夢とも現実ともつかない奇異な世界で互いの感情と記憶が交ざり合っていく男女の姿を描いた青春幻想譚『夢の中』がいよいよ劇場公開!
©「夢の中」製作委員会
血まみれの男性を部屋で匿う女性が、共に時間を過ごすうちに互いの記憶と感情が交じり合っていく様を幻想的に描く『夢の中』が5月10日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『夢の中』は、現実と夢が交じり合うなかで展開する幻想的な物語。血まみれで息を切らし「かくまってほしい」という男ショウと出会ったタエコ。生気がなくうつろな瞳をしたタエコは、そんなショウに「私の最期をきれいに撮ってほしい」と頼む。ショウは何から逃げてきたのか、タエコの頼みは本当に彼女が望んでいることなのか。お互いにわからないまま、2人は時間を共有するうちに、それぞれの感情と記憶が入り混じった奇妙な世界に引き込まれていく。
本作は、中学生の性の違和感と自己理解の揺らぎを描いた短編「蝸牛」で注目された新鋭の都楳勝監督が手がけた作品。大手芸能事務所のレプロエンタテインメントが主催する映画製作プロジェクト「感動シネマアワード」でグランプリを受賞した企画を映画化した。主演は、テレビドラマ「隣の男はよく食べる」や映画『輝け星くず』など出演作が続く山崎果倫さんと、ドラマや映画を中心に活躍しながら『君に幸あれよ』では映画監督にも挑戦した櫻井圭佑さん。玉置玲央さん、山谷花純さん、アベラヒデノブさん、森崎みのりさんらが共演。
©「夢の中」製作委員会
映画『夢の中』は、5月10日(金)より全国の劇場で公開。関西では、京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。
精神分析学の祖として知られるジークムント・フロイトは「夢とは現実の投影であり、現実は夢の投影である。」という言葉を残した。本作では、タイトルからもわかるように登場人物たちの”夢の中”を描くことで、映画の外部に存在している”投影された現実”に想像を巡らせる作品だ。
ショウは映画の冒頭、何かから逃避するように頬を血で濡らし息を切らして登場する。物語が進んでいくうちに彼は現実を直視することができず、夢の中に逃避してきた人物であることが明らかになっていく。そんな彼を謎の女性タエコが匿うが、彼女もどこか地に足がついていないような、あるいは、彼女が飼育している爬虫類のように体温を感じられない印象を受ける。彼女自身も「現実を生きること」から逃避して夢の中に篭らざるを得ない存在であろう。
現実世界で受け止め切れない事象が起こり、死んだように長時間眠って過ごした経験をしたことがある。そのため、主人公達の心情には共感せざるを得ない。そして、逃げた先の夢の中で、再びフラッシュバックのように逃避したはずの現実が投影され、結局は直視せざるをえなくなる経験もある。本作の幻想描写にはリアリズムを感じてしまった。
ラストでは、ショウとタエコが現実を受け止めて覚醒する。本作のみならず、そもそも映画は、覚醒した状態でスクリーンに投影された夢を観るようなものだ。ショウやタエコらと同じように、我々は現実の困難さと日々戦いながら、胡蝶の夢を観るために映画館に足を運ぶのだろう。
fromオーイシ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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