ヘイトシンボルにされてしまったキャラクターがたどる数奇な運命を映したドキュメンタリー『フィールズ・グッド・マン』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)2020 Feels Good Man Film LLC
アメリカでカルト的な人気を誇るマット・フューリーの漫画『Boy’s Club』にまつわるドキュメンタリー『フィールズ・グッド・マン』が4月9日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『フィールズ・グッド・マン』は、アメリカのアンダーグラウンドコミック界の人気アーティスト、マット・フューリーが生み出したキャラクターがたどることとなった数奇な運命と現在のアメリカ社会を、アニメーションを織り交ぜて描いたドキュメンタリー。カルト的な人気を博したマット・フューリーの漫画「Boy’s Club」。主人公ペペが放った「feels good man(気持ちいいぜ)」のセリフとともにネットミームとして改変されたペペが、マットの意思とは裏腹に掲示板やSNSで一人歩きしてしまう。2016年アメリカ大統領選時には、匿名掲示板でオルタナ右翼たちが人種差別的なイメージとともにペペを拡散し、ADL(名誉毀損防止同盟)からヘイトシンボルとして認定。さらにペペの乱用は加速し、トランプ大統領の誕生に一役買うまでになってしまう。この事態にマットはペペのイメージ奪還に乗り出す。
https://www.youtube.com/watch?v=5vMrRsGM3jE
(C)2020 Feels Good Man Film LLC
映画『フィールズ・グッド・マン』は、関西では4月9日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。
幼い頃に何らかの物体を基にしてキャラクターを描いたことはないだろうか。現代の子供なら簡単にインターネット上に公開できる。ひょっとしたら、誰かの目に留まり、世間の一部だけでも注目されることがあるかもしれない。ただ楽しくて書いていただけのキャラクターなのに嬉しい限りだ。だが勝手に悪用されたら、どんな気分になるだろうか。見ず知らずの人に嫌悪感を抱かせてしまったら、目に見えない大衆からの視線が辛くなってしまう。本作は、そんなキャラクターと共に必死に戦ったアーティストのドキュメンタリーである。
アメリカの同人誌業界における人気アーティストであるマット・フューリーは、普段はおもちゃ屋さんで働く真面目な青年。独自の着眼点を以てカエルのキャラクター、ペペ・ザ・フロッグを作り出し、自身が遭遇したエピソードを取り入れ、面白くて可笑しいストーリーを描いていく。あくまで同人誌業界だけのものだったはずが、アメリカ版”2ちゃんねる”である「4chan」上に勝手に取り込まれて独り歩きして、オルタナ右翼たちによyyr人種差別的なイメージとともに拡散されてしまうなんて…フィクションなら、どうしよう!?と困惑するだけのコメディにしかならない。だが、現実の出来事である。必死にキャラクターの権利を取り戻しますよね。裁判も起こします。敢えてキャラクターを殺すこともする。だけど、独り歩きは止まらない。されど、本作の最後には、光あるキャラクターとしても描かれていく。メジャー!?プロフェッショナル!?なキャラクターではないけれども、アマチュア!?でインディペンデント!?なキャラクターはどこまで使用していいのか、守られるべきものであるのか。良くも悪くも国のトップを動かしてしまうキャラクターを生み出すことの意味を改めて考えさせられてしまった。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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