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魅力的なキャラクターをハツラツと演じた小野莉奈さんがスクリーンに映っている…『POP!』小村昌士監督に聞く!

2021年12月16日

19歳の主人公から見た、大人の社会の矛盾や不寛容さを、シニカルな笑いと共に描いている『POP!』が全国の劇場で12月17日(金)から公開。今回、小村昌士監督にインタビューを行った。

 

映画『POP!』は、大人と社会の矛盾をシニカルな笑いとともに描いたコメディ。地方テレビ局のチャリティー番組でオフィシャルサポーターを務める19歳の柏倉リン。番組内ではハート型の被り物をし、「世界平和」をうたって募金を呼びかけているものの、実生活では周りの大人たちと馬が合わず、バイト先でも上手くいかないことばかり。社会の欺瞞と不寛容さにいら立ちを募らせていくリンは、そうした日々の中で二十歳という人生の節目を迎えることになるが…

 

「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」のコンペティション部門向け作品として、プロデューサーの辻村草太さんからお誘い頂いた小村監督。まず小野莉奈さんの主演が決まり、音楽は監督がファンであるピートメイカーのAru-2さんがすぐに思い浮かんだ。「彼のような音楽が流れている映画はあまりないかな。あの音楽が劇場で流れている映画を作りたい」と着想していく。そもそも、小野莉奈さん主演の『アルプススタンドのはしの方』が2019年の夏に劇場公開される前に始まった企画であり「小野さんがデビューしたドラマ(セシルのもくろみスピンオフドラマ「セシルボーイズ」 第4話)に僕が出演していた。一瞬だけ共演しており縁を感じた。僕の長編映画監督デビュー作品に小野さんに出演して頂きたかった」と明かした。

 

小野さんを主人公にした作品を考えていく中で「当時の小野さんの年齢である19歳の女性を理解出来なかったことがあった」と思い返し「唯一の接点として、主人公の年齢設定は小野さんと同じ19歳にしよう」と着想。周囲にいた女性に「19歳の頃はどんな感じだったか」と聞いてみたら、ある方が「20歳になったら終わると思っていた」と反応があり「ネガティブな感情を成人を迎える時に感じる人もいるんだ」と新鮮に感じた。そこからストーリーを膨らませ、監督がやってみたかったことや要素を加えていく。主人公は、チャリティー番組でオフィシャルサポーターを務めている設定だが「チャリティ自体に違和感があった。裕福な国だからこそ行われていること。慈善活動に参加したことがなく、チャリティは怖い言葉だ」と持論を展開。とはいえ「間違ってはいないし、悪いことではない。だが、プレッシャーのかかる言葉。小野さんに背負ってもらったら困るんじゃないか」と思い浮かんでいく。また、テレビ番組のセットを組むことや裏側を見せることに興味を持っており、大胆に作り込んだ。

 

また、19歳の主人公がチャリティー番組だけでは生活できないと考え「何かしらのバイトはしているだろう。人目につかないようなバイトじゃないといけない」という設定に。19歳から20歳になることがテーマであり「車を要素として映画の中で大きく取り入れている。駐車場バイトには意味を持たせています」と説明する。「人気のない駐車場でアルバイトしている、と云えば打算的になってしまう。とはいえ、駐車場バイトをしているキャラクターが登場する映画はあまりない。普通は話にならないし扱わない」と捉え「駐車場なら容易に撮影許可も取れそうだ」と狙いをつけた。だが、意外とロケーション選びは難航し、ギリギリでロケ地を見つけていく。さらに、主人公の凝り固まった部分を一発で別の方向に道が開く手段を検討し「あの雰囲気の中に謎の爆弾魔が登場したら観ている人もビックリする。映画の展開を壊すようなものを作りたかった」と異様なストーリー展開にさせていった。出来上がった脚本に対して、キャストの皆さんは総じて「わからない。どうしたらいいですか」という反応を受けてしまう。だが「変な世界線はありますが、それぞれの正義感を以て話しているキャラクター達に対しての疑問はなく、彼等が話していることはズレてはいないかなぁ」と自信を持ち、小野さんとは事前に本読みをしながら念入りにキャラクターを作っていった。

 

本作は、小野さん演じる柏倉リンがほぼ全シーンに映っており「小野さんがどれだけ魅力的にキャラクターを演じられるか勝負になる」と受けとめ、撮影では入念に気を遣っている。「感情を優先した演技ではなく、見え方や表情や間の取り方を念入りに小野さんとやらせて頂いた。目の動きについても細かく指示させてもらった」と述べ「小野さんが理解してくれなかったかもしれないが、予想を超える演技を見せてもらった。現場では、小野さんが演じる柏倉リンが次々に出来上がっていった」と信頼を寄せていく。なお、猛暑の駐車場での撮影は困難を極めており「暑い中でカットを切り替える際には全ての機材を動かすのが大変だった。撮影初日から3日間は駐車場での撮影だった」と大変な思いをしながらも「後半はスタジオ内での撮影だったので、ようやく撮影の楽しさに気づけた」と話しながら、初めての長編映画撮影をやり遂げた。

 

編集作業では、改めて「小野さんがハツラツと演じていて、柏倉リンとして魅力的に画面に映っている」と気づき「小野さんで良かったな。助けられていた」と実感。加えて、音楽制作の作業もしており「撮影中はどこにどの曲を使うか決まっていなかった。編集中に音楽をつけていく中で、イケるな」と自信が持てた。なお、タイトルの意味は本編最後に明かされるが「弾ける、爆弾の意味も含めている。それだけでも十分だけど、何らかの略にしたかった。あの意味でも伝わることが分かりました。好きな洋楽で略語を表している楽曲への憧れもあります」と説く。「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」上映時には「小野さんの魅力が伝わった印象がある。小野さんがスベって見えていたらショックだったので、小野さんが気に入ってくれているのが嬉しかった」と手ごたえを感じており「関係者試写では反応を掴めておらず不安だった。お客さんと観て、やっと”作って良かったな”と思えた。完成したんだ」と感慨深い。

 

映画『POP!』は、全国の劇場で12月17日(金)から公開。関西では、12月17日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、2022年1月14日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、1月15日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。なお、12月25日(土)には、シネ・リーブル梅田に小村昌士監督を迎え舞台挨拶を開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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