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決められた展開を倒して、今までにない映画を作る…!『パラダイス・ロスト』福間健二監督に聞く!

2020年7月1日

夫に先立たれた女性、亜矢子とその周囲の人々が、失われた楽園のような世界を漂いながら、新たな一歩を踏み出していく姿を見つめていく『パラダイス・ロスト』が7月3日(金)より関西の劇場でも公開。今回、福間健二監督にZoomを用いたインタビューを行った。

 

映画『パラダイス・ロスト』は、詩人と映画監督という2つの分野で活動する福間健二さんの長編監督第6作。東京郊外の人気のない場所で、山口慎也という男がひとり、心臓発作を起こして死んだ。彼はネットの古本屋を仕事にしており、原民喜の小説と木下夕爾の詩が好きだった。妻の亜矢子は夫の死後、夢の中で慎也に会い、彼の残したノートの言葉を読み、ときには夫がまだそばにいると感じるが……。夫を失った亜矢子がどう生きるか、また、亜矢子の友人ら取り巻く人々が、どのように希望を取り戻していくのかを描いていく。主人公の亜矢子役を『』『』の和田光沙さんが演じるほか、福間監督作『あるいは佐々木ユキ』で主人公・佐々木ユキを演じた小原早織さんが7年後の同役で出演。

 

最近の日本映画にはあまり見られない演出が本作で施されている。まず、台詞の言い回しが独特で、詩的であり演劇的でもあると感じた。福間監督は、普通に映画が進んでいくこと自体に退屈さを感じており「今までにないような形にもっていくにはどうしたらいいか」と考え「場合によっては、人物同士が話していながら、画面に向かって語りかける。演劇的になりかけるけど、これが映画だ、とやり返したい。映画として撮ることをしっかりやっていけば、新しい映画になっていくんじゃないか」と思い、本作に取り組んでいる。また、カメラは人物を正面から捉えることを基本にしており「そこには見るべきものがある。観客を見る以外に、もしもそこで死者が見ていると気配を感じたらどうなるか」と、シナリオの段階からのアイデアを構想し、カメラ目線の演技もポイントを抑えて取り入れた。さらに「伏線を張っているストーリーの展開は意外と嘘だ」と述べており「決められた展開を倒して、人物達が進んでいく。その間に、この世界で何が起こっているか。他の人物が何をしているか」を大切している。今作では「夫を亡くした亜矢子が翔に好意を抱かれているのを感じて受け入れていく。細かく描いていないが、2人の存在が動いていけるか。トルストイの『性欲論』を読ませて、童貞が人間にとって一番大切なことだと思っている若者が30歳の女性と結ばれ、後に何を言うのか」を重視して、既存のひと夏の恋物語とは全く違う作品にしたかった。

 

亜矢子を演じた和田光沙さんについては、当初からから出演してもらう意向があり「和田さんを思って書くと筆が進む。和田さんだったら何が起こっても不思議でない」と気に入っており、普通の女性を演じてもらったが「何でも起こり得るぞ」と楽しみを込めている。福間監督作品では印象深い佐々木ユキを演じた小原早織さんを魅力的に感じており「圧倒的な力を持っている。だが芸能界を好まず、僕の作品だけに出演してくれている。僕にとっては宝物のような大事な存在」と愛情を込めて話す。近年は突飛な役を演じることが多い宇野祥平さんは自主映画をやっている時から存しており「今回はわざと大人しめにすることで、変わった存在だけど普通に佇んでいった方がおもしろい。実はもっと光沙さんとふざけ切ってもらうシーンも撮ったけど本作では合わない。いるだけで可笑しい存在」と評する。Vシネマやピンク映画に多く出演している森羅万象さんに対しては「実はかなりインテリ。演技を十分に理解している人」と捉え、立っているだけでもイメージを掴み「普段出演している映画とは芝居の質が違っています。いつもの演技だと印象が強いので止めてもらい、何もしなくても大丈夫。分かるような芝居をする必要はない。やりたいようにやってもらう」と信頼を寄せていた。

 

今作含め監督した作品について、福間監督自身は「出自が様々な人がある。芝居に統一感がない。そのバラバラさが却っておもしろい」と魅力を感じている。現在の状況下では、低予算映画が上映される機会が多くなっている、と鑑みており「低予算になると、同じような演技力の方が集められている。うちは全員が違うので、どのように纏められるか」が見せどころ。編集は、ドキュメンタリーを多く手掛けている秦岳志さんが担っており「長い付き合いである彼は、僕をよく分かっている」と信頼しており「一つのシーンをカット割りで撮っていないので、自由に編集できる。劇映画の撮影は丁寧過ぎて、演技を浅くしている。同じ場面でも撮り過ぎている。一回しか撮れない演技はドキュメンタリー的である」と心強く感じている。

 

なお、現在の福間監督は、東京をドキュメンタリー的に撮る作品を構想中。当初はオリンピック前の東京を撮ろうとしていたが、現在の状況下では「東京は過程的であり、作品が仕上がるかどうか」と心配している。とはいえ「小さなカメラでゲリラ的に撮っていくことが活きる。チャンスがあればドンドン撮っていきたい」と前向きだ。また、最近は今泉力哉監督や城定秀夫監督といった若手の映画監督とも話しており「彼等が次から次へと作品を撮っている姿勢が羨ましく、今思いついたことに取り組んでいる姿は若松孝二監督のようだ」とワクワクしており「ポジティブに楽天的に考えて取り組んでいるのが映画には良い」と今後の日本映画界を楽しみしている。

 

映画『パラダイス・ロスト』は、7月3日(金)より京都・出町柳の出町座、7月4日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォと神戸・元町の元町映画館で公開。また、各劇場では、本作の公開を記念した福間健二監督特集として『急にたどりついてしまう』(1995)『岡山の娘 』(2008)『わたしたちの夏 』(2011)『あるいは佐々木ユキ』(2013)『秋の理由』(2016)が上映されている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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