東ジョージアの山岳地帯にあるパンキシ渓谷で暮らす人々追ったドキュメンタリー『アダミアニ 祈りの谷』がいよいよ劇場公開!
©2021 ADAMIANI Film Partners
東ジョージアの山岳地帯にあるパンキシ渓谷に暮らす、キストと呼ばれるチェチェン系ジョージア人の人々を3年にわたって記録した『アダミアニ 祈りの谷』が12月1日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『アダミアニ 祈りの谷』は、チェチェン紛争で「テロリストの巣窟」の汚名を着せられた東ジョージアの山岳地帯パンキシ渓谷で暮らすチェチェン系ジョージア人「キスト」の人々を3年間にわたって記録した、日本・オランダ合作によるドキュメンタリー。戦争で2人の息子を失ったレイラは、娘マリアムや両親とともに、美しい庭のあるゲストハウスを営んでいる。彼女の従兄弟アボは、旅行者をコーカサスの山へ案内するガイドの仕事をしている。戦士の一族に生まれたアボもまた、戦争による重いトラウマにさいなまれていた。2人は戦争で荒廃した谷から負のイメージを払拭するべく、ポーランドから来たバルバラと旅行会社を作ることに。しかしある日、パンキシ渓谷出身の青年がテロ容疑で殺害され、新たな分断が生まれてしまう。2010年にパンキシ渓谷のキストの人々と出会いドキュメンタリー制作を始めた竹岡寛俊監督の長編初作品。タイトルの「アダミアニ」とは、神が最初に創造したアダムを語源とするジョージア語で「人間」を意味する。
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映画『アダミアニ 祈りの谷』は、12月1日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都や神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
パンキシ渓谷という場所を本作を通じて改めて知った。1999年、ロシアからの独立を目指したチェチェン共和国の紛争によって追い詰められた難民やゲリラの人々が目指し身を寄せ定住に至り、ジョージア人となった「キスト」が住むのが、ジョージアのパンキシ渓谷とのこと。難民であるため、同胞として受け入れてくれたが、様々なゲリラも集まったことで、”テロリストの巣窟”という汚名まで着せられてしまうのは何とも切ない。ゲリラとして果敢に戦い、亡くなってしまった男達がいた中で、難民から生活を立て直し生きていく上での営みを続けた女性達もいる。女性達の中にはパンキシ渓谷を愛し観光協会を起ち上げ、積極的にPRしていった。だが、周囲の人達は表向きは受け容れているようだが、深層心理では、如何ともしがたい心境のようだ。そこには宗教問題もあるようで、お互いの意見は一致しない。あくまで平和を願うものであるにも関わらず、誤った解釈をした者が戦場に臨んだだけだったのに。だが、紛争を戦い生き残った人々の中には、観光協会の意向に賛同し、寡黙ながらも心優しいガイドになった者もいる。受け入れた側のジョージア人とキストによる正義の衝突があったことも事実ではあるが、相互理解によって新たな道筋を作ることが出来る。ウクライナ侵攻によって皆の注目は変化しているようだが、皆が明るい未来に向かって今も取り組んでいることを願うばかりだ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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