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好きなことを愛せる人生は素晴らしい!『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』上村彰子さんと久保憲司さんがザ・スミス / モリッシーを語り尽くす!

2019年5月30日

モリッシーが、ジョニー・マーと出会いバンドを結成するまでを描く『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』が、5月31日(金)より全国の劇場で公開。5月30日(木)には、大阪・宗右衛門町のロフトプラスワン ウエストに、ライター・ブロガーの上村彰子(かいなってぃー)さんとフォトグラファー・ライターの久保憲司さんを迎え、『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』公開記念トークイベント「ザ・スミス / モリッシーを語り尽くす!〜かいなってぃー VS クボケン スペシャルトーク〜」が開催された。

 

映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』は、痛烈な言葉と独自の音楽性で1980年代イギリスの音楽シーンを席巻したバンド「ザ・スミス」結成前夜の物語を、ボーカリストのスティーブン・モリッシーを主人公に描いた青春音楽映画。1976年のマンチェスター、高校を中退したモリッシーは、ライブハウスに通いつめバンド批評を音楽誌に投稿する日々を送っていた。家計を助けるために就職したものの職場になじめない彼にとって、仕事をサボって詩を書くことが唯一の慰めだった。そんなある日、美大生のリンダーと出会ったモリッシーは、彼女の後押しもあってバンドを結成することに。初ライブは成功を収め、モリッシーはミュージシャンを目指すべく仕事を辞めるが…
『ダンケルク』のジャック・ロウデンが若き日のモリッシーを演じ、苦悩と挫折を乗り越えながらミュージシャンとしてのアイデンティティを確立するまでを描く。リンダー役はテレビシリーズ「ダウントン・アビー」のジェシカ・ブラウン・フィンドレイが演じる。また、モリッシーの同僚であり彼を誘惑するクリスティーン役でドラマ「キリング・イヴ/Killing Eve」のジョディ・カマーが出演した。メガホンを取ったのは、本作が長編監督デビュー作となったマーク・ギル。

 

2人は昨年10月28日に上村さんの著書「お騒がせモリッシーの人生講座」出版記念トークショー以来の付き合い。以来、久保さんは上村さんにザ・スミス/モリッシーについて様々なことを聞いてきた。なお、久保さんは日本人での第1号ファンとして、結成直後のザ・スミスをイギリスで観ている。そもそもは、バズコックスのボーカルだったハワード・ディヴォートが結成したバンドであるマガジンを解散しソロ活動する、と聞いて観にいったライブで、ザ・スミスが一番手で登場し、彼らのステージを観てカッコいい魅力を感じた。

 

上村さんは、マーク・ギル監督にインタビューした際に「当時のマンチェスターは、男社会で荒々しい力のある者が勝ち組とされていた。その中でモリッシーは花を用いて女性性を打ち出しており、驚いた」と話す。マーク・ギル監督は、自身がマンチェスターで鬱々とした少年時代を送っていたなかで、「Top of The Pops」が映し出すザ・スミスの映像に衝撃を受けて、ずっと映画を撮りたかった。「それだけモリッシーには人を変える力を持っていた」と上村さんは物語る。

 

その後、昨今のモリッシーの生き方や思想に関するトークを行いながら、ザ・スミスの歌詞について解説し、お客さんからの歌詞に関する質問にも応じていく。なお、本作にはザ・スミスの音楽は使われていないが、モリッシーが影響を受けたアーティストの楽曲が大事なシーンで流れている。上村は本作の字幕監修をしていた頃に、原爆オナニーズのTAYLOWさんがコメントを書いているのを見ていた。モリッシーと同時代に音楽を聴いていたTAYLOWさんから「Mott The Hoopleの”Sea Diver”がモリッシーの当時の気持ちとリンクしているので訳すべきだ」とアドバイスを受け「モリッシーの心の焦りや閉塞感から脱出しようともがいている雰囲気がオーバーラップしていると気づいた」と明かし、本作の見どころであると薦めていく。なお、マーク・ギル監督はザ・スミスの楽曲が使えなかったのではない、と踏まえた上で「スクリーンでザ・スミスのレコードを聴く感覚を以て本作を撮っている。大事なシーンではザ・スミスを感じられる」と訴える。これに対し、久保さんは「モリッシーのことを考えたら、許可は下りないと分かっている。それでも、映画を作ったなら偉い」と称えていく。上村さんも「マーク・ギル監督が撮り得る作品が出来上がった。陰口を言われても気にしない。本当のファンなら、自信を持って解釈して発表する勇気がある」と評価する。

 

なお、モリッシーを演じた俳優のジャック・ロウデンはモリッシーの情報を何も入れないままイメージして演じている、と上村さんは解説し「あそこまで似せてくるのは…」と驚いており「全身でモリッシーを演じて躍動感がある。本当に上手い俳優さん」とべた褒めしていく。さらに「スティーブンが最初からモリッシーだったわけではない。私達と同じように青春時代を過ごしていたイチ青年がモリッシーになっていくことが感じられた」と評した。当時のモリッシーは、わざとマンチェスターの安価な服屋や古着屋さんでステージ衣装を買い、当時流行っていたファッションの裏返しで、新しいスタイルを提案しており「初ステージは緑の古着を着たモリッシーを再現しており、映画でもメリハリのあるシーンとなった」と解説。久保さんも「幸せな気分でのアクションがステージ上のモリッシーみたいになっており、本当に格好良い」と気に入っている。

 

嘗てのモリッシーのような青年について、上村さんは「周りが見守ることも天才を育てるには必要なこと。天才は必然的な人との出会いがあってこそ登場した、と云える」と語っていく。さらに「映画では事実と違うと云われることもあるが、1人の少年がどのように大人になっていくか、一番肝となる6年間を追った普遍的な映画。だからこそ、誰しも経験し得ることで思いを馳せられる」と作品への愛を伝える。最後に「モリッシーだけでなく、音楽など自分の好きなものが人生を支える柱となっていくので、絶対にその気持ちだけは忘れたくないな、とこの映画を観て私は一番感じた。その思いを監督に伝え、監督からも『自分はずっとモリッシーやザ・スミスに導かれてきたことは真実』だと云われ、音楽など好きなことを愛せる人生を過ごせていることは自信を持っていいことだ」と、上村さんが本作や監督から受け取ったメッセージを語り尽くした。

 

映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』は、5月31日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、京都のMOVIX京都、神戸・三宮の神戸国際松竹をはじめ、全国の劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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