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自分のような役を演じられた…「それでいいんだよ」と言ってやりたい…『まっぱだか』柳谷一成さんと津田晴香さんに聞く!

2021年9月9日

2010年の開館から10周年を迎えた神戸の元町映画館が、安楽涼監督と片山享監督とのタッグを組んで製作した長編映画『まっぱだか』が9月10日(金)より京都・大阪の劇場でも公開。今回、主演の柳谷一成さんと津田晴香さんにインタビューを行った。

 

映画『まっぱだか』は、神戸・元町で全編ロケ撮影を敢行し、面倒くさくて愛おしい男女の喜劇を描く。現実を受け入れることができない青年の俊と、本来の自分ではない、他人から求められる自分に翻弄されている女性ナツコ。それぞれに葛藤を抱える2人が出会い、同じ時を過ごすが…
これまでにも『追い風』『1人のダンス』などで映画制作をともにしてきた安楽涼さんと片山享さんが共同監督を務め、2人そろってキャストとしても出演。主演は、安楽・片山両監督の作品に出演してきた柳谷一成さんと、神戸を拠点に俳優業をしている津田晴香さん。

 

元町映画館10周年記念作品への出演にあたり、長崎生まれの柳谷さんは「ここに来たことなかったのに携われたことは、有り難い。僕の代表作だと胸を張って云える作品になっているので、感謝しかない」と控えめながらも真摯に話す。2年前、初出演の映画『みぽりん」公開以来、元町映画館がお気に入りの津田さんは「10周年の作品に携われて、嬉しいです」と表し「自分が自主映画を観るきっかけとなった作品が安楽さんの『1人のダンス』。いつか安楽さんが監督する作品に出演できるように頑張ろう」と願っていた中で念願の作品となった。

 

現実を受け入れられない俊を演じた柳谷さんは「彼は僕自身に近い存在。つまり自分自身に対して『傍にいる人を大切にしろ』と言ってやりたい。ナツコには『そのままでいいよ」ですかね」と役を振り返る。現実の自分ではなく他人から求められる自分に翻弄されているナツコを演じた津田さんも「ナツコは私なんです。悪いところも良いところも含めて自分だから『それでいいじゃん』と言ってあげたい。俊には『私がいるじゃん。そこにいるよ』と」と人間味溢れる役が出来上がっていた。なお、片山監督はナツコのバイト先であるバーのマスターを演じており「本当にもっと人の話を聞いてほしい。全然話を聞いてくれないのでキツかった。プライドですかね」と演じながらも大変だったことを振り返る。だが、精神的に辛いシーンの撮影後、柳谷さんは片山さんに「酷いことを云ってしまった。ハグしよう」と云われ、ボロ泣きしてしまったことを明かした。

 

今作では、台詞が少なく表情や仕草を中心に演じた2人だが、津田さんは「お芝居している感覚がなく、見せ方を考えてなかった」とあっけらかんとしている。「安楽さんも片山さんも嘘を嫌がる。お芝居をする感覚になった時点で駄目。その空間にいて生まれるものを出してほしい、考えている」と受けとめ「素直な気持ちでいたことが全てだった」と説く。柳谷さんも「喋りたくなかったら喋らなくていい。喋りたかったら喋っていい。結果的に僕は喋っていなかった」と振り返る。台本は存在していたが「台本はあってないようなもの。台本通りに進んでいるけど、台本上の言葉も言っても言わなくてもいい」と津田さんが説明すると、柳谷さんは「でも自然と大まかな流れは台本通りになっている」と納得。津田さんは「ナツコは、私の当て書き。私自身、人から言われたことを笑ってごまかしたり受け流したりするところがある」と打ち明け「撮影時、云われたことから逃げずに受けとめて頭で考え、何を思ったかしっかり考えて出そうと決めていた。横山から嫌なことを言われ、受けとめるのが辛かったけど、日常生活でも言われていたことだった。辛いことを受け流していたと発見しました。改めて素直に演じることは大変なんだな」と気づくことが出来た。

 

タイトルにちなみ、”まっぱだか”になれたシーンを尋ねてみると、津田さんは、クライマックスシーンを挙げる。自身の中で「自分に対する気持ちが見つかり、言葉に出来たシーンですね。撮影中、自分に対する気持ちが見つかり言いたくなった。『思ったことをやってよい』と言われ、”全部さらけ出して言ってしまえ”という気持ちになった」と清々しさを感じていた。柳谷さんも同じくクライマックスシーンを挙げ「それまでと違い、やっと近くにいる人であるナツコに対して目を向けた」と振り返り「これが俊であり柳谷一成です」と実感。今後、津田さんは様々な作品に出演していく中で「自分の良さや自分に対する思いをより深くしていけたらいいな。自分のしたいことをするのが一番だな」と思い描いている。柳谷さんは「焦りもありますが、やりたいことをやっていきたいな」と話したうえで「『まっぱだか』が自信を持って云える作品になりました」と自負していた。

 

映画『まっぱだか』は、9月10日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、9月11日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。

神戸近圏で生活する人にとって、一度は訪れた、または、目にしたことがある神戸・元町が本作の舞台となっている。決してデカデカと”THE・神戸”な街並みを映し出しておらず、あくまでひっそりと佇む元町の景色があった。街並みの切り取り方に注目してみると、いかに監督達がこの街が好きかが伝わってくる。

 

本作主演の一人であるナツコを演じるのは、兵庫在住の津田晴香さん。実際に元町の日常を知る彼女。自然なイントネーションはもちろんのこと、ヤキモキとした葛藤、様々なシーンでみせる表情に、タイトル通りの”まっぱだか”な、ありのままの”津田晴香”が垣間見え、観客と、物語との距離をグッと引き寄せる。また、もう一人の主演である不器用な男の俊を演じる柳谷一成さんと、本作の監督でもある、安楽涼さんの演じる吉田の掛け合いが、学生時代を過ぎた男の友情関係はこうだよな、と妙にリアルで納得してしまう。

 

エンドロールに流れるのは、地元神戸のバンド”Little Yard City”の名曲「Walk with dream」。映画本編で観客の感じた気持ち、当たり前が当たり前で無くなってしまっている、現在の社会の中で、必死にもがき、戦う人々の背中を、力強いサウンドと歌声で、スッと押してくれる。

 

過ごす日々の中で忘れていた何か。”当たり前”の中で目を背けていた、何か、に気づかされた作品であった。劇場からの帰り道、駅へと歩く景色が、自分もこの物語の一部なのではと錯覚できる。そんな贅沢な体験ができるので、やはり、元町映画館での鑑賞をオススメしたい。

from関西キネマ倶楽部

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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