実在する天才写真家の光と闇を描く『レイブンズ』がいよいよ劇場公開!

©Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, TheY House Films
実話とフィクションを織り交ぜながら、天才写真家と被写体である最愛の妻の間の複雑ながらも普遍的な愛の模様を描く『レイブンズ』が3月28日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『レイブンズ』は、世界的に高い評価を受け続ける写真家である深瀬昌久さんの波瀾万丈な人生と、彼の最愛の妻にして被写体であった洋子さんとの物語を、実話とフィクションを織り交ぜながら描いたダークファンタジーラブストーリー。北海道の高校を卒業した深瀬昌久さんは、父の写真館を継がずに上京する。さまよう日々のなかで、深瀬さんは美しく力に満ちた女性である洋子さんと恋に落ちる。洋子さんは深瀬の写真の主題となり、2人はパーソナルでありながら革新的な作品を生みだしていく。家族愛に憧れる深瀬さんは洋子さんの夢を支えるため懸命に働くが、ついに彼女の信頼を裏切ってしまう。深瀬さんの心の闇は異形の“鴉の化身”へと転生し、哲学的な知性で彼を芸術家の道に導こうとする。
本作では、『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』で知られるイギリスのマーク・ギル監督が浅野忠信さんを主演に迎え、天才写真家の狂気と純粋さを繊細かつワイルドに演じさせ、『火口のふたり』の瀧内公美さんが洋子さんを存在感たっぷりに演じた。
©Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, TheY House Films
映画『レイブンズ』は、3月28日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開。

自身の私生活を深く見つめながら、1960年代以降における日本の写真史において独自のポジションを築いた深瀬昌久さんの人生を光と闇によって描いた本作。何時の時代においても同じなのか、親が写真館を営んでいたことから、芸術としての写真について認められなかった深瀬さん。そんな反対に応じず、自らの才能を発揮していったことは喜ばしい出来事。だが、彼の心の奥底にある闇によって表出されたのが、鴉の化身。鴉と話す姿は、周囲には見えず、独り言だと思われるのは、如何ともし難い。だが、鴉と話すことで、闇と向き合い、自身の理性をなくすことなく、写真家としての才能を一層に発揮していったように感じられる。そんな彼に寄り添うパートナーがいたが、実際の深瀬さんは二度の離婚を経験した。本作においては、1人目の妻である洋子さんだけが登場する。最終的に、深瀬さんの最期まで寄り添ったことを考えると、この描き方は相応しいものではないのだろうか。この洋子さんを演じるのは、瀧内公美さん。どのような役でも自分のモノにして演技できる女優であると感じているが、本作では珍しいショートカットの姿を見せ、新たな一面を見せてもらったように感じる。実際の深瀬さんと洋子さんの姿を見てみると、浅野忠信さんと瀧内公美さんが雰囲気も含めてどれだけ再現しているのか、とも気づかされた。本作を日本人の映画監督ではなく、『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』のマーク・ギルが監督をしていることは興味深く、類稀なる天才写真家の姿をじっくりと見届けてほしい。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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