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オープニング上映『万博追跡(2Kレストア版)』は、今回を逃したら紹介する機会は一生ない…!第21回大阪アジアン映画祭 暉峻創三プログラムディレクターに聞く!

2025年8月28日

優れたアジア映画の新作を毎年いち早く鑑賞できる第21回大阪アジアン映画祭が8月29日(金)より開幕!「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに、より豊かで質の高いアジア映画が上映される。今回、プログラムディレクターの暉峻創三さんにインタビューを行った。

 

 

プログラムディレクターとして暉峻さんは、ある年に開催する映画祭のプログラミングが終われば、直ぐ次回に向けて様々なことを考え始めており、落ち着く暇がない。今回は、前回が終了して半年も経っておらず「ホントに全く休む間もなく、気づいたらプログラミングの締め切りになっていた。今までで一番大変でしたね」と明かす。上映する作品について、近年は広く告知せずとも応募する方が年々増えており、暉峻自身だけでは全てを観ることができず、第一次選考を行う担当者からの評価を参考にしている。なお、自身から声をかけて応募してもらう場合もあるようだ。

 

アジア映画について、外国で開催されている国際映画祭で様々な方と話しながら情報収集をしたり、企画段階の作品について業界関係者に向けたプレゼンテーションをするイベントに参加して映像を見せてもらい見当をつけたりしている。そこから、大阪アジアン映画祭で世界初上映となった作品を輩出してきた。また、映画評論家の仕事も行っており、外国の評論家が今はどのような作品を褒めたりお薦めしたりしてるか、といった情報も収集しており「この辺りから、おもしろい作品がありそうだ」と目をつけている。とはいえ、日本の近隣国からの作品をフォローしているだけでは収まりきらない。広く知られていないアジアの諸国でも映画を作り始めており「情報収集も私1人では無理ですね」と漏らした。だが、”アジア映画”の定義は難しく「映画祭側にとっても分類は難しい。ボーダーを超えてくる時代が来るだろう、とは以前から考えていた。アジア映画といっても、作品の国籍について厳密な規定はしていない」と述べ「例えば、アメリカで生活しているアジア人の生活を描いているのであればOKだ、といったルールにしている。国籍だけで云えば、アメリカ映画やフランス映画になる作品でも上映してきた方ではありますね」と説く。

 

近年の大阪アジアン映画祭では、タイ映画が大きく注目されている。特に映画会社GDH 559による制作・配給作品は、お馴染みだ。暉峻さんは「基本的に、どの映画もクオリティが素晴らしい。最近は、タイの次代を率いていく新人監督を育てる、といった方針もありますね。実際、GDH 559発の作品でデビューした素晴らしい新人監督が次々と出てきている」と受けとめており、映画祭としても紹介したい映画が沢山あるようだ。「GDH 559は、特例中の特例的な会社。普通の映画会社だったら、制作する映画全てのクオリティが高いことはない」と考えていると共に「お客さんも同様に気づいている。監督の名前などを聞いたことがなくても、GDH 559の作品なら観にいこう、というファンがいる。これは貴重なこと」だと感じている。それは、タイ国内でも、実際に同じ現象が起きているようだ。

 

今回の映画祭は、前回の開催から6ヶ月も経っていない中での開催となる。大阪・関西万博会期中に開催する、といった絶対的条件がある中で前向きに捉えようとしており「アジア映画に特化した映画祭であるならば、新作を上映して紹介するだけが役割ではない。実は、アジアには、どの国も素晴らしいクラシック作品が沢山ある。最近では、フィルムアーカイブも頑張っているので、紹介したかった」と明かす。これまでは、旧作を紹介する余裕が全くなかったが、今回のイレギュラーな開催時期なら、応募総数が減少することを考慮し「今回こそ旧作を手厚く紹介するチャンスだ」と気づき、7作品もラインナップすることができた。

 

そこで、オープニング上映作品となったのが『万博追跡(2Kレストア版)』。台湾映画であるが「台湾の方でさえ、こんな作品があったんだ、と思う作品。1970年制作の映画ですが、1970年に開催された大阪万博が舞台の作品」と説明し「私が観たのは、20年以上前。当時から、この映画を絶対に紹介したい、と思っていた」と振り返る。映画祭で紹介するきっかけをつかめずにいたが「今回の機会を逃したら、紹介する機会は一生ないだろう。今回は絶好の機会がやってきた」と捉え、オープニング上映となった。しかし、映画祭で上映するにあたり、上映素材はデジタルである必要がある。『万博追跡』については、元々デジタル素材がなかった作品であり、1970年に制作されたフィルムはボロボロな状態になっており「実際に上映することは無理かもしれない」と思っていた。そこで、台湾の國家電影及視聽文化中心(TFAI:フィルムアーカイブを行う行政法人)に問い合わせてみると、肯定的な反応が。そして、今回の大阪アジアン映画祭で上映するためにデジタル修復をしてくれることになった。まさに「大阪・関西万博を開催している今だからこそ紹介できる」と喜んでいる。なお、主演のジュディ・オングさん自身も喜んでいるようで「当時、ジュディ・オングさんは台湾映画によく出演している。台湾と日本を頻繁に行き来し忙しかったみたいです。おそらく御本人も憶えていないじゃないか。今回、来日しますが、本作を観たいんじゃないかな」と楽しみにしている。

 

なお、今回は、斬新で挑戦的な作品を紹介するインディ・フォーラム部門で、気鋭の監督による沢山の作品を上映していく。暉峻さんとしては「インディ・フォーラム部門を拡大しよう、と思っていた訳ではない。クオリティ本位で選んでいったら、こういったことになった」と正直に話す。インディ・フォーラム部門は、日本のインディペンデント作品を紹介する部門であるが「事前の予想では、8月から9月にかけての開催では、直後に東京国際映画祭があり、外国では釜山国際映画祭などもある。日本映画を大阪アジアン映画祭に出品してくれないんじゃないか」と危機感もあった。だが、蓋を開けてみると予想とは違っており「今回は、素晴らしい日本映画が次々と寄せられた。ふと気がつくと、意外な程の比率を占めるに至っていた」と喜んでいる。また、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)も直近の開催であるが「意外なほどに上映作品が重なっていない。今の日本には幅広いインディペンデント作品があることを示している。PFFの1次審査通過作品を見てみると重なっている。最終的な評価では、PFFとは違う作品を選んだことになるんだな」と考えていた。なお、大阪アジアン映画祭では、作品を募集する段階では部門を分けておらず、数ヶ月をかけて最終選考結果にたどり着いた先にいずれかの部門で上映されることになっている。

 

第21回大阪アジアン映画祭は、8月29日(金)から9月7日(日)まで、ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館、大阪市中央公会堂で様々なアジア映画を上映。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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