一般的な映画にあるリアリズムから距離をおき、新たな違和感を生み出せる…『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』舞台挨拶開催!
共に暮らしていて、ある日失踪した男性を、残された写真を頼りに探し出そうとする女性の姿を描く『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』が8月5日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。初日には、石川理咲子さん、高橋恭子さん、小野塚老さん、那木慧さん、北尾和弥監督を迎え舞台挨拶が開催された。
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』は、映像作家の北尾和弥さんが、現代の東京をさまよう女性の姿を、ディストピア的に捉えた映像と研ぎ澄まされた音響、浮遊するような言語感覚で描いた異色ロードムービー。主人公の女と暮らしていた男が部屋に無数の写真を残し、突然姿を消した。女は写真を手に、そこに写った場所を探すために東京の街をさまよい歩く。その中で4人の人物に出会った女は彼らと会話を重ねる中で、失うことへの不安、焦燥、自らが信じていたものへの疑問などさまざまな想いを掻き立てられていく。次々と現出する問いに内なる対話を深める中、自身の中にあったはずの何かを埋め戻すため、女はもがくのだが…
都市をさまよう女を、ダンサー、パフォーマー、アーティストとして活躍する石川理咲子(Ree)さんが演じる。
上映後、石川理咲子さん、高橋恭子さん、小野塚老さん、那木慧さん、北尾和弥監督が登壇。作品作りに対する思いが伝わってくる舞台挨拶が繰り広げられた。
最初に、北尾監督は、作品作りについて「行き当たりばったり」と打ち明け「多くの映画にあるリアリズムに対して疑問を持っていました。もう少し違ったやり方ができないか」と模索していたことを明かす。偶然にも、石川さんとロケバスで出会い意気投合し「変わった女性の役、喋らないし台詞もないので、お遊びで作ろう」と誘い、結果的に本作冒頭シーンを撮影することに。手応えを感じ、本格的な脚本を書こうとしたが、行き当たりばったりの制作過程になってしまう。
長い付き合いのある高橋さんにもオファーした。今回、劇場でも鑑賞しており「普段の彼を知っているので、こんな作品を作る雰囲気はなく、意外でしたね」と高橋さんは話す。「おもしろいな。こんなことを考えてるんだ。 私は全てを理解できたわけではないんですけど、そして、2人で話した時の映像を見せて頂いた。すごく美しいな、なんかこれはあるな」と感じて「参加してみよう」と出演を決めた。
また、高橋さんから小野塚さんを紹介してもらう。河原の哲学者という位置づけであり、長尺の台詞を担っており、小野塚さんは「これをどう入れるか。力づくで入れるしかない」と意気込んだ。「撮っている時点で、この先が出来ていないから、どういう風になるのかさえ分からない。自分が参加してる時点で何もわからない状態」と困惑しながらも「しっかりとしたキャラクターが出来上がっていた」と驚いている。さらに高橋さんから那木慧さんを紹介してもらい、北尾監督は「ひねくれているし、あの役にピッタリだ」と直感し、出演してもらった。
なお、本作の音声は全てアフレコで作られている。北尾監督は「一般的な映画にあるリアリズムから距離をおきたい、と最初にありました。そして、新たな違和感を生み出せる。全てをコントロール出来る」と考え、取り組んでいった。また「違和感を作りたかった。実現するには、様々なシーンで現実とは違うように見えているものを取り込まないといけない」と意識し、別の世界観を導き出すことを試みている。
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・』は、8月5日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
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