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父の誕生日パーティのため祖父の家を訪れた7歳の少女が過ごす夏の1日を描く『夏の終わりに願うこと』いよいよ劇場公開!

2024年8月6日

©2023- LIMERENCIAFILMS S.A.P.I. DE C.V., LATERNA FILM, PALOMA PRODUCTIONS, ALPHAVIOLET PRODUCTION

 

療養中の父親の誕生日に祖父の家を訪ねた少女の、父親と再会するまでの1日を描く『夏の終わりに願うこと』が8月9日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『夏の終わりに願うこと』は、離れて暮らす父と再会した少女の揺れ動く心を瑞々しく描いた人間ドラマ。ある夏の1日。7歳の少女ソルは大好きな父トナの誕生日パーティに参加するため、母と一緒に祖父の家を訪れる。病気で療養中の父と久々に会えることを無邪気に喜ぶソルだったが、身体を休めていることを理由になかなか会わせてもらえない。従姉妹たちと遊びまわることも、大人たちの話し合いに加わることもできず、いらだちや不安を募らせていく。ようやく父との再会を果たしたソルは、それまで抱えていた思いがあふれ、新たな感情を知ることになる。

 

本作は、メキシコの新鋭リラ・アビレス監督が手掛け、世界各地の映画祭で注目を集めた。主演は映画初出演のナイマ・センティエス。モンセラート・マラニョン、マリソル・ガセ、マテオ・ガルシア・エリソンド、テレシタ・サンチェスらが共演。2023年の第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、エキュメニカル審査員賞を受賞した。

 

©2023- LIMERENCIAFILMS S.A.P.I. DE C.V., LATERNA FILM, PALOMA PRODUCTIONS, ALPHAVIOLET PRODUCTION

 

映画『夏の終わりに願うこと』は、8月9日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のシネマート心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

親が「いなくなる」日がやってくる。分かってはいるけれど、いざその時が来たとき、どうやって受け止めていけばいいのだろうか?悲しみに暮れる?忘れ去る?感情的に無になる?漠然とした想像だけが広がっていく。

 

今作の主人公であるソルもまた、父親のトナがいなくなる日のことをあまり想像できていない少女である。いや、しっかり理解しているのだ。でも、饒舌に表現できる術がない。まわりの大人たちが話す言葉は難しいし、ソルの知らないところでさまざまな人間模様が繰り広げられている。今夜開催される父親の誕生日パーティーが、もしかしたら最後になるかもしれない。それでも彼女は普通に振る舞う。まるで父親との日々を自分に刻み込むかのように。

 

一方で、大人たちにはお金というシビアな問題が立ちふさがる。すでにやれることはやり切ったみたいだが、これ以上は厳しいという。ままならない状況で大人たちはさまざまな顔を見せる。誕生日パーティーを仕切りながら霊媒師にトナの回復を頼み込む長女のアレハンドラ、トナのバースデーケーキを作りながら涙を流す次女ヌリア、誕生日パーティーに反対する姿勢を見せるかと思いきや息子への愛情を覗かせる父ロベルト、賃金が未払いながらも献身的にトナをサポートするヘルパーのクルス。大人たちの心境も多様で複雑だ。

 

少女の真っ直ぐな眼差しと大人たちの複雑な機微を捉えるリラ・アビレス監督の見事な視点が素晴らしい。言葉にできない感情や整理できない心情が画面から伝わり、雄弁に語りかけてくる。繊細さを映画に封じ込めることができる稀有な監督のひとりと言っていいだろう。

fromマリオン

 

キム・ボラやユン・ダンビといった韓国映画界から次々と気鋭の女性監督が世に出てきている昨今、メキシコからは1982年生まれのリラ・アビレス監督の長編最新作が届いた。先に2人の監督名を挙げたのは、彼女たちと共鳴するかのように、本作が「子どもの見ている世界」を収めているから。

 

「7歳の少女・ソルが療養中の父親を祝う誕生日パーティのために祖父の家に集まった一日を描く」
このようにプロットを書き出すと郷愁を誘う温かな語り口を期待するかもしれないが、本作を駆動させるのは、あくまで「サスペンス感」である。パーティに参加する親族達は各々さまざまに抱える事情があり、温度感もバラバラ。決して一枚岩とはいかないところに、リアルな団欒とそこに生じる緊張感が実像が映し出されている。皆が一堂に会するからこそ生まれる不穏な空気。誰かの本音ですべてが台無しになってしまうかのような危ういバランス。そして、近い未来に確実に訪れるであろう父との死別。一口でまとめられない様々なニュアンスを家屋の至る所を使い、横顔のクロースアップを交えて本作では描写されている(個人的には“ここぞ”の場面でさりげなく使われる切り返しショットにただただ感嘆)。実家に帰省する機会も多いであろうこのシーズンに是非とも観てほしい。

fromhachi

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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