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東京版「不思議の国のアリス」不思議な縁が人生に影響をもたらしていく…『フェイクプラスティックプラネット』宗野賢一監督に聞く!

2020年8月13日

街をさまよう貧困女子が数奇な出来事に遭遇するサバイバルドラマ『フェイクプラスティックプラネット』が8月15日(土)より関西の劇場でも公開。今回、宗野賢一監督にZoomを用いたインタビューを行った。

 

映画『フェイクプラスティックプラネット』は、過去に自分とそっくりの人間がいたということから、運命のいたずらに翻弄されていく主人公を描いたサバイバルミステリー。貧困のためネットカフェ暮らしをしているシホは、ある街角で初対面の占い師に「あんた、25年前にも来たね」と言われる。自分と瓜二つの人間が25年前にいたのかどうか、真実を知ろうとしたシホだったが、そのことから彼女は不思議な出来事に翻弄され、常識の全てが覆る思いがけない事態に直面していく。『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』『人間失格 太宰治と3人の女たち』などに出演した山谷花純さんが、主人公シホ役と25年前に失踪した女優・星乃よう子役の1人2役を務めた。

 

絵画を描くことが好きで専攻し漫画家を志していた高校生時代の宗野監督。ストーリーを伝えるメディアとして、画だけでなく動きを見せ音楽が備わったものが映画であると気づく。「映画に関する仕事に携わるなら、将来的に様々な国で撮影したい」と願い、苦手な英語を克服するために留学を決意。アメリカの4年制大学に入学し、映画専攻に編入して勉強していく。卒業制作として、人種差別問題を扱った映画『There But Not There』を手掛け、出品した映画祭でも好評の出来だった。黒人と白人のカップルの話を描いており「日本人は日本に住んでいると差別は感じませんが、アメリカに実際に住んでみないと分からない差別を感じる瞬間があり、差別問題に興味が芽生え、作るきっかけになりました。また、ルームメイトがアフリカ出身の方だったので、この題材に導かれていきました」と当時を振り返る。

 

2010年、日本に帰国後、東映京都撮影所で助監督として様々な作品に参加していく。2013年にテレビ朝日のドラマ『科捜研の女』に助監督として携わった際には、ゲスト出演した山谷花純さんについて「若いのに演技や目の表現力がある」と印象に残っていた。その後、本作の脚本を書き終え、コンビニで山谷さんが表紙を飾っている漫画雑誌のグラビアを見て、撮影当時を思い出す。改めて主演作『シンデレラゲーム』等を見て「演技が良かった。今作の役柄にピッタリだ。アップで撮った時に、台詞がなくても目の表情だけで感情が伝えられる人だ」と確信し、出演をオファー。撮影現場では、役に入り込んでいる人だ、という印象があり「演出を考えて現場に入っている。リハーサルをした時、最初からしっくりくる流れが出来ていた。台本を読んでキャラクター性を汲み取って、事前に役柄を作り込んでおり、勘が鋭い方」だと受けとめている。また、共演者には、「劇団青年座」の方々が参加しており、ユニークで癖のあるキャラクター達を見事に演じてもらった。本作は、宗野監督による脚本を以て、限られた予算のなか最小限のスタッフ達とロケハンなどの準備を行い撮影していったが、諸々の準備や作業を全て監督自身が担っており大変だったが「自主映画特有の安っぽさを感じさせないように、映像のクオリティには妥協しない」と十分に気をつけている。

 

なお、本作は、謎が多く含まれているが、謎解きに重きを置いていない作品。宗野監督は「展開の先が読めないからこそ惹きつけられるストーリーテリングに興味がある。先読みが出来ない展開によって観客が興味を失わないように」と脚本執筆時に心がけている。デヴィッド・リンチ監督作品『ツイン・ピークス』の如く「ストーリーのおもしろさより、登場するキャラクターの魅力が大きい。世界観とキャラクター達の魅力が大きいから、不可解なストーリーでも観ている方はついていきたくなる」と趣向を説く。監督としては、全て意図を仕込んでいるが「観た人が良いように解釈してもらえたらなぁ」と願っている。「個人のアイデンティティや、現実と空想、幻想混じり本当か嘘か分からない、夢を見ているような作品が好き。脚本を書く度に主人公が幻覚を見るシーンは意識しなくても出てくる。これが個性になるのかなぁ」と自らを客観視しており、今作について「東京版の不思議の国のアリス」だと謳う。「主役のシホが精神的に追い詰められていくなかで、周りで起こる出来事も次第にエスカレートしていく。本人の意思とは異なることで巻き込まれ、不思議な縁が人生に絡んでくる。日々の生活の中で、悪い出来事が起きても、その結果として辿り着く場所は悪くなかったと感じることは多々ある」と述べ「観た人が元気になれるといいな」と期待している。

 

既に東京と名古屋の劇場では公開されており、幅広い年代のお客さんが鑑賞。舞台挨拶も行い、主人公に感情移入してくれる人が多く、キャラクターについてきてくれている、と実感した。現在の状況においては前向きに捉えており、集中して脚本を書き、80ページの2時間超の作品を書き上げている。「次はホラーテイスト。今作以上にゴールが見えない話。スタートとゴールが違う」とワクワクと話しながら、未来に目を輝かせていた。

 

映画『フェイクプラスティックプラネット』は、8月15日(土)より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。また、京都・九条の京都みなみ会館でも近日公開予定。なお、シネ・ヌーヴォでは、8月15日(土)・8月16日(日)・8月21日(金)・8月22日(土)の上映後に宗野賢一監督を迎え舞台挨拶が開催される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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