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政府を告発した女性の実話“キャサリン・ガン事件”を描く『オフィシャル・シークレット』がいよいよ劇場公開!

2020年8月25日

(C)2018 OFFICIAL SECRETS HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

米国家安全保障局、通称“NSA“がイギリス情報機関に送ったメール内容をマスコミにリークすることにより、アメリカの不正行為を世に知らしめた女性の姿と信念を描く『オフィシャル・シークレット』が、8月28日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『オフィシャル・シークレット』は、イラク戦争開戦前夜に英米政府を揺るがせた告発事件を映画化したポリティカルサスペンス。2003年、イギリスの諜報機関GCHQで働くキャサリン・ガンは、アメリカの諜報機関NSAから驚きのメールを受け取る。イラクを攻撃するための違法な工作活動を要請するその内容に強い憤りを感じた彼女は、マスコミへのリークを決意。2週間後、オブザーバー紙の記者マーティン・ブライトにより、メールの内容が記事化される。キャサリンは自分がリークしたことを名乗り出るが、告発も空しくイラク侵攻は開始され、彼女は起訴されてしまう。キャサリンを救うため、人権派弁護士ベン・エマーソンらが立ち上がるが…

 

本作では、主演をキーラ・ナイトレイが務め、弁護士エマーソン役に名優レイフ・ファインズ、記者ブライト役にテレビシリーズ「ドクター・フー」のマット・スミスが演じた。『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』のギャビン・フッドが監督を担う。

 

(C)2018 OFFICIAL SECRETS HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

映画『オフィシャル・シークレット』は、8月28日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSをはじめ全国の劇場で公開。

 

本作は、キャサリン・ガン事件を題材にした映画であり、イギリス国内で多数の反対を押し切って走り出したイラク戦争の話でもある。戦争自体を描かず、渦中に至るまでの状況をイギリス情報機関の「内部告発」という側面から切り取った。諜報部員、新聞記者、弁護士それぞれの立場で「正義」と「戦争」について恋人や同胞と議論し、鑑賞する側へも疑問を投げかけるかのような展開に目が離せない。あなたがキャサリンだったらどうするか、と問われているような息苦しさがある。他の機密告発に関係する映画とは一線を画すアプローチによって、じわじわと追い詰められるような、彼女と同じ体験をしているかのような怖さが新鮮であり、エンドロールが流れる瞬間まで息を詰めて観てしまうほどの迫力があった。

 

オブザーバー紙の記者マーティンが備える行動力は『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)の敏腕記者ベンに引けを取らない。マッド・スミスのニヒルな表情と少し見下した雰囲気がキャラクターの魅力をより引き出している。新聞社内でどれだけの人間が情報について議論をしているのか。情報ひとつで世論が左右される責任の重さ等、記者達が絶やさない不断の努力からは込み上げてくるものがある。

 

英国が製作した映画であり、英国らしいユーモアも忘れてはいない。英語は英語でも、国によって使われる言葉のスペリングには特色があり、今回は特にアメリカ英語・イギリス英語について注目したい。語句の使い回し、スペリングの違いで書いた人の国籍もある程度予想出来てしまうのが英語の興味深さ。「色」はアメリカ英語だと”color”だがイギリス英語だと”colour”となり、アメリカ英語の”realize”は イギリス英語だと”realise”になる。”正義”は見る立ち位置を変えれば湾曲できてしまい、不当に操作される危険性も示唆していく。だからこそ、メディアは報道の自由が存在し、報道は慎重になされるべきである、と改めて感じさせられた。

from君山

 

正当性がまったくないといっても過言ではないイラク戦争の開始を阻止しようと奮闘したキャサリン・ガン氏の勇気ある物語。本作は、内助の功を尽くす妻の話ではない。妻自身が仕事に誇りを持って働き、自らの危険を顧みず政府に立ち向かう姿を描く主体性の強い映画だ。鑑賞中は爽快感すらあった。職務上の義務に従うか、己の正義を貫くか。観ている我々の倫理観すら問うような選択の連続は、『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』のギャヴィン・フッド監督らしい演出だ。

 

日本を含め、当時アメリカを支持した全人類が受け止めなければいけない内容であり、漠然と反戦意識を持って「戦争はダメ」というのではなく、より歴史の中身に目を向けて、我々が今後直面するであろう問題への危機対応能力を日々深めなければならない。人々の意識が変われば、避けられる悲劇は存在すると信じて。

fromねむひら

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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