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葛藤を抱えていることが伝わってくる萩原みのりさんの眼力や表情での表現力は素晴らしい…!『成れの果て』宮岡太郎監督に聞く!

2021年12月15日

故郷に住む姉の婚約をきっかけに、帰郷した妹の言動や行動が過去の事件の真相や周囲の人々の本性をあぶりだしていく様を描く『成れの果て』が関西の劇場でも12月17日(金)から公開。今回、宮岡太郎監督にインタビューを行った。

 

映画『成れの果て』は、劇作家で映像作家のマキタカズオミさん主宰の劇団「elePHANTMoon」が2009年に上演した戯曲を、『転がるビー玉』の萩原みのりさん主演で映画化したヒューマンドラマ。東京でファッションデザイナーの卵として暮らす小夜のもとに、故郷で暮らす姉あすみから連絡が入る。婚約が決まったという姉に祝福の言葉をおくる小夜だったが、その相手は、8年前に小夜の心に大きな傷を残した事件に関わった布施野だった。居ても立ってもいられず友人エイゴを連れて帰郷した小夜は布施野と8年ぶりに再会し、順風満帆な人生を歩む彼にいらだちを募らせる。そして小夜の出現をきっかけに、あすみに思いを寄せる幼なじみや事件現場に居合わせた布施野の友人ら、それぞれ思惑を抱える人々の業があぶり出されていく。共演は『千と千尋の神隠し』の主人公である千尋の声で知られる柊瑠美さん、『おんなのこきらい』の木口健太さん、『カメラを止めるな!』の秋山ゆずきさん。

 

マキタカズオミさん主宰の劇団「elePHANTMoon」による舞台を鑑賞した宮岡監督は言知れない興奮がずっと残っていた。マキタさんに映画化について相談してみると「是非やりましょう」と即答を受け、戯曲を映画化するにあたり、台本を頂いて読み返してみたが「劇場で感じた興奮を同じように味わった。このシナリオのままで作りたい」と決意する。中盤以降の展開はほとんど変えておらず「姉妹の関係性は前半で強めたくて、シーンを足しています。また、舞台版では登場人物が2人多いが、ソリッドにタイトにまとめて密度の高いものにしたかった。登場人物やストーリーの柱を前半から中盤にかけて詰め込むという変更は施しています」と明かした。

 

主演の萩原みのりさんについて、『神さまの言うとおり』で演じた役が印象に残っており、個人的には「凄い好きな女優さん。今の20代前半の若手で演技が上手な方達の中の1人」と大いに気に入っている。本作では、主人公の役柄が大事なポイントになってくる作品である、と認識しており「過去を映像に起こさず表情だけで伝える」というチャレンジをしてみたく「眼力や表情での表現力は萩原さんが素晴らしい。一つ一つの目線のコントロールで彼女が葛藤を抱えていることが伝わってくる」と決定打となった。

 

さらに、演技が上手い俳優達をキャスティングしており「少演劇界では活躍している方で、芝居を観て印象に残っている方」と説く。主人公のお姉さん役である柊瑠美さんについて「私と同い年で『千と千尋の神隠し』の千尋役で印象に残っている。舞台で観て声の出し方が知的で魅力的な演技をする女優さんになっている。今回のおっとりしているけど裏に恐怖を抱えている役柄にハマる」と直感し「チャレンジでしたが、想像以上に演技が鋭く素晴らしい女優さん」と称えた。後藤剛範さんが演じた主人公の友人役は舞台版では二人存在していたが「タイトにして1人で、説得力ある演技をしてもらった」と話す。秋山ゆずきさんは声が決め手となっており「ムカつく声で、延々とまくし立てられる。声がピッタリ」だと発見。木口健太さんについては『おんなのこきらい』を観ており「醸し出す罪深さを感じた。言語化できないものがある」と独特の雰囲気を素敵に感じている。

 

クランクイン前には入念に打ち合わせを重ねて役作りをしており「過去が重要になる作品。それぞれのキャラクターが生まれ、どのように育って生きてきたのか、プロフィールを作成した。そのプロフィールを話していく中でイメージとの擦り合わせをして役作りをしてもらっていった」と明かす。「俳優さんの理解力が自分の想像を超えているところばかり」と役作りの成果を実感しており、撮影していく中で芝居を楽しんでみていた。また、技術面においても「撮影と照明が素晴らしく機能しており、想像以上に素晴らしい画を撮って下さった」と絶賛している。本作について「負の感情がぶつかり合う話なので、現場の雰囲気が沈静化していくようなところは若干の怖さがある」を感じていたが「秋山ゆづきさん演じるエリが乗り込んできてからのシーンは1度だけ撮るならテンションはリアルなものになるが、別のカメラアングルからのテイクを重ねていくので、場の空気を朗らかにさせていた」と助けられた。クライマックスシーンの撮影では、時間が深夜にまで及んだが「頑張って撮っていた。萩原みのりさんの芝居は一連で撮っている。リアリティが凄いことになっている。一生に一回しか出てこない生の唯一の感情だった」と言葉にし難い達成感がある。

 

完成した作品については、同じ業界で仕事をしている宮岡監督のパートナーに観てもらっており「コレはいける、コレは良いよ」と云ってもらい、初めて安堵。また周囲の方々からも「濃密な人間ドラマを読まされた感覚になる。決して気持ちよくはないけど、惹き込まれてしまった」という感想を多く受け取り「人間同士の生の感情のぶつかり合いを一番描きたかったので良かったな」と感慨深い。シリアスな作品ではあるが、これから観るお客さんに向けて「俳優が役をリアルに感じてぶつけ合うことでどれだけ感情が湧き上がってくるか体感してほしいな」とメッセージを送っており、さらなる反応を楽しみにしている。

 

映画『成れの果て』は、関西では、12月17日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、2022年1月14日(金)より京都・出町柳の出町座で公開。

『成れの果て』というタイトルが示すのは、萩原みのりさん演じる小夜か、もしくは小夜を取り巻く周囲の人間達か、はたまた”場所”だろうか。退廃的な雰囲気が漂よう田舎町、この世の終わりともいえる閉鎖的なコミュニティ。悲惨な過去と、アップデートされていない人間の価値観、救いのない世界は、筆舌に尽くしがたい苦痛を小夜に与え続ける。明確な回想シーンを映像として挟まないのが、本作の独特な手法であり、新鮮でもある部分だ。観客である我々は、小夜の話を頼りに事件を想像することしか出来ず、第三者の立場で常に考えさせられる。小夜の行動心理を紐解いていく物語後半の彼女の選択は、心に何を描いていただろうか。あらゆる人物の内面が漏れ出すラスト、思いもしなかった問題が浮き彫りになる。投げかけられた目の前の状況に呆然とするしかなく、静かなエンドロールが余韻とは形容できないほど、心に重くのしかかってきてしまう。緊張感の持続は、しばらく続いたままだった…

fromねむひら

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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