子どもを返してほしいんです…特別養子縁組で男の子を迎え入れた夫婦の運命が動き出す『朝が来る』がいよいよ劇場公開!
(C)『朝が来る』Film Partners
実の子を産めず、“特別養子縁組“というシステムを利用した夫婦と、我が子を育てることができなかった少女それぞれの葛藤を描き、観る者に“家族の絆“というテーマを問いかける『朝が来る』が、10月23日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『朝が来る』は、不妊治療の末に特別養子縁組という手段を選んだ夫妻と、中学生で妊娠し断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母の姿を描く。栗原清和と佐都子の夫婦は一度は子どもを持つことを諦めるが、特別養子縁組により男の子を迎え入れる。朝斗と名付けられた男の子との幸せな生活がスタートしてから6年後、朝斗の産みの母親「片倉ひかり」を名乗る女性から「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話が突然かかってくる。当時14歳で出産した子を、清和と佐都子のもとへ養子に出すことになったひかりは、生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心やさしい少女だった。しかし、訪ねて来たその若い女からは、6年前のひかりの面影をまったく感じることができず…
本作は、直木賞や本屋大賞を受賞した作家の辻村深月さんによるヒューマンミステリー小説で、テレビドラマ化もされた「朝が来る」を、『あん』『光』の河瀬直美監督のメガホンで映画化。栗原佐都子役を永作博美さん、栗原清和役を井浦新さん、片倉ひかり役を蒔田彩珠さん、栗原夫婦とひかりを引き合わせる浅見静恵役を浅田美代子さんがそれぞれ演じる。新型コロナウイルスの影響で通常開催が見送られた、2020年・第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション「カンヌレーベル」に選出された。
(C)『朝が来る』Film Partners
映画『朝が来る』は、10月23日(金)より全国の劇場で公開。
映像のセンスが突出しているのが印象的であり、特に光の使い方は目を見張る。音と映像の時間を意図的にずらす演出も斬新で、絶妙に理解の及ぶ範囲で施されていた。前衛的なチャレンジであっても作品としての質を損なわず、より上質な作品へと押し上げることに成功している。また、部分的にドキュメンタリー形式を混ぜ込んでおり、若手俳優達の演技をより自然に映すことになり、途中からはフィクションであることを忘れる程のめり込んでしまう。
作品全体を通して聴こえてくる波の音は、海こそが命の源であるかのように我々に生命力を感じさせる。我が子に想いを馳せる時、様々な感情や事情があれど、決して変わることのない愛を、等しく清らかな波の音が証明してくれた。物語においても、片方からの目線で一方的に語るのではなく、子供を養子に出す親、子供を養子として迎え入れる親、双方の視点で丁寧に紡がれていたのが好印象。映像、音響、編集、物語、テーマの全てが見事に融合した”奇跡”の作品である。
fromねむひら
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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