Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

今の日本社会が本当にこのままで良いのか…日本共産党を通して考えてみるきっかけになれば…『百年と希望』西原孝至監督に聞く!

2022年6月29日

2022年7月に創立百周年を迎える日本共産党が、左派政党として貫いてきた独自のあり方を振り返るドキュメンタリー『百年と希望』が7月2日(土)より関西の劇場でも公開される。今回、西原孝至監督にインタビューを行った。

 

映画『百年と希望』は、創立100周年を目前にした日本共産党の現在を取材したドキュメンタリー。2022年7月15日に創立100周年を迎える日本共産党。新自由主義を推し進める自由民主党が長く政権を担う日本で、左派政党として独自の立ち位置を貫いてきた。コロナ禍の2021年、99年目の日本共産党にカメラを向け、夏の東京都議会議員選挙と秋の衆議院総選挙をめぐる議員たちの活動、入党60年を超える古参党員、日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」編集部、若い世代の支援者などを取材。彼らの姿を通して現在の日本社会を浮き彫りにし、新しい社会の可能性とその希望について問いかける。『わたしの自由について SEALDs 2015』等のドキュメンタリー作品で知られ、2010年代から日本の社会運動を撮り続けてきた西原孝至さんが監督・撮影・編集を手がけた。

 

日本共産党だけでなく立憲民主党や社民党、れいわ新選組といった様々な政党の方々と抗議やデモの現場で出会ってきた西原監督。「足繫く通い政党の方々と顔馴染みになっていったら、別の政党に関する映画になっていたかもしれませんね」と振り返るが、特に日本共産党の方と出会うことが多く、自然と顔を合わせ顔馴染みになっていったことから今作の制作が始まっている。なお、『わたしの自由について SEALDs 2015』を撮って以降、2020年の秋頃に「外の視点から日本共産党について描いてみたい」と考えるようになり、本作に関するプレゼンを行った時も、やはり「SEALDsのドキュメンタリーを撮った監督だ」と認識してもらっており、つながりを大いに感じた。

 

創立100周年を迎える日本共産党であるため、地域によっては年配の方々が活動している印象があるかもしれない。西原監督は自身と同年代の方々に興味が湧き「日本共産党に入って活動している議員や周囲の方々を撮影したい」と取り組んでいく。日本共産党の方々による街宣活動に出向いてみると「周囲に構えていた支持している方々は年配の方々。議員さんも年配の方が多い」とは実感するが、99年目の姿を描くにあたり「自分と同世代のこれからの日本共産党を担う若い世代に興味が湧いたので、撮影は徐々にそういった方々の分量が多くなっていった」と経緯を説く。

 

とはいえ、2015年の『わたしの自由について SEALDs 2015』撮影前まではデモにも参加した経験がなかった。2011年に東日本大震災が発生して以降は「自分が生きている社会は不確かで脆いものだ」と認識し、社会問題に目を通すようになっていく。だが、監督自身が行動するようにはならず「当時は日本共産党という存在まで自分の思いは至らなかった。当時は、あまり能動的には動けておらず注目できていなかった」と自省する。

 

『わたしの自由について SEALDs 2015』アフタートークに来て頂いたことがあった池内さんは、LGBTQやジェンダー平等、人権問題について現役の国会議員時代から訴えており、西原監督は共感。2017年の選挙で落選してしまったが「(2021年の)衆院選の結果を見届けたい」と出演をオファーした。また「同年代の若い女性から圧倒的に寄せられている期待が大きい」と察し、気になる存在となっていく。都議会議員である池川友一さんは、ツーブロックの髪型に関する校則の問題で委員会で質問した時の映像が注目を集めると共に、教育長が応えた回答内容が物議を醸した。「困っている声を聞き取って掬い取って社会に届けて変えていく彼の姿は現在の日本共産党を表している」と受け止め、池川さんにオファーしている。本作では、この2人を中心に、議員だけでなく、長年頑張っている党員の方や若い世代の方、ジェンダーバランスを考えながら、撮影を進めていった。さらに興味が湧いたのは、「しんぶん赤旗」の存在だ。「赤旗の存在は、ユニーク。日本共産党自身は政党助成金をもらっておらず、赤旗の売り上げが党の収入の8割を占めている」という事実は興味深く「赤旗は、日本共産党の機関紙であると共に、日本のジャーナリズムにおいて大手メディアが忘れがちな権力を監視する本来のジャーナリズムの在り方を頑張って体現している数少ないメディアだ」と認識している。「紙面は、どのようにして日々成立しているのか」と関心があり、興味が湧いたところを中心にして撮影していった。

