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目が見えない方と耳が聴こえない方のコミュニケーションはどのようにすればいいのだろう…『こころの通訳者たち What a Wonderful World』山田礼於監督と平塚千穂子さんを迎え舞台挨拶開催!

2022年11月12日

耳の聴こえない人のための手話を、目の見えない人に“音声ガイド”でどのように伝えたらいいか挑戦する姿を追ったドキュメンタリー『こころの通訳者たち What a Wonderful World』が11月12日(土)より関西の劇場でも公開。初日には、大阪・十三の第七藝術劇場に 山田礼於監督と平塚千穂子さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』は、「手話」を目の見えない人に伝えるため試行錯誤する人たちの姿を捉えたドキュメンタリー。日本で唯一のユニバーサルシアターである東京都北区の映画館シネマ・チュプキ・タバタ。全ての上映作品に音声ガイドと字幕をつけており、耳の聴こえない人に演劇を楽しんでもらおうと奮闘する3人の舞台手話通訳者を記録したドキュメンタリー作品を上映することに。その映像を目の見えない人にも伝えるため、個性豊かなメンバーたちによる「音声ガイド」づくりがスタートする。舞台手話通訳者たちの思いはいつしか音声ガイドづくりのメンバーたちの思いと重なり合い、言語や障碍の有無を超えて心のバトンをつないでいく。監督は『<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』の山田礼於さん。

 

上映後、山田礼於監督とシネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚千穂子さんが登壇。手話通訳の方を携え、本作制作時の雰囲気が伝わってくる舞台挨拶となった。

 

大阪での初上映を迎え、十三の雰囲気を楽しみながら来館した山田監督は、昨年2月、『凛然グッドバイ』という演劇について舞台手話通訳をしている様子を撮ったドキュメンタリーを拝見し、驚いた。「これは映画にしたい」を感化されたが、1回限りの上演だったため、どのようにして撮るか、平塚さんに相談することに。かつて、自身の作品について音声ガイドを作成して頂いた時、丁寧できめ細かな作業に感服していた。そこで「これは手話の話だけど、目の見えない人にも…」と無茶ぶり。平塚さんにとっては、無茶ぶりだとは思わず、初めて舞台手話通訳を見て「通常の手話に比べたら、表情やパフォーマンスの表現力が豊かでエネルギッシュ。本番までに5日間で仕上げていく大変さ等、様々なことが伝わる音声ガイドを考えなくてはならない」と認識。最初に盲導犬ユーザの難波創太さんに音声ガイドなしで聴いてもらい、どれだけの感触が得られるか探っていった。平塚さん自身も目を閉じて音だけを聴いてみたが「役者の台詞がとにかく凄い勢いで聴こえてくる。映像を観てみると、ギャップが大きい」と驚愕し「このギャップを音声ガイドで埋めなくちゃ」と大変さを認識していく。通常のセオリーに基づいた音声ガイドでは伝わらないことが多く、セオリーを変えるため今までとは異なるプロジェクトメンバーを変更した。

 

舞台手話通訳について当初は分からなかった山田監督は「目の見えない方に聴いてもらった時、何を伝えたら良いのか。目の見えない彼らが様々なアイデアを伝えてくれる」と助けられると同時に考えさせられ困ったこともあったが「やっていくうちに分かってきた」と明かす。「手話を見えない方に伝えることは、大きな出来事にぶつかっていくこと」だと分かっていたが、深く考えておらず後悔していた。最初に舞台手話通訳の方を観た時のことを振り返り「役者の動きよい彼等の動きに目を奪われた。舞台の台詞を置き換えている作業ではなく、役者より演技や感情を表現しており、説得力がある」と感心。「音声ガイドは、逆のことを行う」と気づき「通訳の方がやっている動きを伝えても通じない。だからといって、彼女たちがやっている手話をそのまま言葉にしても足りない。言葉や単語の置き換えではなく、感情があり、どのように伝えるか、という翻訳作業なんだな」と痛感した。

 

「聴こえない人達が表情や動きで表現する感情を、声色で表現していくことこそプロフェッショナルな声優のスキルが必要」だと分かった平塚さんは「言葉は限界がある器であり、心を入れないと伝わらない」と説く。そして作業をしていく中で「日本手話は、ろう者にとって自然言語。次第に、コミュニケーションの核になる部分を表現する言語なんだな」と気づかされた。最終的に「人種等を超えていく、形にならないものとして伝わっていくんだな」と驚かされていく。山田監督も「目が見えない方と耳が聴こえない方が一緒にいた時、コミュニケーションするのが難しい。普段の生活では滅多に遭遇しない」と認識し、本作を通して「初めて『手話とは、いったい何だろう』等、今まで考えたこともないことを考え始めたことによってお互いに刺激を受けた。これは素晴らしいことだったんじゃないか」と考えるようになった。

 

大阪での初日を迎え、平塚さんは「あまりにも多層的で情報量が物凄く多くて圧倒されて、感動したんだけど何だったんだろ、何が起きてたんだろ。言葉にならない方が多くて…」とこれまでのお客さんの反応を振り返り「出演者でも3回観てやっと冷静に理解できた」と告白。また「視点を変えて観て頂くと気づくことが沢山あるし、何度でも観て頂ける」と提案。作り手である山田監督さえも「一回観た時は『どういう流れになるんだろうか。自分はどこにいるのか』と分からず、映画が進んでいく。不親切だな」と思ったことがあるが「丁寧に説明し過ぎると、却って混乱して分からなくなるんじゃないかな。ある程度は混乱しながら観て頂けたら」とお願い。また、平塚さんからは『UDCast』方式による視覚障害者用音声ガイドに対応していることも紹介し「さらなる気づきがあるのではないか」と提案してもらった。

 

映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』は、関西では、11月12日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、11月25日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、11月26日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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