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「コロニア・ディグニダ」にインスパイアされた“ホラー・フェアリーテイル” 『オオカミの家』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2023年8月29日

©Diluvio & Globo Rojo Films, 2018

 

助け合いの幸福をモットーにしているドイツ人集落から逃げ出した少女が遭遇する恐怖を描く『オオカミの家』が9月1日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『オオカミの家』は、ピノチェト軍事政権下のチリに実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」に着想を得て制作したストップモーションアニメ。美しい山に囲まれたチリ南部で、「助けあって幸せに」をモットーに掲げて暮らすドイツ人集落。動物が大好きな少女マリアは、ブタを逃してしまったために厳しい罰を受け、耐えきれず集落から脱走する。森の中の一軒家に逃げ込んだ彼女は、そこで出会った2匹の子ブタにペドロとアナと名づけて世話をするが、やがて森の奥からマリアを探すオオカミの声が聞こえてくる。マリアがおびえていると子ブタは恐ろしい姿に変わり、家は悪夢のような世界と化す。

 

本作は、チリの2人組監督クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの初長編作品で、アマリア・カッサイ、ライナー・クラウゼらが声で出演。2018年の第68回ベルリン国際映画祭フォーラム部門でカリガリ映画賞、第42回アヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞を受賞した。

 

©Diluvio & Globo Rojo Films, 2018

 

また、本作の併映作品として『骨』が上映される。「1901年に制作された世界初のストップモーションアニメ」という設定で描いた短編作品だ。新憲法草案について議論が交わされる2021年のチリで、ある映像が発掘される。1901年に撮影されたその映像は、少女が人間の死体を使って謎の儀式を行なう様子を記録したものだった。『ミッドサマー』のアリ・アスターが製作総指揮に名を連ねる。2021年の第78回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で最優秀短編映画賞、ひろしまアニメーションシーズン2022の環太平洋・アジアコンペティションで最優秀賞を受賞した。

 

©Pista B & Diluvio, 2023

 

映画『オオカミの家』と併映の『骨』は、関西では、9月1日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都、9月8日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋や神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

悪夢が部屋の中にプロジェクションマッピングされたような、見たことのない映像が物凄い。あれはヤバい映画ですよ、と前評判を聞き過ぎると、ハードルが上がってしまうものだが、これは本当に強烈な作品だ。「異様な映像がすごいから観てみてください!」と言う以上のオススメ表現はないれど、見応えを保証する意味で書かせて頂く。

 

鑑賞にあたってできるだけ持っていたほうがよい予備知識が少しある。
・1960年代から、南米チリにナチス残党が設立したカルト組織「コロニア・ディグニダ」があった。
・住民たちは閉鎖された地域で洗脳されて支配され、強制労働を強いられていた。
・厳格なルールを破った者には処刑を含む厳罰が与えられていた。
・幼い子供を含め、性的虐待が行われていた。
・この映画は「コロニアで制作されたプロパガンダ的な映像である」という体裁のフェイク作品である。
コロニアのディテールはもっと複雑で闇が深いが、とりあえずはこれだけ知っていれば十分だ。ちなみに組織を構成していた人員や施設は、現在も完全に消滅はしていない。

 

本作は「コロニアから逃げてきた少女が、ある家に逃げ込んだ」というエピソードを、コロニア側が風評被害(?)払拭のために作成したイメージアップ映像(という設定)だ。何がなんだか分からないが、とにかく怖い。なんだんだ、この作品は!

 

映像の手法は、昔ながらのコマ撮りアニメーションだ。人形だけでなく、壁に描かれた絵までが動きまわり、カメラワークもずっとぐるぐると移動を続ける。観ながらふと我に返って「あっ、これは1コマずつ、壁の絵を何度も描きなおしたりカメラの位置を少し動かしてはまた撮影して、を延々と繰り返しているんだな。途方もない労力だな」と気が付くが、制作への情熱、或いは、執念も怖い。何重にも気が狂っている。

 

同時上映の『骨』も強烈な内容だ。少女が手に入れた骨が、命を再び吹き込まれて動き出す。受肉した異様な生身の姿は、不完全な人体となった我が身を恨めしく思うかのようにノロノロと動き、這いずり回る。いま自分が観ているものは、生命への冒涜ですよね?と己の直観が警告するくらいに禍々しい。

 

関東でも大ヒットを受けて、関西でも公開が予定より早まるという異例の過熱ぶりなので、見逃すという選択はない。音響も凝りに凝っていて、耳からも観客の正気をすり減らす圧がこもっているので、是非できるだけ良い設備と大きなスクリーンの劇場での鑑賞をおすすめする。ただし、悪意に満ちたフレーズの数々が耳からも頭からも離れなくなることは、覚悟して頂きたい。

 

お前たちも世話してやろう、豚ども。

 

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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