日本の“地下世界”にカメラを向けた『Underground アンダーグラウンド』がいよいよ関西の劇場でも公開!

©2024 trixta
地下の暗闇から怪物のように現れたシャドウ=“影”が、女性の姿を借りて時代や場所を超えて旅をしていく様子を描く『Underground アンダーグラウンド』が3月29日(土)より関西の劇場でも公開される。
地下の暗闇から現れた「シャドウ(影)」はある女の姿を借り、時代も場所も超えた旅に出る。シャドウは地下鉄が走る音を聞き、戦争で多くの人々が命を落としたほら穴の中で死者の声に耳を澄ませる。山奥の寺では、洞窟へと続く壁面に彫られた仏のために読経する僧侶のかたわらに身を寄せる。かつてそこで起きたことをトレースするようになったシャドウは、ふと訪れた映画館で目にした映像に導かれ、湖の底に沈んだ街へと向かう。
本作は、『鉱 ARAGANE』『セノーテ』など異形の地下世界を題材に映画制作を続けてきた小田香監督が、日本の地下世界にカメラを向けた作品。小田監督が3年かけて日本各地で取材を行い、その土地に宿る歴史と記憶、土地の人々の声を反映させて描きだす。米津玄師「Lemon」MVでのダンスや映画「Shari」の監督として知られる映画作家・ダンサーの吉開菜央さんが、女の姿を借りたシャドウを演じた。
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映画『Underground アンダーグラウンド』は、関西では、3月29日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、4月25日(金)より京都・出町柳の出町座で公開。なお、シネ・ヌーヴォと出町座では本作の公開を記念し、「小田香特集2025」が開催される。また、神戸・元町の元町映画館でも5月以降に公開。

世界にあるアンダーグラウンドを題材にしてきた小田香監督がいよいよ本格的に日本国内の地下にある世界を映し出した本作。試写で観た際には、異様なる音響によってアンダーグラウンドに惹き込まれてしまった。最初は、日本の何処に連れていかれているのか分からなかったが、次第に地下鉄の空間や洞穴にある人知れず世界であることに気づかされていく。その世界の中で映し出されるのは、シャドウ(影)。本作が純然たるドキュメンタリー映画であるならば、その実態は小田監督であるかもしれない。だが、本作は実験映画的な作品であり、吉開菜央さんがシャドウの実体を演じており、非現実的な存在として描かれていく。気づけば、オーバーグラウンドの世界にも導かれていくが、アンダーグラウンドのような世界観も同時に表現されていた。さらには、場所だけでなく時代をも超越したような世界観が築かれており、異次元空間に向かって旅をしているような気分にもなってしまう。だが、あくまでも本作が描くのは、アンダーグラウンドの世界だ。地上と同じ時間が過ぎていながらも、独自の時間経過を経た世界があることに気づかされる。日本の何処かにある日常でありながら非日常の世界を体感するために、いざ劇場に飛び込んでみよう。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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