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苦しいことや大変なことを乗り越えた先に楽しいことや良いことが待っているからこそ笑顔で頑張れる…『人生ドライブ』城戸涼子監督に聞く!

2022年7月1日

(C)2022 KKT熊本県民テレビ

 

7男3女の子供がいる熊本県宇土市に暮らす岸家の他愛ない日常から、自宅全焼、熊本地震、緊急入院など数々の困難に立ち向かう家族の様子を映しだす『人生ドライブ』が7月2日(土)より関西の劇場でも公開される。今回、城戸涼子監督にインタビューを行った。

 

映画『人生ドライブ』は、熊本県で10人の子どもがいる夫婦を21年間にわたって追い続けたドキュメンタリー。「NNNドキュメント」でも話題を集めた熊本県民テレビ発の人気ドキュメンタリー番組などこれまでの映像を劇場上映用に再編集した。熊本県宇土市で暮らす岸英治さん・信子さん夫妻には7男3女の10人の子どもがいる。映像からは子どもたちへの溢れんばかりの愛情や、大家族ならではの暮らしの工夫が見えてくる。英治さんと信子さんは60代を過ぎた現在でも互いを名前で呼び合い、他愛のない会話の中には穏やかな時間が流れる。長い歳月の中で、自宅の全焼や熊本地震での被災、信子さんの入院など様々な困難に見舞われても、その度に夫婦や家族で共に乗り越えてきた。そんな岸家の人々に寄り添うようにカメラを向け、家族の21年間を映し出す。ナレーションは俳優の板谷由夏さんが務めた。
製作著作:KKT熊本県民テレビ/配給:太秦【2022年/93分/DCP/16:9/日本】

 

熊本県民テレビが何代もディレクターが引き継がれながら追いかけた岸家。城戸さんが受け継ぎ、岸家と初体面した際には「緊張していたのは私だけだったのかもしれない」と思い返しながら「ディレクターが変わったから、といって態度が変わるわけではない。ディレクターが変わってもカメラマンは以前と同じときもあり、何もかもガラッと変わるわけではない。信子さんは気にしていなかった」と振り返る。当初は「先輩達が脈々と取り組んできたことなので、途切れないようにしないといけない」と緊張感があった。だが。岸さんのご自宅に伺うと、お子さん達から「遊ぼうよ」と云われながらカメラを回していく。「目の前のことに必死で、深く考える余裕がなかった。家族側は、カメラが来たからといって態度が変わるわけではない。いつも通りの様子を撮影できた。こちらからお願いしたことはない」と明かし「ドキュメンタリーなので、こちらから予定を聞くことがあっても、お願いすることはない。行ったら予定と違うことはあります。台本はないので、ひたすら撮影するだけ」と密着するスタンスだ。

 

本作を観ていると、岸家には笑顔が溢れていることが伝わってくる。城戸監督は家族から「笑顔の背景には、それまでに大変な出来事があり、乗り越えてきた経験があるからなのかな」と感じ取ると共に「苦しいことや大変なことがあっても、それが幸せの入り口だと分かっていて、人生で何度も経験しているから、少々大変なことがあっても頑張れる」と伺った。笑顔につながる要因があると察し「最初からずっと笑顔だったわけではない。苦しいことや大変なことを乗り越えた先に楽しいことや良いことが待っていたと経験しているから、悲壮感だけで生きていない。大変なことがあっても、いつまでも続くわけではない」と実感。だからこそ、自宅の全焼や熊本地震での被災に遭っても、悲壮感は見受けられず。長年の取材によって築いた関係性により、翌日には取材が出来ている。とはいえ「堅い意思をもって撮影に臨んだことがない」と打ち明け「あくまで起こっていることを撮影しただけ」と謙遜。「子ども達が里帰りした時は、様々な出来事が同時多発で起きていて、カメラが足りなかった。大家族が一堂に集まる取材ならではですね」と説明し「とにかくその場に私達が介入しない。想定外の出来事が起こっても時期を待って撮影するスタンス。想定以上に時間がかかることはありますね」と真摯な姿勢だ。

 

今回の映画化にあたり、TV番組制作だけなく、映画の制作経験がある構成作家兼エディターの佐藤幸一さんに参加してもらっている。最初に「どの部分を使っていくか」と話していき「映画は映像で語るものだ、と。TV番組だとナレーションを入れがちになってしまう。出来るだけナレーションを削ぎ落して、映像を並べ替え、各々の表情や語っている姿を見て頂いて自由に感じてもらう編集にしよう」と心掛けた。映画では不必要に編集で映像を切り刻まないようにしており「車中での会話や長いインタビュー等に対してなるべく編集せず、当時起こったリアルタイムな出来事を入れ込んでいった」と説きながら「車中の会話などは長く見せないと話が通じません。このためTV放送では取り上げられない映像は映画の中で掬い上げて盛り込めた。切り刻まないありのままの映像が、夫婦本来の姿をしっかりと見せられる。そこから感じ取ってもらえることがあるんじゃないかな。TVでは見せない岸さん達の姿があります」と自信がある。

(C)2022 KKT熊本県民テレビ

 

既に各地の劇場で公開されており、TV放送時と違い、多種多様な感想があり「観た人の数だけ感想がある。皆さんが自由に感じて頂いている」と実感しており「家族に会いたくなった」「実家に電話しようかな」といった声が届けられた。まさに「皆さんが家族や近しい人を思い出しているんだなぁ」と嬉しい限りだ。かつて、各TV局では、大家族に密着した番組やコーナーが多く存在していた。近年ではあまり見かけない。城戸監督曰く「私の想像ですが、もう大家族がいないんじゃないですか。いたとしてもTV番組が密着することがなくなっているのかな」と話す。今回、各劇場で舞台挨拶を開催した際には「ウチも子どもが多いんです」というお客さんの声を偶に聞くことがあり「誰かが見つけて取材しない限り、広く知ってもらう機会がない。子どもの数が減っている、という社会の事情を鑑みると、以前に比べるときょうだいの多い家庭が減っているのかな」と感じ取った。

 

なお、岸さん達への取材は、現在も続いており熊本ローカルで放送しており、今年夏は孫が16人にもなる。「随時取材して放送し、YouTubeで公開し様々な方に観て頂ける環境にしたいな」と展望している。「取材を始めた頃、こんなに長く続くとは思っていなかった」と告白しながらも「辞めずに20年撮り続けてきたから、映画が完成しました。取材を続けてきたから、当人や取り巻く家族の成長が分かる」と力説。「身近なことを毎年撮り続けていることは他にもあります。熊本では水俣病やハンセン病や赤ちゃんポスト等、撮り続けているものがあります。ピンポイントではなく、長い年数を帯で見せることで、感じ方がTV番組とは違う作品をきっと作れる」とTV局のディレクターとしてのスタンスがあり「今後、岸さんの担当をどれだけ続けられるか分からないですが、仮に離れたとしても、今後も続けていけば、発見や輝いている何かが見えてくるので、描けるものがあればまとめていきたい。岸さんに関わらず撮りため続けてきた映像は、年数を重ねることで大きな意味合いを持つことなることは伝えていきたい」と確固たる意志を以て取り組んでいく。

 

映画『人生ドライブ』は、関西では、7月2日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。7月2日(土)に岸さんご夫婦(岸英治さん、信子さん)と古庄剛プロデューサー、7月3日(日)に城戸涼子監督による舞台挨拶を開催予定。また、京都・九条の京都みなみ会館や神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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