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「デザイン」には、楽しいことだけが詰まっていた…『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』菅谷晋一さんに聞く!

2021年2月1日

(C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会

 

ザ・クロマニヨンズやOKAMOTO’Sなどのレコードジャケットを手がけるデザイナー、菅谷晋一さんの制作過程を追ったドキュメンタリー映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』が関西の劇場でも2月5日(金)より公開。今回、菅谷晋一さんにミニインタビューを行った。

 

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』は、ザ・クロマニヨンズ、OKAMOTO’Sなどのレコードジャケットを手がけるデザイナー、菅谷晋一さんの制作風景を捉えたドキュメンタリー。大学で建築を学んだ後に家業の町工場で働いていたという、デザイナーとしては異色の経歴を持つ菅谷晋一さん。デザインは手探りで学び、どこにも所属せずに人脈ゼロから仕事を始め、約20年にわたりたった1人で作品をつくり続けている。そんな彼の作品や生き方に共鳴した映像作家の南部充俊さんが、その独特の制作過程に密着。菅谷さん本人の言葉や、彼に信頼を寄せるミュージシャン、関係者へのインタビューを織り交ぜながら、アートワークの作り方を紐解いていく。

 

「デザイン」をする中で、菅谷さんは「頭で思い浮かべていたものが、徐々に形になっていく瞬間にやっていること全ての作業が大好き」と惜しみない愛情を作品に注いでいく。最近は、割り箸で絵を描くことが多く「エラーの線が出てきます。コントロールできる筆では決して出てこないエラー」と偶然の出来事も気に入っている。翻って、苦手なことについても聞いてみたが、5分も考えてみても「ない」の一言。「デザイン」には、楽しいことだけが詰まっていた。また「初めてつくることによって出てくる稚拙な出来上がり」にすごく興味があり「一つの画風や作風で作り続けて上手くなることに興味はあまりないんです。完璧でなくていいんです」と断言。「初めて出会う「やり方」にいっぱい会って、出来た作品に自分で驚くことが楽しみです」と述べ、「デザイン」への挑戦はいつまでも止まらない。

 

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』は、関西の劇場では、2月5日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、2月12日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。

音楽のストリーミングサービスが主流になって久しい。ネットショッピングの普及で、店頭で円盤を手にとることも少なくなった。今どき物にこだわるなんて前時代的な感覚かもしれない。しかし、時代が変わっても、変わらず胸が踊ってしまうものがある。例えば、それはレコードジャケットのアートワークだ。

 

「僕がデザインって名乗るのは、いろんなことができるから」という菅谷さんの言葉通り、その手法は多岐にわたる。写真、映像、造形、イラストレーションから油絵まで。それらは本来の「手段」という役割を果たし、菅谷さんの仕事の一部になっていく。菅谷さんのつくるモノの独創性とは裏腹に、それが独立したアートピースではなく、レコード(=アルバムや曲)の一部として帰結していく関係性も興味深い。どこまでも自由に広がった世界が、最終的には四角いキャンバスの中に収まっていく。

 

菅谷さんにとって創作のすべては「デザイン」で、そこに制約はない。なぜそこまでするのだろう?と最初は感じた。しかし、鑑賞を進めるうちに、なぜそこまでしないのだろう?という自身への問いが生まれ始める。エポックな創作過程を贅沢にも覗き見ることの出来る本作は、レコードジャケットという枠を超え、「仕事をする」ってこういうことなんじゃないかと日常で足をとめるきっかけになるだろう。100%であるというたった一つのシンプルな答えが、私たちの胸に潜むくすぶった情熱に火を灯す。音楽好きにはもちろん、明日も仕事に向かうすべての大人に観てほしい一本だ。

fromマエダミアン

 

サブスクリプションサービス、SNSが台頭して以来、音楽や映画と言ったコンテンツは、前時代以上に、一気に身近となり、音楽好きを除いては、音楽はストリーミングで…という話は近年よく耳にする。情報が簡単に手に入り、いわゆる、”ハズレ”を引く確率がグッと減った現代。レコード屋で試聴機に耳を傾け、店員さんの作るPOPやレビューを読み、お気に入りの一枚を選ぶことや、カタログ棚をカタカタと探り、一目惚れの様に”ジャケ買い”をすることは、今ではもう、珍しいことなのかも知れない。

 

そんな時代の最中、音楽好きが思わず、手を伸ばしてしまうレコードジャケットを作り続ける菅谷晋一さん。本作では、彼の作品に対しての向き合い方、音楽への愛、込められた想い、そして何より、”菅谷”という人物の人柄を、長年彼と共に走ってきた、ザ・クロマニヨンズや、OKAMOTO‘Sらの話から、感じることができる。今作を鑑賞後、私は思わず、レコードラックから、『ザ・クロマニヨンズ/PUNCH』を取り出し、針を落とす。いつもより、どこか暖かい音が聞こえてきた様な気がした。

from関西キネマ倶楽部

 

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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