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5年後や10年後に再び観た時、当時の僕にしか作れなかったと思える作品を作りたい…!『ぜんぶ、ボクのせい』松本優作監督に聞く!

2022年8月14日

母親に会おうと、児童養護施設を抜け出した少年が、母の実状を目の当たりにして絶望するが、新たな出会いを通じ成長していく姿を描く『ぜんぶ、ボクのせい』が全国の劇場で公開中。今回、松本優作監督にインタビューを行った。

 

映画『ぜんぶ、ボクのせい』は、自主制作映画『NOISE ノイズ』で注目を集めた松本優作監督が、それぞれ孤独を抱える男女3人の絆とひとりの少年の成長を描いたドラマ。児童養護施設で母の迎えを待ちながら暮らす優太は、ある日偶然母の居場所を知る。母に会うため施設を抜け出す優太だったが、たどり着いた先で見たのは、同居する男に依存し自堕落な生活を送る母の姿だった。絶望に苛まれ当てもなく海辺を歩く優太は、軽トラックで暮らすホームレスの男・坂本に出会う。坂本は何も聞かず優太を受け入れ、2人はわずかな日銭を稼ぎながら寝食をともにするように。裕福な家庭に生まれながらも居場所がない少女の詩織とも知り合い、心優しい彼女にひかれていく優太だったが…
『とんび』の白鳥晴都さんが主演を務め、『ある船頭の話』の川島鈴遥さんがヒロインの詩織、オダギリジョーさんがホームレスの坂本を演じる。

 

「子供の映画を作りたいなぁ」とずっと考えていた松本監督。「自身の企画書は、自分が凄く好きな製作会社にまず持ち込みたい」という意向があり「映画を観ている時、監督含め、スタッフの名前や製作しているプロダクションを意識していた」と話す。製作会社のスタイルジャムがプロデュースする青山真治監督作品がお気に入りで、偶然にもスタイルジャム代表の甲斐真樹さんと会う機会があり「甲斐さんがプロデュースする映画が凄く好きだった。是非ご一緒したい」と意気込み、企画をまとめプレゼンさせて頂いた。

 

脚本執筆にあたり「最後のシーンはプロット段階から決めていた」と話す松本監督。書き始める前には、児童養護施設で育った友人を通じて取材させてもらっており「取材前は、まだどういう風に描くか決めていなかった。現場を理解する上で施設を見て、スタッフの仕事や、どういった子供が多いか、ということを教えてもらうために伺った」と振り返ると共に「(作中で描かれるような)脱出を試みる子は日常茶飯事」と明かす。

 

主演の白鳥晴都さんとヒロインの川島鈴遥さんはオーディションで採用している。最初から「ラストは主人公の表情で終えたいな」と想定しており、その表情が出来る男の子を探していた。オーディションの相手役を監督自身が担当して台本を読んでおり「晴都君が僕を見た時の目にドキッとした。目の鋭さ、奥に潜むものが刺さった。演技経験はほとんどなかったが、彼にしよう」と決断した。他のキャストの方々は、甲斐プロデューサーと話しながら決めており「オダギリさんは大好きな俳優さん。甲斐プロデューサーと深い繋がりのある方であり、お手紙を書かせて頂いた」と打ち明けた。

 

撮影にあたり、スタッフの方々は青山真治監督の作品に携わってきた方が多く、緊張は隠せない。「色合いやカメラも含め、青山さんの作風が入らざるを得なかった。難しい部分も勿論ありました」と言及しながらも「ベテランのスタッフやキャストの方々に集まって頂けたので、より一層に白鳥君に集中することが出来た」と実感している。沢山の話をして「彼自身が等身大の13歳であることを考えた上で演じて頂いた。彼が演じやすい環境を整えた」と気遣いを心掛けており「泊まり込みの撮影で、親元から離れて1人で宿泊するのは初めてだった。一緒にご飯を食べに行ったり街を散歩したりしながら、何でも言い合えるような関係性にしたかった。一番意識したのは、彼が自由に演じられる環境づくりですね」と説く。「大人に囲まれて1人で頑張っていた」と彼の緊張を受けとめており「僕がしんどい、とは言えないな」を腹を括った。結果として「上手く出来たことも出来なかったことも沢山ありますが…」と漏らしながらも「今回の経験が今後に役に立つ。あの方々となんとか歯を食いしばりながら一緒に出来た」と述べ、制作に対する自信に繋がった。なお、松本監督自身は青山監督に直接お会いしたことがなく「一度お会いしたかった。この作品を甲斐さんと、青山さんに観て頂きたい、と話している中でお亡くなりになられたので…」とショックであり、残念がっている。

 

完成した本作について「自分の云うのも変ですが、まとまっている映画でもないな。様々な意味で勢いを以て作った作品でもある」と謙遜しながらも「5年後や10年後に観た時、当時の僕にしか作れなかったと思える作品を作りたいな。決して、上手く出来ているわけではない、と理解している。その時の僕でしか出来なかったものが入っている」と受けとめていた。また「白鳥君が二十歳になった時、その続きを撮りたいな」と考えており「どういう話になるか分かりませんが、10年後の優太を主役にした作品を白鳥君で撮れるといいなぁ」と模索している。今後も「機会を頂けるのであれば、様々な映画を作っていきたい」と望んでおり「ライフワークとしては、今作のようなテーマをずっと様々なかたちで描きたい。どのような形式になるか不明ですが、僕の中での永遠のテーマではあるので、今回で終わりにせず、根本的な部分では同じなので、自分自身のためにも作っていけたらな」と将来を楽しみしていた。

 

映画『ぜんぶ、ボクのせい』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田で公開中。また、8月19日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都や神戸・三宮のシネ・リーブル神戸でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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