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立派な人が登場するわけでもない。普通に生きている人の姿を見てもらいたい…『ラプソディ オブ colors』佐藤隆之監督に聞く!

2021年9月23日

(C)office + studio T.P.S

 

障がいを持った人や、そうでない人たちが集まったバリアフリー社会人サークル“colors”を追ったドキュメンタリー『ラプソディ オブ colors』が9月25日(土)より関西の劇場でも公開。今回、佐藤隆之監督にインタビューを行った。

 

映画『ラプソディ オブ colors』は、東京都大田区を拠点に活動するバリアフリー社会人サークル「colors」の500日間を追ったドキュメンタリー。様々な障害のある人、ない人、グレーな人たちが集まるcolorsは、毎月10本ものイベントを開催している。その内容は大学教授による講習や音楽フェス、飲み会など多岐にわたり、年間のべ800人が来場する。自身も障害者でDET(障害平等研修)のトップファシリテーターとして活躍するcolors代表の石川悧々さんと、地域の障害福祉の立役者であるNPO法人理事長である中村和利さんのもとには、個性豊かな人たちが次から次へと集まってくる。そんなある日、colorsが入居する建物の取り壊しが決まり、閉鎖の危機へと追い込まれてしまう。

 

シェアハウス&スペース「Transit Yard」の2階に住んでいた写真家が佐藤監督の前作『kapiwとapappo~アイヌの姉妹の物語~』を上映したいと企画。佐藤監督は喜んでイベントスペース「TransitCafe Colors」に初めて伺い「スペースがおもしろい。そして主催者がおもしろい」と興味津々。Colorsでの撮影を始めていった。計算的にならず行き当たりばったりで撮っていっており「個人映画の類なので、この手法が合っている」と受けとめている。画を決め打ちすることが最善とは考えておらず「映像的には狙っていない。ライブ感、リアルな空気感を伝えられれば」と彼等に寄り添うようにカメラを向けていった。本作では、誰が観ても感動できるような作品とは逆のことをやろうとしている。「立派な人が登場するわけでもない。普通に生きている人の姿を見てもらいたい」と願っており、監督自身も観たかった。

 

Colorsでは、1ヶ月に10本もイベントを開催しており、全てをフォロー出来ない。LIVEやおもしろそうなイベントに絞っていったが、通い続けていくことは大変で「自宅からは車で1時間程度かかる場所でだった。早朝や夜中も撮影しており、年齢的にも辛かった」と告白。海でのバーベキューは4回程度伺っており「準備段階から撮影している。集まってくる方の電車内でも様子も撮影し、それらを両立させるのは大変だった。妻にも手伝ってもらった」と振り返りながらも「でも、僕自身もワクワクして楽しかったですよ」と楽しそうに話した。また、LIVEの出演者が持ち時間が足りず歌いきれなくて泣きながら駅に走り出すシーンがあり「図らずも感動しちゃいましたね。心に迫ってくるものがありましたね」と思い返す。

 

撮影を続けていく中で、ある日、colorsが入居する建物の取り壊しが決まってしまう。監督自身も、作品が動くと感じており「それまでは、”何か大きな動きがあるだろう”と思ってダラダラ撮っていた。だが”いつまで撮影するのか”、”どうやって終わればいいのか”と迷いがあった。登場人物にとっては不幸なことだが、映画になりそうだな」と確信。偶然のようにも思えたが「あの時期に無くなってしまうこと。中村さんが活動してきたこと、石川さんと中村さんの関係が終わってしまうことは、ある意味では、必然で運命的な出来事だったのかな。現実はこういうことだよな」とリアリティを感じた。

 

最終的に、撮影素材は1000時間以上に及んだ。だが、苦渋で断腸の思いでカットした場所はなく「編集に1年程度を要したが、本編に入れられない映像もある。1年間かけて少しずつ省いていき、順当に出来上がった」と説く。とはいえ、本作のラストに関する映像については「撮りたくても撮れなかったことも少しあった。嫌がっているところを撮らないといけないが。ひょっとしたら撮れていたら印象が変わったかな」と後悔の念もある。

 

現在から3年前の出来事を映し出す本作。出来上がった作品を観て「人との関係性はかなり変化している。熱い雰囲気は、もはや懐かしい。この1,2年では許されない一面がある」と現在の状況を鑑みながらも「人間が生きていく中で、1人では成立しない。関係性の中で自分が形作られていることが確認できる」と身を以て実感した。そして、現在は、東京在住の外国人を捉えたドキュメンタリー企画を軌道に乗せる前段階にいる。更には、以前に書いた劇映画のシナリオがあり「マイノリティに関わる物語。なんとか映画にしたくて、シナリオをリライトしています」と明かした。

 

なお、本作の上映にあたり、バリアフリー上映については監督自身も意識しており「アプリを使ったバリアフリー上映があまり活用されていない。封切の劇場さんでも積極的に活用されていない。こういう映画なので障碍がある方にも観てもらいたい。観に来てくれるはずだ」と積極的に宣伝している。「劇場さんにもお客さんにも負担がかからないシステムがあるのに普及していない。システムを整えても1週間のうちに1人か2人程度しか使う人がいなかったこともあり、おざなりになってしまう」と現状を嘆くが「点字ブロックや階段昇降機は毎日使われなくとも必ず備えられて当然。映画業界も常態化してほしいな。こういう作品を上映してくれるミニシアターが苦境にいるので、公が応援しないといけない」と訴えた。

 

映画『ラプソディ オブ colors』は、関西では、9月25日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、10月9日(土)より神戸・元町の元町映画館、10月15日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。なお、9月25日(土)には、シネ・ヌーヴォで上映後に舞台挨拶が開催される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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