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本人達の辛さや大変さをフォローアップする周りの人達に観て頂きたい…『マイライフ、ママライフ』亀山睦実監督に聞く!

2022年4月6日

子供を持つ事に悩む女性や、子育てをめぐる夫との軋轢などをリアルに描く『マイライフ、ママライフ』が関西の劇場でも4月9日(土)から公開。今回、亀山睦実監督にインタビューを行った。

 

映画『マイライフ、ママライフ』は、現代女性ならではの生きづらさを抱える2人の女性の葛藤と希望を描き、2020年の第14回田辺・弁慶映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞した長編作品。仕事に熱中する日々を送る綾は、結婚して3年になる夫から、そろそろ子どもが欲しいと言われ辟易としてしまう。彼女には、妊娠・出産に勇気が持てないある理由があった。一方、2人の子どもを育てる沙織は、本当にやりたい仕事を諦めて事務職で働いている。ある秋、綾は「家族留学」という家族体験プログラムのイベント運営を任され、沙織の家族と出会う。
監督・脚本は、映画・ドラマ・広告など幅広いメディアで企画・演出を担ってきた亀山睦実さん。

 

29歳の頃に平成の時代が終わる経験をした亀山監督。「私の同世代である平成生まれの人達の話を書きたいな」と思い、企画を考えて実現した本作。亀山さんが歩んできた人生とは違った方達であるため、まずは、登場人物達と近い人生を送っている方にお話を伺い、どういう生活を送り、どのような時にどのようなトラブルが起こるのか、とリサーチしてキャラクターを深堀した上でプロットや脚本に落とし込んでいった。男性像に感しては、取材で直接伺う機会はなかったですが「基本的に、女性側から聞いたイメージで書いたところが大半ではあります。女性側から見ると、こういう夫やパパに見えているよ、ということかな」と説く。そして、お母さん達から「この一言が凄く嫌だった」「こういう傷を持っていた時に心無い一言が残っている」といったエピソードを盛り込んだ。

 

キャスティングにあたり、鉢嶺杏奈さんとは、日本大学芸術学部映画学科の同期生であり「大学の時から彼女のキャラクターを存じていた。卒業後、『世界ふしぎ発見!』でミステリーハンターとして活躍しており、体当たりな地域に行かれることが多かったので、突然お母さん役をお願いしても演じられそうだ」と直感。尾花貴絵さんは、プロデューサーと相談し、候補を出し合っていく中で「彼女はエレガントで優しく、大内綾というキャラクターに近い」と感じ、直接オファーした。柳英里紗さんは、尾花さんとの会話シーンで人生の転機を迎える女性達が抱える本音の部分を演じており「柳さん自身が女性として生きる中での辛さがある中で、戦っている女性像を演じて頂いた」と感謝している。沙織の子ども役を演じた多田真翔君については、台詞を覚えてもらうことしか伝えておらず「私は特に何も言っていない。私と話すよりも、共演する鉢嶺さんや尾花さんと一緒の時間を過ごしてもらう方が演じやすくなる」と思い「とにかく本番以外の休憩中や食事中も俳優さん同士で一緒に過ごしてもらうようにしていました。2日間の撮影でしたが、初日は緊張していたかもしれないですが、2日目は緊張が解けてエネルギー全開でした」と振り返った。

 

8日間という短期間の撮影となり「その中でお子さんがいるし、ロケーションも変わっていくので、シーンを削った箇所もあり、限られた中で撮らなきゃいけない」と大変な環境に。これまでの経験から「スタッフや監督が傷ついてしまうことがあり、避けたかった」と心配していたが「普段からの映像制作の仕事で出会ってきた温厚で穏やかな方々とご一緒させて頂いたので、特別なトラブルもなく時間がない中でも丁寧に撮って頂けた。良いメンバーだった」と安堵している。撮影の後半では、柳さんと尾花さんによる大事なシーンを演じて頂いており「カットバックを重ねていく。片方の俳優にカメラを向けて撮っている時、もう片方で感情を受け取ってしまった。撮られている時の演技と、撮られていない時の演技はこんな違うんだな」と興味深く、印象に残っていた。

 

撮影を終えた後、編集で劇伴の音楽が入り、フォーリーサウンドが加えられていくが「映画は3回作られる、と云われる。脚本を書く時と撮影する時と編集段階。その中で一番見えるのは一番最後。最後はOKかNGを出しながら進めている」と説き「どういう作品になるか、最後の最後まで掴めない。最後、完成した一本の作品として改めて観た時に、こういうものだったのか」と腑に落ちている。

 

「最終的にお客様に観て頂いて、反応があって完成だ」と感じており、昨年の「田辺・弁慶映画祭セレクション2021」での上映時には様々な感想を頂いた。女性のお客さんが多かったが、男性のお客さんからも「結婚前の方から、勉強になりました」「こういうことがこの先に起こるかもしれないんだな」「人生の予習となる作品だった」という声を頂いた。また、子育てが落ち着いた男性では「こうしておけば良かった」という声も。女性のお客さんからは、それぞれのキャラクターに自身を載せて、感想を頂くことが多かったが「子育て真っ最中の方は劇場に足を運ぶことは難しい」と感じており「当事者の方々に向けて書いた話ではありますが、その本人達の辛さや大変さをフォローアップするのは周りの人なので、周りの人達に観て頂くのは間違っていない」と確信している。

 

なお、日本映画の今を描くドキュメンタリー映画『世界で戦うフィルムたち』が 今冬の公開を予定している亀山監督は「根本には、女性や子供といった比較的立場の弱い人達の幸福度を上げていきたい思いがある。なるべく寄り添った目線のある作品にしたい」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『マイライフ、ママライフ』は、4月9日(土)より大阪・十三のシアターセブン、4月22日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。なお、4月9日(土)にはシアターセブンに亀山監督と安田真奈監督を迎えトークショー、4月23日(土)には京都みなみ会館に亀山監督と水野勝さんを迎え舞台挨拶の開催を予定している。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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