罪を背負う男と野良犬が紡ぐ再生の物語『ブラックドッグ』がいよいよ劇場公開!

©2024 The Seventh Art Pictures (Shanghai) Co., Ltd. All Rights reserved
北京五輪を控えた中国を舞台に、刑期を終えて故郷に帰った青年が、群れない黒犬と出会い、再起への一歩を踏み出す様を描く『ブラックドッグ』が9月19日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ブラックドッグ』は、中国を舞台に、罪を背負った青年と黒い犬の絆を美しいブルーグレイの映像で描いたヒューマンドラマ。2008年、北京オリンピックの開催が迫る中国。誤って殺人を犯し服役していた青年ランは刑期を終え、ゴビ砂漠の端に位置するさびれた街に帰郷する。人の流出が止まらず廃墟が目立つ街には、捨てられた犬たちが野犬化し群れをなしていた。知り合いの警察官に誘われ地元のパトロール隊で働くことになったランは、ある日、群れに加わらず単独行動している黒い犬と出会う。賢く決して人間に捕まらないその犬とランとの間には、いつしか奇妙な絆が芽生えはじめる。
本作では、『疾風スプリンター』『オペレーション・メコン』のエディ・ポンが寡黙な青年ランを時にユーモラスに演じ、『フラッシュオーバー 炎の消防隊』のトン・リーヤーが共演。さらに、映画監督のジャ・ジャンクーが重要な役どころで出演。『エイト・ハンドレッド 戦場の英雄たち』のグアン・フーが監督を務めた。2024年の第77回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門の最優秀作品賞とパルム・ドッグ審査員賞を受賞。
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映画『ブラックドッグ』は、9月19日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のkino cinema 心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。

エディ・ポン演じる主人公は、刑期を終えて故郷に帰った青年で、寡黙で孤独な姿で佇んでいる。それだけで十分に画になる存在だ。やむを得ず、罪を背負ってしまった彼は、全うに刑期を終えて故郷に帰ってきたが、荒廃してしまった街に対してショックを受けるような雰囲気を醸し出すことはなく、ただ淡々と目の前にある事態を受容するしかないのだ。『幸福の黄色いハンカチ』の主人公を観ているような気分にもなってしまうが、彼に心から寄り添うような人物はいない。そんな状況下、彼の目の前に現れたのが、街の皆からターゲットにされている孤独な黒い犬だった。CGかと思えるようなやせ細ってしまった黒い犬だが、主人公を威嚇しながらも次第に懐いていく姿には、どことなく可愛げも感じられるようになった。サイドカーに黒い犬が乗った状態で走っていく姿は、まさにロードムービーそのものであり、孤高の存在として他の犬にも崇められているようでもある。一貫して絶妙な按排の演技力を見せてもらったが、カンヌ国際映画祭にてパルム・ドッグ審査員賞を受賞したのも納得だ。なお、映し出されるのは、北京オリンピックの開催が迫る2008年の中国。近年の中国でも激動の真っ只中であり、近代化の煽りで翻って廃れてしまうことに、哀愁と言うよりも空虚という言葉が似合ってしまうことに言葉が出ない。されど、そんな状況下において未来が見えずとも日々をたんたんと生きていこうとする主人公と黒い犬から象徴的なものを感じられたら幸いだ。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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