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“12歳女子”がSNSで友達募集をしてみたら…児童への性的搾取の実態収めたドキュメンタリー『SNS-少女たちの10日間-』がいよいよ劇場公開!

2021年4月14日

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

 

3名の成人女性が“12歳の少女”という設定で、SNSで友達募集する様子を10日間に渡り捉えたドキュメンタリー『SNS-少女たちの10日間-』が4月23日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『SNS-少女たちの10日間-』は、成人女性が未成年という設定のもとSNSへ登録すると、どういったことが起こるかを検証したドキュメンタリー。巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋に、幼い顔立ちの18歳以上の3人の女優が集められた。彼女たちは23歳の女子という設定のもと、SNSで友達募集をする。その結果、彼女たちにコンタクトをしてきたのは、2458人もの成人男性だった。精神科医、性科学者、弁護士や警備員など専門家による万全のケアのもと、撮影は10日間にわたり続けられた。撮影されているとは気付かず、何も知らずに卑劣な誘いを仕掛ける男たち。彼らの未成年に対する容赦ない欲望の行動は徐々にエスカレートしていく。監督は、チェコで活躍するドキュメンタリー作家のビート・クルサークとバーラ・ハルポバー。

 

本作の撮影時のルールは7つ。自分からは連絡しない、12歳であることをはっきり告げる、誘惑や挑発はしない、露骨な性的指示は断る、何度も頼まれたときのみ裸の写真を送る、こちらから会う約束を持ちかけない、撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談するといったものである。児童への性的搾取の実態を収めた映像として、チェコ警察から刑事手続きのための映像が要求されるなど、実際の犯罪の証拠として警察をも動かした。

 

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

 

映画『SNS-少女たちの10日間-』は、4月16日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・元町の元町映画館(5月15日(土)から)をはじめ全国の劇場で公開。

 

本作のトレーラーを観た時、作中で少女たちに何が起こるのか、そして、現実で何が起こっているのか、容易に想像できた。日本でもSNSを発端にした児童の誘拐事件がニュースになったことは記憶に新しい。おそらく誰もが本作のあぶり出す問題について、頭の片隅では認知しているだろう。しかし、事実を知っていることと、リアルを目の当たりにすることは全く違う。そこに本作のドキュメンタリーとしての意義がある。

 

「12歳・女子」という設定でSNSに登録し、友達を募集した3名の女優。彼女達にコンタクトしてきた成人男性は、10日間で2458人。この衝撃的な数字を見るだけでも目眩がするが、本編はさらに深刻極まりない。男性たちの顔はボカされているものの、目つきや声色、口調の卑しさには鳥肌がたつ程の嫌悪と恐怖を覚える。彼らの送ってくるメッセージや会話の内容は、成人女性に対するものであっても到底受け入れがたいほど酷い。だが「12歳の」少女たちに躊躇なく浴びせてくる。そんな大人が次から次へと出てくるので、観ているだけでトラウマになりそうだ。一部の特殊な人達なのだと思いたいが、むしろ氷山の一角だろう。終始、反吐が出そうな本作だが、鑑賞中、一度だけ涙してしまう場面があった。それは現実との境がない本作だからこそ感じられた希望であり、鑑賞者に大人としての責任を問いかけるシーンだったようにも感じる。

 

本国チェコでは上映後、刑事手続きのため警察から映像を要求されたというが、犯罪を取り締まる直接的なきっかけになったことが本作におけるせめてもの救いだろうか。今も世界中で起こり続けているこの悪夢のような現実を、直視してほしい。

fromマエダミアン

 

ただ友達が欲しい、という少女たちの純粋な思いを、踏み躙る大人達の悪行に、終始、驚きを隠せなかった。本作を撮影しようとした監督をはじめとするスタッフ達も勿論すごいが、なによりも、12歳の少女役として名乗りを上げた女優達が凄い。既に被害経験のある女優達が、自らこうした役を買って出る、というのは耐え難いほどの苦痛や、思い出しなくない過去とも向き合うことになる。本作を世に放つことで「世界が少しでもプラスになるのであれば…」「問題提起がされるなら」という、彼女達の強い意志を表情から感じとれる場面が何度もあった。

 

本作は、舞台がチェコのように感じてしまうかもしれないが、インターネットが舞台である。決して、チェコだけで終わる話ではなく、日本にも何年も前からある根深い問題であり、子を持つ親、子供を守る我々大人たちの決して目を背けてはいけない深刻な問題であることに変わりない。性行為がなくても性的虐待になるという自覚を持たない人間の、卑怯なやり口や脅迫の手口は驚くべきものばかりだ。画面の向こうに人が居るということ、ましてや12歳の少女が本当に存在していることを、あまりにも考えていない浅はかな言動の数々に、同じ人間として思わず頭を抱えてしまう。

 

子供達は被害に遭っても大半は親に相談することができない。今あなた達の大切な人が知らず知らずのうちに名前も住所も知らない男達に性的に消費されているかもしれない、と思うと、本作が投げかける問題から目を背けることはできるだろうか。まず、我々に必要なのは、本作を鑑賞し、問題自体に目を向けることなのかもしれない。

fromねむひら

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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