Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

伝統文化を大切にしながら現代の価値観が存在するブータンを感じ取ってもらえたら…『ブータン 山の教室』パオ・チョニン・ドルジ監督に聞く!

2021年4月29日

(C))2019 ALL RIGHTS RESERVED

 

ヒマラヤ山脈の標高4800メートルにあるブータンのルナナ村を舞台にした人間ドラマ『ブータン 山の教室』が関西の劇場でも4月30日(金)から公開。今回、パオ・チョニン・ドルジ監督にインタビューを行った。

 

映画『ブータン 山の教室』は、ヒマラヤ山脈の標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画。ミュージシャンを夢見る若い教師ウゲンは、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。1週間以上かけてたどり着いた村には、「勉強したい」と先生の到着を心待ちにする子どもたちがいた。ウゲンは電気もトイレットペーパーもない土地での生活に戸惑いながらも、村の人々と過ごすうちに自分の居場所を見いだしていく。本作が初メガホンとなるブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ監督が、村人たちのシンプルながらも尊い暮らしを美しい映像で描き、本当の幸せとは何かを問いかける。

 

「現在のブータンは、非常にユニークなポジションにいます」と説くドルジ監督。「伝統文化は重要であり、大きな影響を受けています。同時に、とても現代的でグローバルな価値観にも引っ張られています。まさに岐路に立っています」と述べており、主人公ウゲンのような人間は多く存在しているようだ。伝統文化が受け継がれながら、都会的な生活を目指している人達がいる現代にインスピレーションを受けて作られており、本作は、あくまでフィクションではあるが「ドキュメンタリーだと思って観て頂いても大丈夫。全て誰かに起こった実話を基づいて作っています」と明かす。なお、ブータンにはプロの役者が存在しない。脚本に書いたキャラクターに似ている人を探しており、ウゲンを演じたシェラップ・ドルジもミュージシャンになりたくてオーストラリアに行くためのビザを待っていた時期があり、主人公と同じだ。舞台となったルナナの村人達は実際の村人であり、学校として使われている建物で撮影が行われている。学校の児童達も実際の児童達であり、自身のライフストーリーを映画の中で語っており「ルナナという土地や人々の純粋さを撮りたかった。その中にあるメッセージを感じて観る人の心を動かす」と意図を話す。

 

「ブータン人は、他人に対するおもてなしをしてくれる」と挙げ、ルナナでの撮影は「我々を家族の一員として受け入れてくれた」と振り返る。ルナナはブータンの中でも秘境の地と呼ばれており、宿泊施設がなく、村人の家に泊めてもらうしかない。撮影クルーが訪れた時には、もう一つの村が出来上がった感覚になったようだ。歓迎してもらい映画撮影への支援もして頂き、村人達と撮影クルーの関係は緊密になり「撮影が終了して去る時には、家族に別れを告げるような心を動かされる経験だった。村を出る時にヤク製品をお土産として沢山持たせてくれた。素晴らしくて美しい経験だった」と懐かしんだ。とはいえ、撮影自体は大変であり「高地ですので電気もない。全て太陽電池に頼り、使える機器は限られている。2ヶ月半滞在し、シャワーも浴びられない」と苦労を重ねたが「充実した仕事であり、やりがいのある作品が出来ました。同時に、自分を発見する意味でも充実したやりがいのある経験になりました」と満足している。しかし、電力は限られており、ルナナで撮影した映像は2ヶ月後に下山するまで確認できず「撮影クルーに『この映画は出来ないかも』と言い続けていました」と告白。クリエイターとしてプロジェクトに関わっている時は「これが僕のやりたいことだ」と自信があったが「あまりにもプロジェクトに入り込み過ぎて、観客が見て伝われるだろうか」と不安が募る日々であり「お客さんに観て頂き、感想が聞こえて来た時、ようやく映画が完成する」と実感した。改めて、自身について「私は観客からインスピレーションを受けるタイプの映画作家」と述べ「人に観てもらって、何かを感じさせなければ、アートじゃない。観客と繋がり共有することで、私はやりがいを抱きインスピレーションが起きる」と感じている。

 

なお、ブータンにおけるインディペンデントなアート映画は抽象的に描かれている作品が多く「ブータン人によっては『なんだろ、よく分からない』ということが多い」というドルジ監督。今作について「ブータン以外の方々には、ブータンの美しさを見せたい。同時に、ブータンの人達が共感できるストーリーを語りたい」と考えていたが「多くの方に受け入れてもらえた」と伝わってきた。ブータンは映画館が2つしかなくとも「毎回満員で、3日間かけて来た方もいた。満席が続いたので、ドアを開け放って階段に座ってもらったり、アウトドア用の椅子を持ってきて廊下に並んでもらったりしながら観てもらった」と盛況。コロナ禍により上映を中止せざるを得ない事態になったが「アーティストとして自分の作品を人々に観てもらい喜んでもらえた」と、やりがいのある嬉しさに包まれた。

 

映画『ブータン 山の教室』は、関西では、4月30日(金)より京都・烏丸の京都シネマで公開。また、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と神戸・三宮のシネ・リーブル神戸でも近日公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts