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お人好しな男が底辺YouTuberのチャンネル運営を手助けする姿を通して、人間の欲や本音と建て前を描く『神は見返りを求める』がいよいよ劇場公開!

2022年6月21日

(C)2022「」製作委員会

 

底辺YouTuberに出会ったサラリーマンが、チャンネル運営の手助けをしていく過程を通して、人の“欲”や“本音と建前”を描く『神は見返りを求める』が6月24日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『神は見返りを求める』…

合コンで出会った、イベント会社に勤める田母神と、ユーチューバーのゆりちゃん。再生回数に頭を悩ませるゆりちゃんを不憫に思った田母神は、見返りを求めずに彼女のYouTubeチャンネルを手伝うようになる。それほど人気は出ないながらも、力を合わせて前向きにがんばっていく中で、2人は良きパートナーとなっていく。しかし、あることをきっかけにやさしかった田母神が見返りを求める男に豹変。さらにはゆりちゃんまでもが容姿や振る舞いが別人のようになり、恩を仇で返す女に豹変する。

 

本作は、ムロツヨシさんと岸井ゆきのさん演じる男女の本音と建前や嫉妬と憧れを描き、『空白』『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督オリジナル脚本による異色恋愛ドラマ。田母神役をムロさん、ゆりちゃん役を岸井さんが演じるほか、若葉竜也さん、吉村界人さん、淡梨さん、柳俊太郎さんらが脇を固める。

 

(C)2022「」製作委員会

 

映画『神は見返りを求める』は、6月17日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や七条のT・ジョイ京都、神戸・三宮の kino cinema 神戸国際等で公開。

『空白』に引き続き、吉田恵輔監督は、またしてもとんでもない一作を世に放った。見返りを求める男と恩を仇で返す女の醜い応酬と痛々しさが空虚で気恥ずかしいYouTuber界隈と結びつき、地獄の様相を呈していく。ここまで徹底的にどす黒くて意地悪だと悪意を誇張し過ぎてキャラクター像が浮世離れしそうだが、吉田恵輔監督の手にかかれば、どこか身に覚えを感じずにはいられなくなる。

 

底辺YouTuberのゆりちゃんは合コンで出会った優しい男である田保神さんと共に動画投稿をしていく。ゆりちゃんは何も見返りを求めない田保神さんの親切にとことん甘え続け、田保神さんもまた若干の下心を抱きながらもゆりちゃんに尽くし続ける。しかし、有名YouTuberやデザイナーとのコネクションが出来上がってくると、次第に2人の関係性が狂い出す。そして、抱え込んでいた嫉妬や承認欲求、不平不満がぐちゃぐちゃに混ざり合い、血で血を洗う中傷合戦が幕を開ける。あらゆるものをネタにし、悪目立ちすることで再生回数を稼ぎ出そうとするYouTuber達の空虚さや悪意も相まって目も当てられないぐらい醜悪な内面が文字通り晒されていく。しかも、ムロツヨシさんと岸井ゆきのさんの演技が強烈かつリアルなため、見ていて共感性羞恥に陥ってしまう。

 

そもそも、人間関係とは持ちつ持たれつなものだ。相手の善意に甘えることもあれば、逆に自分が善意を施すこともある。打算的だとしても、円滑に人間関係を築くのに必要なやり取りだ。しかし、相手に対して一方的に理想や欲望を押し付け、敬意や誠意が感じられないと気づけば、二人の関係性は一種にして瓦解する。自分の立場だけは守ろうと相手の悪意や憎悪を煽り、見返りがないと駄々をこね、雑に相手をあしらう。多かれ少なかれ誰もがやってしまったり、やられたりしたことがあるのではないだろうか。

 

さて、地獄のような中傷合戦に突入したゆりちゃんと田母神さんは一体どこに向かうのか、その行く末は是非劇場でご確認してもらいたい。ラストは、同じく吉田恵輔監督作品である『さんかく』を思い出した。もう戻れないほどに拗れ続け、自分達の空虚さをまざまざと見せつけられ、お互いに燃やし尽くしてしまう。しかし、焼け野原から見上げる空はどこまでも青く澄んでいる。突き放しているようで愛を感じさせる絶妙な塩梅だった。

fromマリオン

 

見終わって、途方もない疲労感を感じるとともに、「これは面白い映画が観られた!」と大満足した気持ちになった。

 

見返りを求める側も、求められる側も、傍目にはただただ滑稽だ。しかし、「いるいる、こういう自己満足的な善意を押し売りする人」「こういう恩知らずな人って、嫌だよねー」などと、アハハと笑いながら他人事として見るには、少し、いや凄く己の身にも心当たりがありすぎる。見返りって何だろう、それを求めるとはどういうことだろう、と自省と冷や汗をこめて反芻したくならざるを得ず、タイトルが二重にも三重にも皮肉に響く。

 

キャスティングが絶妙すぎて、この組み合わせ以外では実現不可能だったとしか思えない。ひたすらお人よしで良い人のムロツヨシさん、痛々しいほど地味で純朴なOLの岸井ゆきのさん、それぞれのベタに象徴的なキャラクタが豹変する様に背筋が凍る。

 

中盤以降の暴走の加速が激しいため、これは暴力的で凄惨なバッドエンドになるかも!?と身構えてしまったたが、ちゃんと人の心の揺れ動きが細やかに描かれた、深呼吸して終われる幕引きだった。そのためか、決してハッピーなエンディングではないのだけれど鑑賞後の気分は悪くなく、ある種の清々しさすら感じた。こんなピリピリとして笑えない題材を、ギリギリのラインでエンタメとしても成立させている吉田恵輔監督の手腕は見事で、『ヒメアノ~ル』や『空白』で見せた極限の恐怖とラストの虚無感を思い出したりもした。この映画を観て、「うわぁ、これ私の話じゃん。。。」と思って居心地が悪くなってしまった人は、落ち込まなくても大丈夫。あの二人の心情に感情移入することが出来るあなたは、きっと優しい人だから。

fromNZ2.0@エヌゼット

 

性格が豹変した”見返りを求める男”に注目されがちかもしれないが、性格が豹変した”恩を仇で返す女”にも注目したい。本作は大SNS時代には切っても切り離すことのできない「炎上」を様々な角度で描く。

 

底辺YouTuberを演じる岸井ゆきのさんの直向きな努力と素直な笑顔に心を奪われた前半、彼女の努力の向かう先にYouTubeの闇が徐々に垣間見えてくる恐怖感が忘れられない。軽視されがちなYouTubeでの成功をリアルに描き、コラボで増えたファンの熱狂度合いの薄さ等も生々しく見えてくる。吉田監督の撮る人物たちの人間臭さが好きな人には特におすすめできる一作、吉田作品に共通して感じるのが、ストーカーの表現の巧妙さだ。元を辿れば『なま夏』から始まり、前作の『空白』に至るまで、種類は違えど、吉田作品にはストーカー表現が作中とても自然なほど盛り込まれてくる。本作もまた、豹変という言葉を使ってはいるが、周りから神と崇められた男がストーカーになるまでをスムーズに描いている。「ストーカーなんて」と馬鹿にしている自分こそ、気づけば誰かを追いつめたり、脅迫する側になってしまうかもしれない。他人と関わり、相手に情を持つあまり「見捨てたくない」と思う心が、ストーカー行為に直結してしまうかもしれないな。

fromねむひら

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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