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ダ・ヴィンチ、ピカソ、フリーダ・カーロの人生紐解くドキュメンタリーシリーズ「アート・オン・スクリーン」がいよいよ劇場公開!

2021年1月27日

(C) Succession Picasso/DACS, London2018 (C) Nickolas Muray Photo Archives (C)Pablo Picasso (1881-1973), 1904 (b/w photo), French Photographer, (20th century) / Musee de Montmartre, Paris, France / Archives Charmet / Bridgeman Images (C) Succession Picasso/DACS, London 2018

 

世界の美術史に残る傑作の数々をハイビジョンカメラで記録し、映画館の大画面で美術を楽しむアート・ドキュメンタリーシリーズ「アート・オン・スクリーン」が1月29日(金)より全国の劇場で公開。『天才画家ダ・ヴィンチのすべて』『ピカソがピカソになるまで』『フリーダ・カーロに魅せられて』が一挙上映される。

 

映画『天才画家ダ・ヴィンチのすべて』は、世界で最も有名な芸術家レオナルド・ダ・ビンチ没後500年記念作品。世界8カ国でロケを敢行し、「モナ・リザ」「白貂を抱く貴婦人」、そして現在行方不明ともいわれるダ・ビンチ最後の作品「サルバトール・ムンディ」など、ダ・ビンチ作とされる現存する全作品の収録に成功。美術史上最高の傑作の数々を、ハイビジョンカメラを駆使して詳細に撮影した。ダ・ビンチ芸術の真髄を通して彼の人生をたどり、キュレーターや批評家、歴史家の解説により、その歴史と芸術的な成果を描く。

 

映画『ピカソがピカソになるまで』は、20世紀を代表する芸術家パブロ・ピカソに焦点をあてた作品。美術教師の父のもと技術を磨いた幼少期、愛と人生に苦悩し新たな表現を模索した「青の時代」「ばら色の時代」、そして25歳の時、後に彼の“現代絵画の出発点”といわれる「アヴィニョンの娘たち」を完成させる。若き日のピカソに多大な影響を与えたマラガ、バルセロナ、パリの3都市を巡り、初期の貴重な作品の数々と彼の青春時代の道のりを追う。

 

映画『フリーダ・カーロに魅せられて』は、メキシコの現代絵画を代表する芸術家で、フェミニスト、革命家、そして自由な恋愛のアイコンとしても知られたフリーダ・カーロをピックアップした作品。現在は「フリーダ・カーロ博物館」となっている彼女の生家「青い家」をはじめ、彼女の作品を所有するメキシコシティの美術館やギャラリー、各国で開催されている展覧会を収録。カラフルな民族衣装をまとい時代のミューズとなった彼女の人生の根底に流れるものを、絵画作品を通して探る。さらに日記や書簡を通し、壊れやすくも激しく燃えたフリーダの魂を解き明かす。

 

アート・オン・スクリーン」は、1月29日(金)より全国の劇場で公開。『天才画家ダ・ヴィンチのすべて』は、1月29日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮の神戸国際松竹で公開。『ピカソがピカソになるまで』は、1月29日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、2月26日(金)より京都・三条のMOVIX京都と神戸・三宮の神戸国際松竹で公開。『フリーダ・カーロに魅せられて』は、1月29日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、3月26日(金)より京都・三条のMOVIX京都と神戸・三宮の神戸国際松竹で公開。

『天才画家ダ・ヴィンチのすべて』

構成がとても整然としていて、リズム感がある。「まず、その土地の風景を映す」→「ある美術館の外観から、内部へと入ってゆく」→「作品が展示されている部屋に足を踏み入れる」→「作品のタイトル・制作年・所蔵美術館名と国名のテロップ」→「作品の詳細な解説」と続く。たまらず満足できる仕上がり。紹介される作品は、どれも超がつく程に有名なものばかりだからだ。「モナ・リザ」「最後の晩餐」「岩窟の歳暮」「洗礼者ヨハネ」「白貂を抱く貴婦人」…もしタイトルを知らなくても、どこかで見た事はきっとあるだろう。テンポよく次々にサクサクと進むため、102分という尺の中でかなりの作品数を見られる。

