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幼い頃にアフガニスタンからデンマークへ難民として渡った実在の青年を主人公にしたアニメーションによるドキュメンタリー『FLEE フリー』がいよいよ劇場公開!

2022年6月4日

(C)Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

 

ある亡命者の過酷な半生を紐解いたドキュメンタリー『FLEE フリー』が6月10日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『FLEE フリー』は、20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年アミンの姿をとらえたドキュメンタリー。父がタリバンに連行されたまま戻ることがなかったアミンは、残された家族とともに生まれ育ったアフガニスタンから脱出した。やがて家族とも離れ離れとなったアミンは、数年後たった1人でデンマークへと亡命する。30代半ばとなり、研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていたアミンだったが、彼には恋人にも話していない20年以上も心に抱え続けていた秘密があった。親友である映画監督の前で、アミンは自身の過酷な半生を静かに語り始める。

 

本作では、主人公をはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、アカデミー賞で史上初めて国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門ノミネートを果たした。また、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞している。監督は自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセンが務めた。

 

(C)Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

 

映画『FLEE フリー』は、6月10日(金)より全国の劇場で公開。関西では、6月10日(金)より大阪・梅田の梅田ブルク7や難波のなんばパークスシネマ、京都・七条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。

荒々しい線がとてつもなく恐ろしい出来事の輪郭を捉えていくような抽象的なアニメーションがスクリーンに広がる。まるで何か巨大なトラウマや心の傷に触れるかのような不穏さが付きまとう。男は誰にも話したことがない過去を話し始める。故郷のこと、家族のこと、自分がゲイであること、そして、呪いの様に植え付けられたトラウマのことを…

 

今作は、ドキュメンタリー映画でありながらアニメーションで製作されている異色の作品だ。今作の主人公であるアミンのプライバシーを守り、安心して自分の過去と向き合ってもらうためにアニメーションで製作されたが、アニメーションが持つ力強い訴求力や普遍性は観客により切実なものとして伝わるようになっている。

 

本作の監督であるヨナス・ポヘール・ラスムセンには幼馴染のアミンがいた。アミンはたった一人でアフガニスタンから亡命し、今ではキャリアも順調でプライベートでもパートナーとの充実した日々を送っている。しかし、彼には、友人や婚約者にすら話していない過去があった。政府当局に連行された父は行方不明になり、激しくなる紛争から逃れるためにアミンと家族達は故郷を離れることになる。しかし、難民となった彼等に待ち受ける過酷な現実は、アミンの人生に呪いのように刻まれていた。腐敗しきったロシア警察の振る舞いや密入国業者の劣悪な手法等、見ているだけで辛くなる。アミンは、不条理な仕打ちや周囲の無関心な視線に耐え続け、秘密を守り続けることで自分が守られていると感じるようになっていく。そうやって、彼は過去を押し殺して生きてきたのだ、と気づかされ、とても悲しかった。

 

アミンには、心の拠り所となる居場所がずっとなかった。故郷であるアフガニスタンから逃れ、家族にはゲイであることを隠し続け、近しい人にすら過去を打ち明けられず。なぜなら、そうやって生きていくしかなかったからだ。人を信じられるようになるのは、並大抵のことではできない。あんな過酷な経験をしていたら尚更だ。彼が安らぎを感じられる居場所を見つけていく瞬間も描かれる。初めて家族にゲイを打ち明けた日の出来事には思わず泣いてしまったし、婚約者との関係性にも変化が訪れ感動した。

 

そして、過酷な人生の中で時折彩られるポップミュージックも凄く印象的で忘れられない。アミンの一番古い記憶に刻まれているのがa-haの「Take on Me」だが、まるでアミンの人生の願いを暗示しているようにも聞こえる。また彼が新天地として目指しているスウェーデンのアーティストであるAce of Baseの「Wheel of Fortune」やRoxetteの「Joyride」が、とても印象的な場面で流れるので是非注目してほしい。

fromマリオン

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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