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質の高い映像作品で認められたい…!「第四欲求-若き映像作家の新◯◯論-」映像新時代の若き監督達に聞く!

2020年12月11日

専門校「バンタンデザイン研究所大阪校映像学部」の学生達が制作した映像作品を「第四欲求-若き映像作家の新◯◯論-」と題して大阪・十三のシアターセブンで12月12日(土)より初めて一般公開。今回、各作品を監督した学生達にインタビューを行った。

 

オムニバス作品「第四欲求-若き映像作家の新◯◯論-」は、睡眠欲、食欲、性欲に続く、彼ら/彼女らにとっての4つめの欲求を「映像で認められたい」と定義して作られた5つの映像作品。若き映像作家たちのジャンルにとらわれない自由な発想によって作れられた作品を観ることで「あなたの普通」が変化する…

 

今回唯一の1年生である塚本雄太監督による『Love Distraction』。アンドロイドを題材とした映画をこれまでとは違った角度から発想。テーマは「存在証明」。街を記録するために作られたアンドロイド。2日後に役目を終えることになっていた、そのアンドロイドは、自分の存在意義について疑問を抱えていた。そんなとき、いつも公園で見かけるひとりの青年・アイが話しかけてくる。アンドロイドとアイは、お互いを認め合うことで世界に居場所を見つけていく。本作に登場するアンドロイドは「アイ」という被写体を見つけることで自分の存在意義を発見。一方の「アイ」も、取られることで自分自身と向きあうことになる…

本上映会のテーマである承認欲求を塚本監督が考えた時に「誰かに見られている自分を見てみたい。人の存在は誰かの視界に入らないと証明できない」と思いつき、街を撮影しているアンドロイドと自分の存在を不安に思っている男の子を登場人物に設定した。今まで制作した中でも一番長い作品となり「こんな長い脚本を書いたことがなかったので、一番難攻しました」と告白。今までは1人で制作していたので「今回は、初めて様々な方に役割を振りましたが、バランスよく振る舞うのが難しかったですね。脚本を渡せず考えたまま持っていたので、その間にやっておくべき仕事を振り分けられておらず、時間が押してしまった」とチームを組んだ中での監督業の難しさを実感。他の作品を観て、1シーン毎のクオリティに違いを感じ「僕は撮り切ることが精一杯。クオリティや細かい箇所が詰めれていなかった」と顧みる。準備段階で実施すべきことを認識し、現場での集中力を伸ばそうとしており「2時間の映画に入っている情報量に厚みを感じている。作品に出来るだけ多くの掘り下げられる要素がある密度が濃い映画を作りたい」と志は高い。

 

森山竜司監督が手掛けた『まわる世廻』は、「争いの解決法とは何か」に疑問を持ち制作した人間ドラマ。ある昔、国々は資源、領土や病を理由に争いが多発していた。なかでも解決に程遠かったのは病。その国々では、子が産まれなくなる病が蔓延していた。だが、日の国、月の国の者たちは、神の使いと呼ばれる預言者が、病を治すことができる石「廻希石」を持っているという情報を得る。国々の長たちは「廻希石」が眠る島へ、若者たちを送り込む。争うもの同士、納得できる形で問題を解決できれば良いが上手くはいかない。結局、不満を吐露し、誰かにぶつけ、最終的には争いが繰り返される。本作の主人公・弥七はその輪廻を断とうと考える…

様々な相談をしたり講師陣から意見を頂いたりしながら、試行錯誤しながら制作していった森山監督。真夏で暑い淡路島の洲本市で、皆の体調を気遣いながら野外撮影を敢行。監督自身も3時半に起きて撮影に向けて出発し夜中も作業しており、本当に大変だったと懐古している。とはいえ、撮影素材にはずっと蝉の鳴き声が入っており、音声は使えず、台詞は全てアフレコ、編集を『憂鬱なので一旦消えときたい。』の角谷監督に担ってもらっている。角谷さんは「一つ一つの足音をフリー音源から取り入れています。刀剣は偽物なので本物に見えるように音をつけています」と明かし、森山監督が拘ったラストシーンの音にも十分に対応した。なお『RETALTY』での映像表現に対して「VRの世界で、無いものを現実にすることに取り組んでみたい。表現出来る世界の幅が拡がる」と関心を持っており、今後はTV業界に進もうとしているが「今回のような機会があれば長編ドラマを手掛けていきたい」と意欲は満々だ。

 

ミカヅキユウト監督とウエムラハルカ監督による『RETALTY』は、コンプレックスである【無個性】から【個性】を身につけるまでの【努力】と【成長】の物語。仕事が終わって帰宅した主人公の、はすね。晩ご飯を食べようとしたとき、上司からの電話で怒られてしまい「仕事がうまくいかない」と悩みこんでしまう。そんな時、スマホに新作ゲームの通知が届く。VRゴーグルに手を伸ばしゲームを起動し、ログインしたはすね。ゲームの世界で様々な体験をする彼女は、現実世界に戻って変化を遂げる。今やSNSの普及により、一般人でも簡単に著名人(インフルエンサー)になれる時代。他人にはない【自分らしさ】を身につけようとする人が増えた。個性を求めることこそが、第4欲求【特異欲】。誰よりも個性的に、誰よりも変わり者でいたいと思うことは、普通のことなんだと伝えたい…

