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2019年の香港民主化デモで起きていたことを捉えた『少年たちの時代革命』『理大囲城』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2022年12月29日

(C)Animal Farm Production

 

2019年の香港民主化デモに参加した若者が、自殺しようとする少女を救うため奔走する姿をドキュメンタリータッチに描く『少年たちの時代革命』と、2019年の香港民主化デモの中で、全容が明らかにされていない、香港理工大学が警察に囲まれ要塞となった13日間を、デモ参加として入りこんだ匿名監督たち“香港ドキュメンタリー映画工作者”が至近距離からカメラで捉えた『理大囲城』が1月2日(日)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『少年たちの時代革命』は、2019年の香港民主化デモを背景に、自殺しようとする少女を救うため民間捜索隊を結成した若者たちが奔走する姿を疾走感たっぷりに描いた青春群像劇。17歳の少女YYは親友ジーユーとデモに参加して逮捕される。ジーユーは香港を去ることを決め、孤独と絶望を抱えたYYはSNSにメッセージを残して香港の街へ消える。そのメッセージを見た少年ナムは恋人ベルやデモ仲間ルイスらと捜索隊を結成。時にぶつかり合いながらも、それぞれの思いを胸にYYを救うべく街を駆け巡るが…
キャストには演技経験のない新人を多く起用。本作が初長編となるレックス・レン監督とラム・サム監督がメガホンをとり、コロナ禍のデモ現場でゲリラ撮影を敢行するなど、いまの香港を生きる若者たちをリアルに映し出した。

 

(C)Animal Farm Production

 

(C)Hong Kong Documentary Filmmakers

 

映画『理大囲城』は、2019年の香港民主化デモの中で起きた香港理工大学包囲事件を大学内部から記録したドキュメンタリー。2019年11月、香港。逃亡犯条例改正案反対デモと香港当局の衝突が激化する中、香港理工大学を警察が包囲し、デモ隊と学生たちは要塞と化した大学で13日間にわたる籠城戦を繰り広げた。逮捕されれば暴動罪で懲役10年となる可能性もある中、デモ隊は最後まで戦うか、命懸けで脱出するかという選択を迫られる。自身もデモに参加した匿名の監督たちによる「香港ドキュメンタリー映画工作者」が大学構内でカメラを回し、閉じ込められた人々の視点から、生々しいまでの息遣いと心情を映し出す。香港では上映禁止となったが世界各地の映画祭で上映され、山形国際ドキュメンタリー映画祭2021では最高賞にあたるロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞した。

 

(C)Hong Kong Documentary Filmmakers

 

映画『少年たちの時代革命』は、関西では、1月2日(月)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、1月13日(金)より京都・出町柳の出町座、1月21日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。映画『理大囲城』は、関西では、1月2日(月)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、1月20日(金)より京都・出町柳の出町座、1月28日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

少年たちの時代革命

2019年に始まった、あの出来事からわずか2年足らず(本作の日本公開は2022年12月以降だが、香港で制作されたのは2021年)でこのような臨場感のあるドラマを完成させたことに、熱い情熱と深い執念が伝わってくる。いや、彼らは「作り上げないわけにはいかなかった」と言ったほうがよいのかもしれない。

 

香港の民主化デモを題材にした映画は、2021年から現在までに短編も合わせるといくつかの作品を日本でも観賞する機会があり、特集上映や映画祭などで10本近くの作品を観てきた。本作が他と比べて目を引くのは、他の大半の作品群とは異なりドキュメンタリーではなく劇映画という形式になっていることだろう。映画的なカメラワークで場面が次々と切り替わり、演劇的な演出も多くみられるため、再現ドラマのような質感が強まっていて物語として見やすく鑑賞できることを意識して作られているように感じた。そして、キャストは皆ルックスが良いのでてっきり俳優だと思っていたが、演技未経験者の一般人も多い、とのこと。実際のあのデモに参加・体験した人物たちの表情に嘘はなく、実際にデモが行われている現場でゲリラ撮影をしたというのも頷ける臨場感だ。

 

登場人物たちはみな年若く「未成熟さ・幼稚さ」という意味でも、ジュブナイルな体温を感じたが、本作の中国語の原題は「少年」だと知ると納得がいく。(中国の「少年」の意味は「年少の男性」ではなく「ティーンエージャー前後の”男女”」であり、英語の jeuvnile とほぼ同義である)。また、「May You Stay Forever Young」という英題も切なく響く。願わくば、ずっと無垢で幼くいられたら幸せなのかもしれないけれど、それは決して叶わないだから。

 

日本でも2022年初夏に上映されたドキュメンタリーの秀作『時代革命』と対をなすようなタイトルではあるが、直接には無関係だ。しかし、その『時代革命』や、本作と同時期に公開される『理大囲城』と合わせて観ると、一連の出来事をより詳しく知ることができるのでお勧めしたい。「ドキュメンタリーは退屈そうだ」とか、「香港の歴史はよく知らないので、見るのはハードルが高そう」と思っている方がいたら、そんな人にこそぜひ観てほしい。

fromfromNZ2.0@エヌゼット

 

理大囲城

最近、2019年に香港で起きた民主化デモに関するドキュメンタリーが幾つも制作され日本で公開されてきた。香港の劇場で公開することは到底無理だろうが、近隣の国である日本で公開され拝見できる機会があることは貴重だ。その中で『時代革命』は総決算的な作品にも感じたが、香港理工大学包囲事件に関する伝えられ方は決して多いものではない。或る種の”外側”からの映像ではあった。だが、本作は、自身もデモに参加した匿名の監督たちによる”香港ドキュメンタリー映画工作者”によって大学構内を映し出し、”内側”からの視点によって生々しい姿を捉えた。

 

香港理工大学自体は、世界クラスでみてもトップクラスの大学。地元の学生にとっては合格率3%と香港大学よりも狭き門の超最難関校である。現役の大学生と、これから香港理工大学への進学を望んでいたかもしれない中高生達も参加していた。自分達にとって大切な学びの館に入り守ることによって明確な意思表明を示したが、警察の姿勢は変わらない。結局、屈強な包囲網によって逃げ場がない状態に追い込まれてしまう。大人側の視点は、体制派と反体制派と分かれていたようだが、その中で教員等は複雑な心境で複雑な心境で生徒や学生を救出しようとしていただろうか。カメラで捉えていた者達に可能であればインタビューしてみたい。

 

コロナ禍と共にデモを起こしづらい状況になってしまったが、2020年6月30日に香港国家安全維持法が公布、施行されてしまった。だが、若者達は動きを止めない。映画を以て、時代を変えていこうとする。香港の動向を映し出す作品は今後もしっかりと追いかけていきたい。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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