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自分の感情を決め、誰にも左右されないで生きていってほしい…『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵さんと川合空さんと川崎僚監督を迎え舞台挨拶開催!

2021年4月10日

子供のいない夫婦に卵子を提供する“エッグドナー”に志願した独身主義者の女性と、同性愛者の従姉妹との奇妙な共同生活を描き出す『Eggs 選ばれたい私たち』が関西の劇場でも公開中。4月10日(土)には、大阪・梅田のテアトル梅田に​寺坂光恵さんと川合空さんと川崎僚監督を迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『Eggs 選ばれたい私たち』は、結婚や出産を希望していない30歳目前の女性と、レズビアンの女性という対照的な2人の人物を通して、社会から求められる女性像と実像のズレに悩みながら、それでも母になりたいと願う人々の姿を描いた人間ドラマ。子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)。独身主義者の純子は、ドナー登録説明会で従姉妹の葵に再会し、彼女がレズビアンであることを知る。恋人に家を追い出された葵は、純子の家に転がり込み、2人の少し奇妙な共同生活がスタートする。純子と葵は、どちらが選ばれるかという期待と不安を感じながらも、遺伝子上の母になりたいという同じ目的に向かって、ドナーに選ばれるために、新たな生活を始めようとするのが…

 

上映後、​寺坂光恵さんと川合空さんと川崎僚監督が登壇。テアトル新宿に続きテアトル梅田での上映に感慨深く挨拶していった。

 

30歳を迎える前に「私は結婚しないし子供も産まないぞ」と決め込んでいた時期があった川崎監督。映画に没頭していた時期に、大学時代の友達や両親を含めた社会全体から「結婚してほしい。子供を産むべきなんだ、20代のうちにやるべきなんだ」と皆が自身を気遣い伝えてくれることがプレッシャーで苦しかった。当時、卵子提供を受けてお子さんを育てている夫婦に関する新聞記事を拝見し「新しい家族の形だな」と好意的に受けとめていたが、インターネット上のコメント欄では「血が繋がっていないじゃないか」とバッシングの嵐にショックを受けてしまう。「なぜ御本人達が納得し選択して誰も不幸になっていないのに、赤の他人が顔も名前も出さないで傷つけるようなことをするんだろう」と違和感を感じずにはおられないと同時に「誰がドナーになって卵子を提供しているんだろう」と疑問も抱いた。「自身が産まないと決め、女性としての役割を果たさないことに後ろめたさがあったのか。もしかしたらドナーになれたら、御夫婦だけでなく私自身も希望を見い出せるんじゃないかな」と受けとめ、卵子提供について調べていき「20代後半女性の気持ちや、多様化している令和の時代に関わらず、結婚して子供を産むのが女性の幸せなんだ、という根深いところが浮き彫りになる」と期待し、本作を企画し完成させた。

 

撮影を振り返り、寺坂さんがお風呂での撮影に用いた入浴剤について挙げると、川崎監督は「青い入浴剤に拘って買ったら、中から海藻が出てくるタイプで…」と漏らし、寺坂さんは「映像的に変なので、皆で必死になって取ったんだけど取り切れなかった」と苦笑。また、川合さんがスルメイカが映されるシーンを挙げ、川崎監督は周防正行監督の『Shall we ダンス?』へのオマージュとして「竹中直人さんが居酒屋でスルメの足を動かすシーンがあるんですよ。何をやっているのか幼いころは分からなかったんですが、大人になって脚本を読んだら、ダンスのステップを踏んでいるらしい。脚本を読んで爆笑してしまい、リスペクトしないといけないと思って、意地でもスルメを映そうとした」と打ち明ける。さらに、生理用品をトイレでつけるシーンをピックアップし「男性は分からない。寺坂さんが男性のカメラマンに聞いても、分かるわけないじゃん、と思ったのを覚えている」と振り返っていく。寺坂さんは「トイレの中で一人だから、つけていることを皆で共有したことがない。皆に、このやり方で合っているんですか、と聞いた」と話すと、川崎監督も「私達も、他人のを見たことがないんだ」と気づき、川合さんも「CMだと青い液体でリアリティがないようにされている」と添える。川崎監督は「特に、男性は謎のものだと思っている。何故タブー視するのか分からない。お互い歩み寄るためには知ってもらうしかない。私は映画が教えてくれることは沢山あると思っているので、あえてストレートに描きたかった」と率直に述べ、川合さんも、生理の貧困に関する話題を挙げていく。そこで、川崎監督は「インターネット上にインタビュー記事が公開されていますが、生理用品の値段を計算するシーンが話題になり、やっと最近になって、政府が生理の貧困に対して予算を割くとやっと言った。2017年に撮っているので、やっと国が追いついてきた。遅過ぎるよ。この認識は、日本の男性社会や、政治家の皆さんは男性ばかりなので、そこまで意識がいかないんだな。そのためにも政治家の皆さんにも観ていただきたい」と提言した。なお、本作では卵が印象的に用いられるシーンがあり「卵が名演技をしていた」と掲げ「冒頭からある音は、人によっては『責め立てられ過ぎてトラウマだ』と云われる方もいる。30歳になるまでのタイムリミットを感じながら、針の音で責め立てられるような感じが、一定の音ではなく、感情的になる音が欲しくて、心情を表せる音を拘りました」と解説。音楽を担った小林未季さんに「卵を楽器だと思って作ってほしい」と依頼し「苦戦されたが、2人で時間をかけて作っていきました」と納得している。

 

最後に、寺坂さんは「卵子提供やレズビアン等のインパクトある言葉が出てくる映画ですが、これをFeatureしたい映画ではなく、皆さんが自分の感情を決めることが素晴らしく、誰にも左右されないで生きていってほしい、というメッセージが込められているので、受け取って頂ければ幸いです」と伝えていく。川合さんは、沢山の様々な意見を受けとめながら「改めて考えるきっかけになった、と言って頂いています。30歳前後の女性が独身で悩んでいたけど、希望を持った方もいらっしゃった。観て知って考えて、お互いに相手のことを尊重しながら話し合えるきっかけになる映画だな」と称え、「選ばれたい私たち」というサブタイトルに対し「映画のテーマは、自分自身で人生を選んでいくこと、だと思っているので私達は映画という方法を使って伝えていきたい」と願っている。川崎監督は「これだけの熱量で一緒にこの作品を作ってくれた2人には感謝の気持ちでいっぱいです」と監督としての思いを伝え「聞き慣れない言葉があり、社会派なのかなと思われがちなんですが、私が作りたかったのは、私や友達の素直な本音を曝け出して、理解してもらい寄り添える映画。この映画を観た誰かの心が軽くなってくれたらな」と願いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『Eggs 選ばれたい私たち』は、関西では大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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