認知症となったアル・カポネの晩年を描く『カポネ』がいよいよ劇場公開!
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かつてシカゴを牛耳り、絶大な権力を握っていた伝説のギャング、アル・カポネの最晩年を描いた伝記映画『カポネ』が2月26日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『カポネ』は、“暗黒街の顔役”と恐れられた伝説のギャングであるアル・カポネの知られざる最晩年を新たな視点で描き出す伝記映画。1940年代。長い服役生活を終えたカポネは、フロリダの大邸宅で家族や友人に囲まれながらひっそりと暮らしていた。かつてのカリスマ性はすっかり失われ、梅毒の影響による認知症が彼をむしばんでいる。一方、FBIのクロフォード捜査官はカポネが仮病を装っていると疑い、1000万ドルとも言われる隠し財産の所在を探るべく執拗な監視を続けていた。カポネの病状は悪化の一途をたどり、現実と悪夢の狭間で奇行を繰り返すようになっていく。
本作は、『クロニクル』のジョシュ・トランクが自らのアイデアを基に脚本・監督を務め、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディがカポネを演じる。共演に『ハウス・ジャック・ビルト』のマット・ディロン、『ダンケルク』のジャック・ロウデン、『ツイン・ピークス』のカイル・マクラクラン。
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映画『カポネ』は、2月26日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と難波のなんばパークスシネマ、京都・桂川のイオンシネマ京都桂川、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸などをはじめ全国の劇場で公開。
アル・カポネといえば禁酒法時代に名を馳せた最も有名なギャングの1人だ。映画ファン的には『アンタッチャブル』等が思い浮かぶ人も多い。アル・カポネの晩年にフォーカスを当てたのが本作。しかし、今作に圧倒的なカリスマ性を持った暗黒街の顔はない。病魔に蝕まれ、自分の世話すらも出来ず、過去と現実の区別も付かなくなってしまった老人だ。豪邸に残された彫刻は売りに出され、奇行に走るアル・カポネに家族もFBIも困惑するばかり。悪の栄光は見る影もない。
ボロボロな姿だけでも物悲しいが、何より切ないのはアル・カポネ自身が抱える孤独や秘密、後悔、葛藤が薄れゆく意識の中で無情にも消えていくことだ。ボケてしまったアル・カポネは『アイリッシュマン』のフランク・シーランのように明瞭に語られず、なんとか思い出しても過去の幻影を彷徨うことしか出来ない。誰もカポネの内なる感情を推し量れず、思い起こされた記憶と想いは消え失せていく。富や家族、記憶など自分という存在がどんどん消えていく苦しみ、それを止められないもどかしさはとても悲しく突き刺さる。アル・カポネの言葉にならない悲哀を体現するトム・ハーディの渾身の演技も見事だった。
変わり果ててしまった者達の悲哀はジョシュ・トランクの一貫した作家性でもある。思春期のほろ苦い失敗と超能力で身を滅ぼしてしまう高校生達を描いた『クロニクル』、不慮の事故により不本意な超能力を獲得してしまった科学者達の葛藤を描いた『ファンタスティック・フォー』。そして、記憶と自我の消失を止められずに孤独になっていくアル・カポネを描いた今作。全ての作品において抗えない変化にもがき苦しむ姿や暴走してしまう感情が描かれ、その葛藤に人間味が宿っている。ジョシュ・トランクの復活作を是非堪能してもらいたい。
fromマリオン
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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