シリア人移民が超高層ビル建設…戦争と再建を捉えたドキュメンタリー『セメントの記憶』がいよいよ関西の劇場で公開!
(C)2017 Bidayyat for Audiovisual Arts, BASIS BERLIN Filmproduktion
中東、レバノンの首都ベイルートで暮らす、シリア難民の労働者をクローズアップしたドキュメンタリー『セメントの記憶』が、4月13日(土)より関西の劇場でも公開される。
映画『セメントの記憶』は、長い内戦を乗り越え、バブル経済真っただ中にあるベイルートの超高層ビルの建設現場を捉えたドキュメンタリー。地中海を眺望する超高層ビルの建設現場で働くシリア人移民・難民労働者たち。ある男が、出稼ぎ労働者だった父がベイルートから持ち帰った1枚の絵にまつわる記憶を回想し、父への思いを巡らせる。ベイルートへ亡命した元シリア兵のジアード・クルスーム監督が、移民労働者の姿と建設ラッシュに沸くベイルートの美しい街並み、そして戦争で破壊された労働者の祖国の映像を交互に映し出し、戦争と建設のイメージ、破壊と創造の概念、喪失と悲しみの記憶を詩情豊かに描くことで、人間の愚かさや終わらない戦争の悲しみを訴える…
本作は、これまでに60カ国、100以上の映画祭で上映され、2017年のアデレード国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を獲得している。祖国を亡命した元シリア政府軍の兵士ジアード・クルスームが監督を務めた。
映画『セメントの記憶』は、4月13日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また、4月20日(土)より、京都・烏丸の京都シネマでも公開予定。
セリフが少ない本作は、セリフ量に反して作品から得られる情報量はかなり多い。
この映画で最も印象深いのはベイルートで働くシリア人移民労働者の表情。様々な表情ではなく、皆が揃って無表情に見える。ドラマティックに描くなら、フィクション等では苦悩を思い浮かべるような表情をしているだろう。だが、彼らは無表情だ。ここにドキュメンタリーの真髄を感じた。人が苦痛を感じ悲劇を経験した先に行き着くのは、無で間違い無い。決して見せようとしていない。全てを奪われたから当然だ。その無表情から戦争の罪深さを再認識させられた。
タイトルの『セメントの記憶』が持つ意味を理解した時、より深い悲しみを感じる。同時に、戦争に対する強い憤りを覚えた。鑑賞し終えた今でも建設現場のあの重厚な音は頭にこびりついている。そして、その音に付随して表裏一体と言わんばかりに戦争の音も頭から離れない。無意味な破壊と建設をこの世から無くしたいと強く願う。
fromねむひら
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!