 

なお、本作には、日本共産党以外の政党による街宣活動の映像も挿入されているが、議員さんに関しては肖像権はない。「日本共産党が訴えるモノに対して、自民党はどういう訴えをしているのか。両方合わせて、映画を見る方にも届けたい」と考えており「池内さんの訴えに関して、公明党や萩生田経産大臣の訴えも、区別することなくご紹介したい」とニュートラルな姿勢だ。観客に対して「自民党はこういう考え方、日本共産党はこういう考え方だと感じてもらいたい」という意図があり、現在の政権与党の訴えも紹介している。

 

また、これまで制作してきたドキュメンタリーと違い、今回は、相手の話を聞いている西原監督の姿が映し出されている。本作の制作にあたり「日本共産党から依頼された映画ではない。あくまで外の視点から現在の姿を見た」というスタンスを崩したくない、という意図があった。さらに「この映画を撮っているのは、どの立場の誰であるか明示したかった」という意向を以て撮影している。撮影は250時間にも及んだが、編集段階で全ての撮影素材を見返していき「それぞれの登場人物の紹介したいシーンのOKカットを抜いていき、どの順番で紹介していくか並べていき、どういう順番で紹介していけばいいのか、現在の日本共産党の姿が伝わるか」と熟考。「ジェンダー平等を日本共産党が打ち出していることも含め、世の中が変わってほしい。だからこそ、池内さんを冒頭で提示し、次に池川さんを…」と現在の日本共産党を打ち出す作品として仕上げていった。

 

だが、作品の終わらせ方には難航していく。「ドキュメンタリーは勢いで撮り始められるが、いつ終えられるか難しい。いつでも撮影は止められるけど、どこで撮影を終えるか難しい」と打ち明けながら、本作の場合、とある活動におけるシーンを用いた。「日本共産党をモチーフにした映画ではありますが、日本共産党の活動を撮影していけばしていくほど、どんどん日本の社会が今抱えている問題点や課題が見えてきた」と気づき、撮影しながら「今の日本の社会はこのままでいいのか」という思いが芽生え、ラストシーンを撮影できたことに手応えを感じている。完成した作品は、3月初旬に日本共産党本部で関係者向けの内覧試写を実施した。国会議員の小池晃さん、しんぶん赤旗の記者、池内さんの事務所の方々に来て頂き「外の視点から自分達の活動を見ることはないので、新鮮な気持ちで観て頂いた」と感触があり「99年、100年目の節目に自分達が活動を良い意味で振り返られて良かった」という声を受け取っていく。「日本共産党にとって耳が痛いこと、ジェンダー平等を掲げているけども、実現できていないことを指摘されたことは苦い顔をしていました」と眺めながら「良いところと悪いところ含めて日本共産党にとっても考える良い機会になった」という言葉も多く頂いた。企画書の段階で「日本共産党の称賛も批判も含めた99年目の姿を描きたい」と明記していたので「ブレることなく日本共産党の方にも伝わったので良かったな」と実感している。

 

既に東京の劇場では公開されているが「日本共産党の方には観てもらいたいです。日本共産党が変わってほしいことは沢山あります。一人一人の言葉で政治を語ってもらいたい」と願っており「『日本共産党については、どうなんだろう』と疑問に思っている方にこそ観てほしい」とお客さんにも期待している。「今の日本共産党は誤解されているところもある。本当の日本共産党の姿が見えておらず伝わっていない」と身を以て感じており「この映画を観てもらって、日本共産党を通して『今の日本社会が本当にこのままで良いのか』と考えてもらう一つのきかっけになればいいな」と提示していた。

 

西原監督は、今までドキュメンタリーを撮ってきたが「近い将来、劇映画にも挑戦したい」と意気込んでいる。現在、TV局での仕事をしていることもあり「日本のジャーナリズムの在り方に危機感を覚えている。権力を監視する、という本来の役割を忘れてしまって、商業的になってしまっている。批判することを恐れてしまっている。忖度が働いてしまっているメディアの状況は危険だ」と述べ「日本のジャーナリズムの在り方がこのままで良いのか、と問う脚本を書いています。近い将来、完成させて上映したい」と不退転の覚悟だ。

 

映画『百年と希望』は、関西では、7月2日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォや神戸・元町の元町映画館、7月8日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、7月16日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts