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お互いを刺激し合い、多様な作品を作り上げ拍手に沸いた!「ndjc2020」上映開始!植木咲楽監督、木村緩菜監督、志萱大輔監督を迎え舞台挨拶開催!

2021年3月20日

次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2020年度作品が完成し、3月19日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で上映。3月20日(土)には、各作品を手掛けた、植木咲楽監督、木村緩菜監督、志萱大輔監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、平成18年度より始まり、今年度で15年目になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
8月に行われたワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ3人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作。フレッシュな感性と第一級の確かな技術が作り上げた個性豊かな短編映画3作品が上映される。

映画『毎日爆裂クッキング』…

食の情報誌「織る日々」の編集者・相島文は、上司である皆月の執拗なプレッシャーにさらされ、そのストレスで味覚障害になってしまう。調味料をかけて無理やり食事をかき込む日々が続き、限界が間近に迫っていたある時、あこがれのエッセイスト・芳村花代子が文の出版社に打ち合わせにやってくる。花代子は文が担当している連載記事のファンだと言い、その言葉にうれしくなる文だったが……。監督は、京都造形芸術大学映画学科で高橋伴明、福岡芳穂らに映画制作を学び、卒業制作の「カルチェ」がPFFアワード2018入選、第19回TAMA NEW WAVEグランプリ受賞など高い評価を受けた植木咲楽さん。

映画『醒めてまぼろし』…

2009年、冬。自宅から自分の学力で通える最大限に遠い都内の学校に通っている高校2年生の清水あき子。常に睡眠不足の彼女は家では眠ることができず、昔一緒に住んでいた祖母の家に行き、眠りにつく。そんな寝不足の毎日を過ごすあき子は、通学の電車内である人物と出会うが……。監督は、日本映画大学在学中からピンク映画や低予算映画の現場で助監督として働き、卒業後も映画やドラマ、CM、MVなどさまざまな監督のもとで助監督を務めている木村緩菜さん。

映画『窓たち』…

美容師の朝子は、ピザ屋でアルバイトをしている恋人の森と一緒に暮らし始めて5年が経つ。2人の関係は冷め切ったわけでもないが、かといってかつてのキラキラしている状態でもない。そんなある日、ついに父親になる決心がついた森は、朝子に子どもを産んでほしいと告げる。仕事に精を出し、女性関係も清算しようとする森だったが、朝子の表情は晴れない。そして朝子が働く美容室に、森と深い仲だったであろう女性がやって来て……。監督は、「never young beach」などアーティストのミュージックビデオを手がけ、短編映画「春みたいだ」がPFFアワード2017やTAMA NEW WAVE正式コンペティション部門に入選した志萱大輔さん。

 

上映終了時には拍手が起こり、植木監督、木村監督、志萱監督は登壇しながら感慨深く感じていた。

 

自身が監督した作品以外の2作品を観た植木監督は「自分じゃ出来ないような表現を2人ともされているというのが尊敬すべき点だなぁ。勉強にもなります」と感心しながら「お二人とも男女2人を濃密に丁寧に描いているという点では一緒なんですが、幻想やリアリズムを混ぜていくやり方を木村さんと、仕草から丁寧に作っていく志萱さんのやり方は全然違うので、同年代の方がこんな表現が出来るんだな」と驚いた。木村監督は「3作品とも方向性が違い、植木さんはしっかり撮ってお客さんに伝えることをやっている。自分はまだまだ足りていない。志萱さんは、日常を積み重ねていく中で滲み出てくるもの感じられていいなぁ」と謙遜。志萱監督は「2人の作品を観て、好きな台詞がある」と話し、『毎日爆裂クッキング』での「助けは必要?要る?」は「作家の方から滲み出る台詞」だと挙げ、『醒めてまぼろし』は「大事なものを沢山持ち過ぎて、沢山持てる人とは」について「毎回沁みちゃいます」と漏らした。これを受け、植木監督は「助けたいけど、受け取る側が準備していないと押し付けになってしまう、と日々感じていた。そういうことを先回りして考えてくれる人であってほしい」と話す。木村監督は「私自身がそういう風に生きられない。そういうことが出来る人もいる。自分の中で線引きがある」と説く。

 

脚本執筆にあたり、志萱監督は「自分でいつも回しているビデオカメラで、同棲している恋人とどういう会話や素振りを家の中でしているんだろうとビデオカメラを回していた」と明かし「後から見てみると、一言も会話せずに自分だけの通り道を行き来している日常を送っているんだな」と告白。木村監督は「人間が音として言葉を聞いている中で、無意識な状態でも最終的に繋がっていて最後にカタルシスが生まれたらいいな」と台詞を考えており「自分の要素は確実に含まれているが、全てではない」と分析する。『毎日爆裂クッキング』では、渡辺えりさんが大胆に暴れた演技を披露しており、植木監督は「えりさんには、衣装合わせの時から『暴れてください」とお願いしていました」と振り返り「平野レミさんを見ていて『この人おもしろいな』と思い、こういうキャラクターを作ってみたい。そして、今作のような企画を考えていたので、合わせてみました」と明かした。

 

劇場での公開を迎えた現在、植木監督は改めて「自分の意識とは違うところから助けてもらえる形を作品の中で作りきれたのは良かったな」と満足している。木村監督は、千葉県木更津市出身であることを挙げ、海での撮影について「潮干狩りが盛んで、潮干狩り会場で撮っている。遠浅の海で水が上がってくるまでに準備して良きタイミングを狙って撮っています」と説く。本企画は全て35mmフィルム撮影であり、日本映画大学の卒業制作を16mmフィルムで撮った木村監督は「35mmフィルムは初めてだったので、出来上がってみると、自分が好きだった映画達につながった気がして嬉しかった」と振り返る。また、各作品の深層に関する部分について3人監督同士が質問し合い、お客さんと共に作品への理解を深められる時間となった。

 

若手映画作家育成プロジェクト ndjc2020」は、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で3月25日(木)まで公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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