タイトルの『RETALTY』は、本作に登場するVRゲームの名称で、REALITYとDIGITALを掛け合わせた造語。ミカヅキ監督は、一般の社会人やOLが上司に怒られ認められない状態から、個性を出すイメージを第四欲求に合わせて制作した。監督と撮影を担い、基本的なカット割りを行い「撮影をしながら監督として役者さんに演出するのが難しかったですね」と振り返る。また、作中の音楽をイチから作っており「元々、音楽が好きだったので、なるべく拘って作っています」と自信あり。ウエムラ監督は、VRの世界観の編集と、部屋の美術を担当しているが「ロケ地の決定が長引いてしまい、部屋を作る期間が短くなり、自分が持っているものを集めて限られた予算で作るのが大変でした」と明かしていく。また、VRの世界観を作るうえで、経験したことがなかったエフェクトを用いた編集技術を取り入れており「無知の段階から限られた時間の中で、イチから素材を作り詰め込んでいくのは大変でした」と吐露。2人の共同監督作品であるため、作品の世界観の共有はしっかりと行った上で役割分担をしているが、人手不足による大変さもあった。また、編集作業では「素材制作担当と映像を繋げていく担当者を分けた方が効率的である」と認識していく。ミカヅキ監督は、アニメーションやMVも好んでおり「異世界転生がある作品が好きなので、ストーリーを組む時に表現できたらいいな」と願っており「もし自分で映画を制作するなら、実写にCGやVFXを加えたおもしろい映像を作ってみたい」と楽しみにしている。ウエムラ監督は「今回は1人の役者さんが出演するストーリーを作りましたが、2人以上の役者になるとストーリーの厚みが違う。役者さんがいてこそ映画だ」と体感し「人の日常を撮ることが基本的に好きなので、編集で個性ある映像作品に仕上げて発信出来たらなぁ」と目論見は満載だ。

 

角谷杏花監督が手掛けた『憂鬱なので一旦消えときたい。』は、何度も失恋と片思いを繰り返してきた或る女性の物語。彼女の頭の片隅には、常に忘れられない人物がいた。誰もその相手を上回ることはできず、また、失恋のたびに想い人のことを頭に浮かべて立ち直っていた。彼女にとってその人物は、生きる源であり、傷を癒す存在でもあった。自分で自分を受け入れることの大切さ。たとえ落ち込んでいたとしても、その現実から目を背けず「この出来事がこれからの自分をつくりあげていくんだ」と自己肯定する。そうすると、「つらいことがあっても、それもまた人生の一興だ」と、長い目で自分のこれからを見ることができるかも知れない…

自身の実体験を基に作った角谷監督。本作では1人で何でもやっているが、脚本を考えるのは得意ではない、と認識しており「表現方法を人に伝えて演じてもらうのが得意ではない。まず1人で演じてみて作りながら、考えながら、直しながら、いいなと思ったら追加したり、違うなと思ったら別の表現にしたり。最初から構成を考えて作るのではなく、思いついた時に追加しながら出来上がった作品です」と解説。冒頭の暗い部屋での撮影は、手持ちの照明だけで青っぽくしてシルエットを浮かび上がらせて夜の雰囲気を醸し出すために試行錯誤している。また、カーテンの中に照明を入れて青く光らせてシルエットだけ分かるように苦労していく。なお、自前のカメラを置いて撮影しており「人形を置いてピントを合わせるリハーサルを行う地道な作業を繰り返しました」と明かす。なお、塚本監督の『Love Distraction』を観てロングショットの撮り方に感心したり、小野監督の『花男VS花人間』を観てローアングルやホラー映画を醸し出す撮り方に驚いており、今後は「編集のプロフェッショナルとして信頼される人間になりたいなぁ」と思いつつ「年齢を重ねた上で作品を制作したい」と野望に満ち溢れている。

 

小野萌人監督による『花男VS花人間』は、1950年代から1960年代に作られた怪人映画をベースにして、花を承認欲求のメタファーとして捉え、美しくも儚い花男と花人間がぶつかり合う姿を描いた“怪人ドラマ”。花屋を経営する大橋連太郎。売上に悩む彼は、恋人・林美代子の助言により、珍しい花を販売することに。そして仕入れ先を訪れた連太郎は、そこで白衣姿の沢村誠という男と出会う。沢村は植物の研究をしており、珍しい草花を取り扱っていた。連太郎は彼のことを奇妙に思ったものの、花を購入して店に持ち帰る。別の日、再び仕入れ先に向かうと沢村の姿はなく、かわりに見たことのない花が置かれていた。その花に惹きつけられた連太郎だったが、顔を近づけた瞬間、花粉が飛び出して“何か”に寄生されてしまう。寄生物の正体は「キメラ植物」。「花男」へと変身した連太郎。美代子、沢村は彼の暴走を食い止めようとするが…

小野監督は、普通に飾られている奇麗な花と道端に生えている花から着想を得ており「他人に認められたい気持ちと認められたくない気持ちが僕の中にあります」と認識している。「世間一般に認められたい気持ちと世間に認められなくても自分が好きなものをつくれればという気持ちもあるので、この2つを表現できれば」と考えて制作した。『フランケンシュタイン』をはじめとした怪人映画を挙げ「本来は人だったけど人から離れていった人を作りたかった」と明かす。本作にスタッフとして関わった人達は多く「花の監修をしてくれた方のスケジュールの都合もあり、日程が詰まり過ぎていました。現場を回すことに集中し過ぎて、撮影後の編集段階で気づくことが多かった」と振り返る。されど「監督として我儘に自分がやりたいことをやれば良かった」と思うこともあった。今までは学校の課題として作る意味を感じていたが「今回の劇場上映や映画祭スタッフに携わり、様々な監督から話を聞いて、人に見せることが前提しないといけないな」と受けとめるようになり「人間を撮るのが苦手だけど、観ている人が感情移入できるキャラクターがいるシンプルにおもしろい映画を作りたい」と次回の作品制作を楽しみにしている。

 

オムニバス作品「第四欲求-若き映像作家の新◯◯論-」は、12月12日(土)より12月18日(金)まで大阪・十三のシアターセブンで限定ロードショー。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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