「淡路島短編映画祭2017」洲本オリオンで開催!淡路島の魅力を発信!
兵庫県・淡路島の洲本オリオンで5月14日(日)に「淡路島短編映画祭2017」が開催された。
「淡路島短編映画祭」は、映画で淡路島を盛り上げる為に2014年から始まった。「撮ろうよ、見ようよ」を意味する淡路島の方言に由来する「トランカ ミランカ」(「撮らんか、観らんか」)を愛称とし、淡路島ゆかりの映像が多く集まった。今回、過去の同映画祭出品作を含む25作品を上映。新作は15本、過去上映作品のリバイバル上映5作品、南あわじ市で毎年開かれる「アジア国際子ども映画祭 関西・四国ブロック大会」に昨年出品された優秀作5本が招待上映された。フリーの映画宣伝プロデューサー松井寛子さんと、「うみぞら映画祭」の発起人であり映画『あったまら銭湯』監督の大継康高さんによる作品の寸評も実施された。
映画祭の開会式では、各部門の内容が紹介された。今回出品された作品から厳選された15作品は5部門に分けられた。淡路島の観光地や島暮らしの良さをアピールする「淡路島プロモーション部門」、島の伝統産業や地域づくりに焦点を集めた「島に育む部門」、ストーリー性のある作品を集めた「劇映画部門」、出来事のありのままを切り取る「ドキュメンタリー部門」によって構成されている。
「淡路島プロモーション部門」7作品の上映後、本映画祭の後援をしている読売新聞洲本支局の増田さんが映画祭開催の経緯について「前回(2015年)の映画祭開催以降、実はもう1回やりたいと実行委員会の方々が言っていたので、ぜひやりましょうということで始まった今回の開催」と説明。「人を集めるところから始めたが、最初は3人だった。バックアップする人はたくさんいるのが淡路島の人のいいところ。おもしろいことをやるなら、人がいっぱい集まって来て勝手にモノができていく」と淡路島の人々による企画力をアピールした。
その後、「淡路島プロモーション部門」7作品を上映し大継さんがそれぞれコメントした。進学でほとんどが島を出る高校生が「故郷の魅力は何?」をテーマに作った『兵庫のHawaii』について「プロ並みにナレーションの声が良く、僕のCMに使いたい。30秒の作品で監督が見せたいものをもっと観たくなった」とコメント。洲本商工会議所青年部設立35周年記念ソングPV『Takarajima』を「オリジナルソングのクオリティが高い。全員が恥ずかしがらず楽しんでいるのが伝わってきて良い」と評価。ドローンを活用した空撮映像『淡路島を訪ねて』には「普段見れない空から見える、僕らでも知らない景色が良い。海の色など空撮でしかわからない部分があってもっと空撮を観たくなった」と寄せた。県高校総体に向けた柳学園サッカー部のモチベーションビデオ『柳学園サッカー部『恩』2017』を「個人的には好き。写真と映像で構成するのは難しいことだが、構成がしっかりしている。ストーリーがあって、苦労や様々なことがありながらも、サッカー部の多様な活動が見れて、サッカー部に入りたくなった」とコメント。由良・成るが島での映像を中心にしたアロハな『Sprit Iskand for OHANA』について「海外の団体じゃないかと思うほど映像と音楽とのマッチが良かった」と評価。淡路島にUターンした1年目をまとめた『Uターン3年目の島暮らし』に対し「淡路島でこんなことができるんだと気づかせてもらえる。全国や世界に向けて発信すると、遠くから淡路島に住みたいと思ってもらえる」と応援。最後に、レシピ動画集『シマクラレシピ』は「心地いいし、作ってみたいなと思わせてくれる映像」だと評価した。
過去出品作より、柿原朋哉監督の『ぶ』『MURPHY』を上映。松井さんは「どちらもおもしろかった。どうてしこういう作品を作りたいと思ったのか監督に聞きたい」とコメントを送った。
午後を迎えて、まずは「島に育む部門」から3作品を上映。島の風土で育った椿を使い、一枚一枚心を込めて漉きあげる「淡路津名紙」の製作の様子を収めた『淡路津名紙のできるまで』について、松井さんは「和紙づくりは何度か見たことがあるが、津名であったのは初めて知った」と驚いた。大継さんは「津名で和紙づくりをやっているのは知らなかった。工程を見せる場合、音楽に乗せて見せてしまいがちだが、音楽無しでこれだけ見せられるのは凄い。実際に叩く音や水の音が効果的で、意図してやっているとしたら凄い。分かりやすくて、音楽に逃げずに見せる手法がすごい」と勉強になったようだ。13年前の台風で壊滅的な被害を受けた五斗長(ごっさ)集落で、住民が一つになって進めた地域づくりを紹介した『美しい郷五斗長』を鑑賞し、松井さんは五斗長という地区を初めて知った。珍しい名前の由来を知りたかった」という意見が。大継さんは「五斗長という地域は空撮で撮りがいがある。空撮で観て回って、実際に歩いてみたい」と思った。淡路島の食材と職人が集まる島の部活「淡路島燻製部」を紹介する『淡路島燻製部』について、松井さんは「途中で展開が早いのが監督の意図かも知れないが
もっと観たかった」とコメント。大継さんは「ただだた燻製部に入りたいと思わせてくれる映像だった。燻製部に入ったらアレを食べられるのか。何よりも料理の映像が美味しそうだった」と述べた。
ここで、過去出品作より、名和憲進監督の『はじめ Hajime』を上映。松井さんは「お母さんが認知症で、言葉にできないぐらいうまさがよかった」と評価。大継さんは「コメントできないぐらい素晴らしい。淡路島出身でこんな作品が撮れる先輩がいることを素晴らしい」と思い、一緒にお仕事ができれば、と伝えた。また、高岡ヒロオ監督の『Once More』を上映。松井さんは「見応えがあり、監督のNWでの活動を知りたい」と興味津々。