 

また、世界各国の美術館が周辺の風景と共に映し出されるので、「世界美術館巡り」としても絶品だ。各地の美術館で十分な作品が所蔵されているほど、この画家(ダヴィンチはあらゆるジャンルに精通した芸術家だが、このドキュメンタリーでは絵画にスポットが当てられているのでこう呼ぶ)の作品は多くの枚数が制作された、と改めて驚かれる。非常に情報量の多いドキュメンタリーだ。次々と作品が紹介される、詳細さと量には、嬉しさと見逃してはならないという切迫感とで悲鳴が出そうになる。集中力があればあるほど楽しめる作品なので、どうか万全のコンディションで鑑賞して頂きたい。

 

『ピカソがピカソになるまで』

原題の「Young Picasso」のとおり、ピカソの生誕から幼少期、少年期についてじっくりと掘り下げられ、比較的マイナーなエピソードが紹介されるところが非常に興味深い。ピカソが大好きな方にとっても、意外な証言も聞くことができた。幼いころから画才はあったが、その才能を伸ばすように導いてくれる良い父親に恵まれ、思春期から青年期に街へと踏み出し他の芸術家たちと交流を深めていったピカソ。美しい外見と偏屈な気性に女性たちは惹かれていき、作品に描かれたモデルたちとはどんな関係であったのか。

 

スペイン、バルセロナ。闘牛士の音楽に乗り、情熱的な地中海の空気をまとって始まるオープニング。強い日差しに原色がくっきりと浮かび上がるような、鮮明なコントラストの色鮮やかな街並み。裏通りには画家がよくモチーフにした娼婦たちと出会った歓楽街。その土地の空気や温度を伝えてくれる映像は、「青の時代」「薔薇色の時代」といった、ときにはストイックでアンニュイな彩りを、またある時代にはヴィヴィッドな色彩を残していったこの画家の創作のルーツを教えてくれる。ラストで、ある美術館の学芸員がある絵について語っていく。「30秒間、この絵をじっと見つめてみてほしい」と実践させてくれる場面は、これまでの美術特集ではありそうでなかなか無かった体験で、見入ってしまった。ピカソの熱烈なファンが観賞するのにはもちろん、今まであまり興味が無く何も知らなかった人にも、とても見やすく、ピカソの世界に入りやすい良質のドキュメンタリーだ。

 

『フリーダ・カーロに魅せられて』

メキシコ生まれの我流の画家、若い頃にから体を悪くして闘病していた人、太い眉毛の自画像…という程度の認識しかしていなかったが、このフリーダ・カーロという人物について90分で理解がとても深まった。昨今ではクィア(LGBTQのQ)という言葉で広まりつつある認知もまだ殆どなかった時代、ジェンダーやアイデンティティというテーマを作品の中で取り上げていることが、この画家の人生に関する解説とともに詳しく語られる。人生の早い時期に死の淵を体験して以降、ずっと生と死の境界上で生きてきた。彼女だからこそ、燃え尽きる寸前にある生命の輝きを伴った力強さが数々の作品に籠められている。本作を観ることで、彼女の絵の中に登場するモチーフの由来や、人生のどんな時期に発表された絵画なのか知ることができた。

 

「アート・オン・スクリーン」シリーズ全てに共通することとして、作品を映し出すクオリティが非常に高い。キャンバス地の質感まではっきりと分かるように丁寧にライティングされじっくりと接写された映像は、混雑した美術館の暗い照明の下で観賞するよりも、はっきりと見える。フリーダ・カーロの代表作の多くがメキシコの美術館に所蔵されており、日本の美術展での所蔵は少ない。日本に貸し出される機会もめったにない、これだけの作品数と情報量を現地に行かずに体験でき、特に最後のまとめは画家のメッセージを代弁するかのようでもあり、観る価値のある貴重な作品だ。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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