また、小野さやか監督は、初監督作品『アヒルの子』公開時にトークイベントに登壇していたことがあり「ご無沙汰していたが、偶然にも再会しました。企画の経緯を話したら既に撮っていた作品を本企画のテーマに沿って仕上げて頂いた」と感謝している。

 

監督として携わった「いつか忘れさられる」はサイレント作品。本作のプロデューサーであるぴんくりんくの太田耕耘キさんによる依頼でサイレント映画ありきの企画であり「ミュージシャンの家だけど日常から音がない世界を撮りたかった。だからといって昔のようなノスタルジーにあふれた作品するわけではない。ありふれた日常に音がなくて驚かせたかった」と意図を説く。とはいえ、サイレントで撮るのは難しく「状況の説明は画の中だけ。音があれば簡単ではある。分かりやすくするのは難しい。台詞についても字幕をあまり挿れず。だからといって大げさに演じさせない」と工夫を凝らした。なお、当初は関西での撮影を検討していたが、ロケーションや移動手段等が難しく、最終的には長野での撮影となり「関西でやるつもりだったので、関西の役者さんに相談していった。娘役は実際に高校生だと良いなと思ったが、なかなか見つからなかった。リム・カーワイ監督を通して祷キララさんを提案してもらい、オファーすると賛同してくれた」と明かす。

 

女優としては、山内大輔監督の「ノブ江の痣」とサトウトシキ監督の「もっとも小さい光」に出演し、多種多様な役を演じており「監督の作風に合わせています。『ノブ江の痣』は特殊メイクもあり楽しく演じられました。サトウトシキ監督とはご無沙汰していたが、監督の世界観がありスゥッと現場に入れて良かったですね」と振り返る。監督兼出演の立場は切り替えが大変だが「山内監督とサトウ監督の作品は何度も出演しているので、気心が知れて演じやすかった」と信頼を寄せていた。

 

最終的に、5人の監督が決まり、上映順を決める必要があったが「作品の公開日が先に決まったが、作品自体が完成していないものがあり、無理くりに上映順を決めていった。本作全体の時間が決まらないと不安だった」と告白。ほたるさんは各監督が撮ってきた作品を観ているので「今回の作品にある雰囲気を想像して当てはめていった。本タイトルが付いた時、撮影が終わっていないにも拘わらず、これで出来ると確信できた。なお、『短篇集 さりゆくもの』というタイトルだが、「いつか忘れさられる」を監督達に観てもらった上で作品制作を依頼する際にはタイトルは決まっておらず「去っていくものについての映画を作ってほしい」と要望。「人でもモノでも良い。人に限定せず様々なモノが含まれてるようなニュアンスを残したくて『さりゆくもの』にしました。テーマの解釈を限定せず尺を合わせていった。程よいバランスのあるおもしろい作品になりました」と満足できる作品となった。

 

映画『短篇集 さりゆくもの』は、7月10日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、7月30日(金)より神戸・新長田の神戸映画資料館、8月6日(金)より京都・出町柳の出町座で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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