「劇映画部門」でも3作品を上映。まずは正井啓介監督作品『Make It Rain』。アジアのどこかの国で流行る疫病。子供と妊婦優先の避難所へいくために、車を持っている友達に「妊婦である」と嘘をつき迎えに来てもらうが…。上映後には、正井監督へ松井さんがインタビューを行った。作品の発想について松井さんが訊ねると、正井監督は「全編英語の作品が撮りたかった。関西で活動している分、標準語で脚本を作ってもピンと来ない。ならば、あえて関西弁でなく英語にしてみた」と応える。これを受け、松井さんは、作中で、字幕を関西弁にした登場人物について聞くと、正井監督は「アメリカ南部テキサスの英語を日本語にするなら関西弁が合っている」と説明。大継さんは「英語という手法はあまりないので、新しいやり方でドンドン撮っていってほしい」と期待を寄せた。最後に正井監督より、映画祭に対し「淡路島全体で映画に触れる機会を作っていけば、映画撮影島みたいなものができるんじゃないか。頑張りましょう」と応援。次に、洲本の夜の街を、私的で極ピンポイント視線で捉えたショートショートな久保拓也監督作品『はしご酒ではしごを探す』。松井さんは、酔っぱらって撮影したのか、と大笑いしながらも「様々なところがあるんですね。タイトルは最後に付けたんですか」と訊ねると、久保監督は「洲本は昼も夜も楽しいところがあります。ハシゴを撮ろうと思った時に、お酒が好きなので、酔っぱらって撮ってみました」とカミングアウト。大継さんは「映像を撮っている久保監督を想像しながら楽しむ作品。酔っ払いながらハシゴを撮っている姿を想像するとおもしろい。それ全体がアート空間」と評した。久保監督より映画祭に対し「今はスマホでも映像が手軽に撮れるので、短編映画祭に出品してもらえば」と今後に期待。最後に、今は3市の淡路島が1市になった時、初代市長になったと仮定し何がしたいのかを酔いにまかせた、淡路島レディオの植田直樹監督作品『淡路島サミット』。松井さんは「ピーピーと音声を入れているとこも聞きたかったけど、なぜ?」と興味津々。植田監督は
「酔ってて覚えていない」と笑いながら返した。作品にも出演した大継さんは「テーマが良い。もし淡路島市ができたらというテーマで呑みながら話した映像をもっと見てみたい」と伝えた。植田監督からは映画祭に「来年も出品します」と宣言。
最後の部門は「ドキュメンタリー部門」、2作品を上映。南あわじ市津井の瓦を使った音楽プロジェクト「瓦の音楽」を追いかけた上田謙太郎監督作品『瓦の音楽 in Indonesia』。松井さんは「瓦でこんなことができ、インドネシアまで行ったことをもっと膨らませれば、長編作品として劇場公開できる程良かった」とコメント。なお、本映画祭の対象は、原則「20分以内」の作品となっている。大継さんは「様々な発見があった。映画のBGMに合う印象的な音楽であり、新しい淡路島の伝統芸能にしてもいいんじゃないか。淡路島の瓦がどうやって作られているかも観たい」と評価。南あわじ市福良の春祭りの一日を描き、旧友との再会、亡き友や故郷への想いを込め、人生の折り返し点を迎えた男の心意気をつづった今井伊織監督作品『我ら島の祭人2017~福良男児の心意気』。松井さんは「最高。男のロマンと友情があり、最後は現在の祭りとして音楽が効いていた」とコメント。大継さんは「映画のラスト15分なのかと思って、壮大な映画のラストを観た。決意表明が映画の最初から1時間分をまとめて見せてもらった。長尺で観たい作品」だと寄せた。これを受け、今井監督は「福良の同級生が築き上げてきたものを撮りこぼさないようにするのが僕の仕事。現在大阪在住でこれまで携われなかったので、この機会を与えてもらって感謝している」と友らへ伝えた。
閉会式を迎え、今回の映画祭にゲスト登壇した松井さんは「淡路島は広く、様々な魅力があるところ。神戸の方にとっては身近だが、大阪の人にまでは魅力が行き渡っていない。淡路島には様々な文化や魅力的な場所があり、うみぞら映画祭や短編映画祭が開催されていることを全国に向けて発信していってほしい」とエールを送った。淡路島出身で18年間を過ごした大継さんは「大学進学と共に淡路島を出てしまったが、映画祭があることで頻繁に帰るようになった。それでも知らない淡路島がたくさんある。淡路島には藝術が多い。今までカメラで撮ったことがない人の映像でも、映像として素晴らしく素敵な内容に出来上がる」と今後の短編映画祭に期待を寄せた。
映画祭は各部門別に観客賞を贈呈。淡路島プロモーション部門から『Takarajima』、島に育む部門から『淡路島燻製部』、劇映画部門から『淡路島サミット』、ドキュメンタリー部門から『我ら島の祭り人2017 ~福良男児の心意気』がそれぞれ選ばれた。また、松井寛子さんと大継康高さんによるゲスト選賞として『Make It Rain』が選ばれた。また、これらの受賞作品より厳選し『Takarajima』、『淡路島燻製部』、『我ら島の祭人2017~福良男児の心意気』が「うみぞら映画祭2017」開催時に5月20日(土)・5月21日(日)10時~11時に洲本オリオンで招待上映される。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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