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一人一人が必死に生きていこうとする姿を見て、誰かに自分を重ね合わせる瞬間があれば…『CHAIN/チェイン』福岡芳穂監督に聞く!

2021年12月9日

幕末と現代の風景が混在する京都を舞台に、新選組と御陵衛士が衝突した油小路の変と、その時代を生きた市井の人々を描く『CHAIN/チェイン』が関西の劇場でも12月10日(金)から公開。今回、福岡芳穂監督にインタビューを行った。

 

映画『CHAIN/チェイン』は、京都芸術大学映画学科の学生とプロの映画スタッフ、キャストが一丸となり劇場公開映画を製作するプロジェクト「北白川派」の作品で、新選組終焉の象徴とも言われる油小路の変を背景に、激動の時代を生きた無名の人々の生き様を描いた群像劇。幕末の京都。鎖国により国際的に長く孤立状態にあった日本を変えるため、若者たちはさまざまな主義主張をぶつけ合い、血を流し争っていた。会津藩を脱藩した無名浪士の山川桜七郎は、ある事件をきっかけに近藤勇率いる新選組と伊東甲子太郎率いる御陵衛士の対立に巻き込まれる。主人公・山川桜七郎役を映画初主演となる大人計画の上川周作が演じる。「5万回切られた男」の異名で知られ、数多くの時代劇で活躍した俳優・福本清三の最後の出演作となった。

 

油小路の変について描いた時代劇をつくるにあたり「こんな話があったんだぁ、へぇ~」と福岡監督自身も感じていたが、本作は、学生と一緒につくるにあたり「今の我々と何が違うんだ。過去の出来事として受けとめるのではなく、過去の人から見た100年後、今の我々から見た100年前をイメージして、全部繋げられないだろうか」と検討。「目に見える形で、時代の繋がりを感じられないか」と皆で考えながら取り組んでいった。

 

幕末の京都について「混沌としており多様性があるにも関わらず、誰かが社会を動かしている。同時に存在している一般の人々が切り離されていたような気がする。現代の社会と似通っているところもあるんじゃないか」と気づき「その中で捨て去られたものがある気がした。現代も同じ。僕ら自身も見て見ぬふりをしているところもあるんじゃないか。それらを掘り出してみよう」と意識させている。「新撰組自体も様々な思想がある中で、社会の中で利用されていく。渦中の当人達にとってはどうだったのか」と考えていく中で、油小路の変に辿り着き、本作に取り入れた。

 

「北白川派」というプロジェクトは、京都芸術大学の学生や卒業生達が中心となって取り組んでいる。特に卒業して活躍し始めた上川周作さんや土居志央梨さんや辻凪子さんについて「もっと様々な役が出来る。さらに活躍する場を拡げてほしい」と本作にキャスティングしている。シナリオを港岳彦さんが作っていく段階でイメージがあったが「登場人物が多いので、どこを卒業生や在学生に、どこをプロにお願いするべきか」と検討。プロの俳優等に、学生と作っていくことを理解頂ける方々が必要であると認識しており、今回は高岡蒼佑さんや和田光沙さんや渋川清彦さん、大西信満さんや山本浩司さんといった皆さんに理解して頂き、共に制作していった。

 

 

撮影は、東映京都撮影所と京都市内各地で敢行。撮影については、まずプロデューサーの椎井友紀子さんが話を通しており「撮影所には『時代劇を撮ることに関して、若い人に取り組んで伝えていきたい』と仰って頂いた。着物を着たことがなく、所作が分からない学生もいる。毎回時間をかけてゼロから教えて頂いた」と大変にお世話になっており、監督自身も勉強になった。寺社での撮影も協力して頂いており「学生達が何十件も飛び込みでお願いした。プロがお願いしても断られる場所が学生が真剣に何度も訪ねてお願いしていった。その誠意が伝わって了承して頂いた」と明かす。「京都は学生に優しい一面がある」と改めて実感し「街中のロケも学生が誠意を尽くして何度もお願いに伺ったことで撮影出来ました。京都の皆さんのご協力がないとこの映画は出来なかった」と感謝している。

 

脚本づくりでは、学生一人一人にキャラクターを作らせており、それらを組み合わせていくプロセスを実施。さらに演出部が加わりリサーチを重ね、作品として一体化していった。油小路の変を題材にするのは決まっていたが「現代の部分をどのように組み合わせていくか、撮影に入るギリギリまで考えていった。現場に入っても、どこまで現代を入れ込んでいくと、映画がおもしろくなるんだろう、と学生スタッフやプロのスタッフとも話し合いを重ねました」と説く。撮影後の編集段階でもシーンを入れ替えており「どうすればチャレンジングな映画になるんだろうか」と迷いながら仕上げていった。完成した作品を披露してみると、当初は「人物が多いので、人間関係や状況設定を追いかけるのが大変」という反応を受け取ってしまう。更なる編集も検討したが「途中からは、説明していく映画でもないのかな」と考え直し「いわば誰が誰だか分からない状況の中で、一人一人が必死に生きていこうとする姿を見て頂いて、誰かに自分を重ね合わせる瞬間があったらいいな」と受けとめている。

 

本作は、「北白川派」第8弾作品となるが、制作し続けてきたことは大変な道のりがあった。大学の支援だけでは成立しないものであり「過去の作品がヒットしていないので、支援して頂いた方にお返しできていない。この先、どうする?やった方がいいと思うが、どういう形で出来るのか今考え直そうという時期です」と告白。「教員である我々が順番に監督しているが、本来は卒業生や在校生が監督して我々がサポートすることを想定していた」と述べ「最近では卒業生である俳優が活躍してきて、監督もようやく活躍し出してきた。ようやく彼等にバドンを繋げる機会が出てきそう。新しい北白川派がこれから出来そうかな」と期待を寄せている。

 

映画『CHAIN/チェイン』は、関西では、12月10日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田や京都・烏丸の京都シネマ、12月31日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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